Julian Cope

時々無性に Julian Cope のソロか
その前身の The Teardrop Explodes が聞きたくなる。
ソロとしては1984年の『Fried』や1991年の『Peggy Suicide』が名盤とされるが、
1992年の『Jehovahkill』を今回改めて聞き直してみて
この堕落した西洋社会、キリスト教的価値観に覆われた世界に警鐘を鳴らすために
彼が必要とした多様にしてパーソナルな楽曲の群れが描く
壮大にして荒涼とした叙事詩的空間を痛ましく思うと同時に、美しくも思う。
(あまりにも複雑なものであるため、一言で言い表せない)


合わせて、余りにも無防備で剥きだしの楽曲をそのまま出そうとして
売れないと判断され、レコード会社から販売を見送られた
曰くつきの『Droolian』『Skellington』
この2枚のアルバムも棚の奥から引っ張り出して今聞いている。


ベストアルバムも iPhone に入れた。
いくつか出ているが、手元にあるのが『The Collection』だった。
メジャーレーベルの Island に属していた『Jehovahkill』までの楽曲から選ばれていて
それを同じくメジャーの Universal から出しているので比較的バランスよくまとまっている。
売れ線ロック路線への舵取りに成功した
1986年の『Saint Julian』から「Trampolene」や「World Shut Your Mouth」など。
でも『Fried』の「Reynard the Fox」や『Peggy Suicide』の「Safesurfer」
といったファンに人気の曲が入っていない。なかなか難しい。
つまるところ、わかりやすい誰もが納得する全体像が描きにくいアーティストということになる。


ベストアルバムとなると様々なレーベルにまたがって発売され続けている
『Floored Genius』のシリーズが結局のところいいのかもしれない。
第1集は The Teardrop Explodes も含めた『Peggy Suicide』までのベストで
前述の「Reynard the Fox」や「Safesurfer」も入っているが、
今度はそうすると1988年の『My Nation Underground』の表題曲が入ってないし、
そもそも全キャリアの前半戦から万遍なくというセレクションが時期に物足りなくなってくる。
とはいえやはりこれが入り口として最適だと思う。
第2集は BBC 音源。最近は2枚組のデラックスエディションで再発された。
これも裏ベストとして充実している。
第3集と第4集はレア楽曲のコンピレーション。


『The Collection』を聞いていて新鮮な発見があったのはその「My Nation Underground」
https://www.youtube.com/watch?v=mKHLFlFN9eM
前作の売れ線路線をさらに推し進めたサイケデリック・ポップ・ファンク。
ここを境に Julian Cope は内省というかダウナーな音に落ちていったので
今とはなっては恥ずかしいのか、顧みられることの少ない楽曲。
確かにパッと聞いた感じはイケイケなノリが今となってはアチャーなんだけど
後半の感極まって泣き叫びのたうち回る辺りが実は David Bowie によく似ていて。
その負の部分を最大に引き継いだ後継者って Julian Cope なんじゃないかと思ってしまった。
過度なまでの世界観の作り込みとそれに引きずられたキャラクターの変貌ぶりであるとか。
ヒットした「Spece Oddity」を後に「Ashes to Ashes」で否定するようなあの感覚であるとか。


正直、ダークサイドに堕ちたまま帰れなくなった、
インディーレーベルでの発表がすっかり隠遁生活のようになってしまった
1994年の『Autogeddon』以後については僕もまだ整理できず、消化できず。
この辺りはまた後日。