入院 4日目午後(手術後)、5日目

エコノミー症候群防止のストッキングを履く。
12:25 看護婦の方が迎えに来る。
歩いてエレベーターに乗って二階へ。
待合室のようなところで執刀医、麻酔医、看護師の顔合わせ。
ドアの向こうに手術室が並んでいる。

一瞬開いてそのうちのひとつの中が見える。
何人かで手術台を囲んでいる。


顔合わせが終わってドアをくぐる。
廊下はたくさんの機械を積み上げた工場と屠畜場とが一緒になったかのよう。
しばらく歩いて5番目の手術室へ。
さっそく手術台に横たわる。
左右の手の甲に点滴。右腕に血圧計。おでこに眠りの深さをモニターするシールを貼る。


左を下にうずくまって、脊髄の麻酔を入れる。
これが昨年もそうだけど、痛みはさほどないもののかなり違和感あるもので。
ほんと細い管が入っていってるような。
脊髄を損傷しないかというのがとても怖い。


昨年の手術では手術室に流す音楽を選べて、ジャズにしたけど今回は聞かれない。
オルゴールのようなものが聞こえてきた。
全身麻酔を入れる。フラフラと眠くなる。


目を覚ます。日本のロックが、…という夢を見ていたように思う。
吐瀉したものを管が空いとる。
この管が喉にずっと入っていたからか、風邪を引いた時のように喉が腫れて痛い。
病室に運ばれていく。
大部屋は酸素吸入器がないからとこの日だけ1人部屋となる。口元は酸素のマスク。
血圧を測る。採血。


やはり尿道カテーテルが極度の違和感あり。何度か尿を吸い出してもらうが、変わらず。
何度もそればかり主張したため、その後来る人来る人皆が気にする。
一晩我慢してようやく慣れた。


立会いの妻が呼ばれて来る。時間を聞くと17:25
当初2時間ぐらいと聞いていたのでかなり難航したものと思われる。
腹帯をして脇腹にドレーンが刺さっている。
妻は摘出した脾臓を見せてもらったという。
握り拳ぐらいの大きさがあって、普通はその2/3の大きさなのだとか。
つるんとしていた。


こちらの病室では一晩安静となっていて、本が読めず。
暇で気が狂いそうとテレビを見る。
世界の果てのこんなところに日本人が、というやつの3時間スペシャル。
エボラ出血熱がようやく治った最貧国リベリアで働く74歳男性と
石油と天然ガスで潤うアゼルバイジャンで暮らす40歳ぐらいの女性。
入院して身動き取れない時、こういうバラエティ番組のあることをありがたく思う。


その後元宝塚で今、自由が丘でメロンパン屋を切り盛りする女性の話。中国のネット事情について。
チャンネルを何度か変える。
そのうちにウトウトする。
看護婦の方が定期的に点滴の様子を見にきて、都度起きてしまう。
結局浅くウトウトしたまま、朝になるのを待つ。


8時半ぐらいか。主治医の先生をはじめ何人もの医者が回診。
腫瘍は透明なゼリー状だったという。
酸素マスクが外される。
尿道カテーテルは背中の麻酔を抜かないと外せないと。残念。
ドレーンも今日か明日か。


アサイチを見る。
日本のいろんな島がテーマ。小さい島を代々所有している一族や五島列島の民泊。
ペットボトルの温灸。香川の寂れた小さな島。
その後看護婦の方が胸のモニター、左手の点滴、エコノミー症候群にならないようふくらはぎをマッサージする機械を外す。
身体を拭いてくれる。


麻酔科の先生が来て様子を聞く。
痛みがあるかというのであまりないというと痛みに強いんですねと驚かれる。
そういえば去年もそうだったな。


ベッドの外に出てフロアをゆっくり歩いてみる。
少しふらつく。腹に力が入らず、猫背となる。
ゆっくり一周してナースステーションで体重を測る。
トイレで歯を磨く。
その後車椅子に乗せてもらって一階でレントゲン。
終わって元の病棟に戻る。
なんだか暑い。今日の最高気温は30℃
血圧は高い時は140を超え、体温は38℃となる。
アイスノンを持って来てもらう。


昼食を持って来てもらう。
採血の結果がよかったので昼から流動食。
重湯、コーンスープ、ヨーグルト、ゼリー。
さほど腹が減ってないが、急いで飲み込んでしまう。
無理をしたかなと横になる。
音楽を聴く。ドビュッシーのピアノ。ガムランのうち、穏やかなやつ。
そしてこんな時はいつも欠かせない、The Police「Synchronicity」
その後ベストアルバム。心に染みる。


尿道カテーテルの周りは雑菌が入りやすいからと個室のトイレに設置された簡易シャワーを使って洗ってもらう。
戻って来て『四月は君の嘘』の続きを読む。
管が刺さっていて寝返りをうてないのが辛い。
一気に読み終える。ラストに号泣。
恋愛漫画の王道。
しかし友人に聞くと『いちご同盟』という元ネタがあるらしい。


婦長の方が挨拶。
夕食を運んで来てもらう。重湯。ヨーグルト風味の飲料とゴマのプリン。
片付けは自分で持っていく。
点滴のあれをガラガラ押して洗面所。歯を磨き、水の不要なシャンプー。
一気に疲れて、ベッドに寝込む。
先生が来て経過は良好だと。明日からお粥となる。
しかし血圧は150を超え、体温は38℃近い。
無理をしたか。抗生物質の点滴が増える。


妻が見舞いに。
ゆるいエッセイをもってきてくれるように頼んで、さくらももこナンシー関が届く。


本を読まず、安静に過ごそう。
熱もあるので早く寝る。