事件

朝、改札をくぐってホームに下りると
反対側のほうで30代半ばから後半ぐらいの男性が怒鳴り声を挙げていた。
駅係員の対応に不満があったようで、
何人か取り囲まれた中であれが気に食わないこれが気に食わない、
どういうことなんだ説明しろちゃんとしろなんであんなことしたんだと
半ば激高、半ばネチネチと。
右翼の街宣車がこうだったな、と思いだす。
終わりそうな気配はなかった。
聞いてると終点で起こされたときに何かあったようだ。


僕も含めてホームに下りてきた人たちは皆、見てみぬふりをした。
車両が入ってきて乗り込む。チラッと見る。
何人か立っている中でまともに話を聞いているのは1人だけ、
残りの2人は直立不動で他の乗客が近寄らないようにガードしていた。
その言動は理路整然とした日本語にはなっていたが、執拗さが異常だった。
よほど嫌なことがあって自分よりも弱い立場の人を苛めているのか。
それとも精神的に不安定だったのか。
この人の中にはこの人なりのルールや主張や正義があるんだろうけど、
身の回りにいてほしくない、関わりたくないと思った。


iPhone でニュースを見ると相模原の障碍者の施設で
真夜中、元職員の若い男性が進入して次々と刃物で刺していったのだという。
死者19名、重症が20名。
何でこんなことが起きるのか。
ドイツの乱射や爆発事件に誘発されたか。
容疑者は明るく優しい青年だったという声がある一方で会精神的に不安定だったと。
その主張を訴える手紙を衆議院議長公邸に提出しようとして断られている。
彼のような若者は氷山の一角で、その予備軍は日本中にいるのだと思う。


先日も車内で騒ぎ出した青年を見かけた。
今日のあの男性が何日か後に刃物を持って現れないか。
「日本をよくする」「きれいにする」とか言いながら。
そんなことがあってもおかしくない。
同じ町に住んでいて、いつかすれ違うのではないか。
僕はその後姿しか見ていない。
その記憶もはっきりしない。
あの後どうなったのか。事件として取り上げられることもない。