とある地球型惑星に関する覚書

メモ。
その星では生まれたときから子ども時代までは皆
それぞれの顔つきで背丈も肌の色も放つ匂いも千差万別だが、
成長するにつれて皆外見が同じものになっていく。
大人になると完全に見分けがつかない。性別の違いもない。
顔から目・鼻・口・耳が失われ、その痕跡だけが残る。
ほっそりとした滑らかな体つきはまるでマネキンのよう。


そのまま何百年、何万年も生き続ける。
一塊になって、何か大きな生物の一部分のようになって動き/働き続ける。
何かが絶えず生産され、何かが選別され、何かが排泄される。
その中心となる女王蟻、女王蜂のような存在はいない。


特別に、子どもたちを育てるために群を離れて活動するものがいる。
しかし専任でずっと担当するのではなく、交代で。


彼ら・彼女たちは記憶を持たない。本能だけで行動する。
考える、感じるということもない。
言葉を交わすこともない。眠りもしない。
磨耗の果てにあるとき突然、砂のように崩れていくだけ。


だから子どもたちは大人になり始めた徴候が出てきたときに恐怖感を抱く。
自分に残された時間のことを考える。
その中には若い恋人たちもいるだろう。
最後の意識が消え去る瞬間まで二人は一緒にいたいと望むだろう。
その瞬間を越えたとき、二人は永遠に離れ離れになる。
全てを忘れてしまう。


地の果てに行けば逃れられるんじゃないかと
同じ誕生日の少年たちが力の限り走り続けるが、
その途中で続々と倒れこんで行き場を失ってしまう。
絶望した少女たちが自ら命を断つ。


そんなふうにしてこの星は何万年、何百万年と
昼と夜を繰り返している。