『TERRAIN VAGUE vol.56 立春に PUNK を聴く』

来月のイベントの告知です。


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題名:『TERRAIN VAGUE(テラン・ヴァーグ) vol.56
    立春に PUNK を聴く』


日時:2017/02/04(土) 立春 19時から21時
料金:1,500円 ※当日のプレイリストをCD-Rでプレゼントします。


場所:東京都千代田区西神田2-4-1
   東方学会本館三階33−2号室「温室」


地図:http://goo.gl/D4zgpa
   ※最寄り駅:神保町
   ※会場はイベント当日以外は一般に開放していませんので、ご注意ください。


温室:http://onshitsu.com/
   http://terrainvague2015.blogspot.jp/


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2016年は TERRAIN VAGUE にて
「海外の女性シンガーソングライター」「歌もの映画音楽」
「ポストクラシカル」「サンバ・サルサなどの中南米音楽
と4回、音楽について語らせてもらいました。


今回のテーマは「PUNK / POST PUNK」となります。
これまでは植物に満ち溢れた空間である
「温室」という場にふさわしい音楽が前提でした。
5回目にして、一見正反対のものを組み合わせてみたいと思いました。


しかも時は立春。冬が終わり、春が始まる。
それは一年の始まりでもあります。
「PUNK」とは何よりも 現状を、世界を、自分を、変えようという意志の現れ。
参加された方にとって新しい価値観との出会いになれば幸いです。

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世の中には食わず嫌いの音楽というものがあります。
人によってそれは演歌かもしれません。
アニソンやクラシックかもしれません。
パンクロックという人もいるでしょう。
あんなうるさいもの音楽じゃないと。


・代表的なバンドの名前が「Sex Pistols」や「The Clash」というところに幼稚さを感じる。
・緑や紫のモヒカンに鋲の入った革ジャン、舌ピアスという姿が怖い。関わりたくない。
・クラスに友だちのいない暗いやつがライブハウスで絶叫しながら「人にやさしく」と歌ってた。
・演奏力が低くて聞くに堪えない。早くて単純でジャカジャカしててどれも同じに聞こえる。
・わざわざ穴の開いたジーパンやTシャツを着て、小汚い。なんで中指を突き立てるんだ?


などなど。世の中的にいいイメージを持たれていないと思います。
でもそれはあくまで一面です。ファッションとしての PUNK です。


1977年に PUNK はロックミュージックに革命を起こしたと言われています。
1960年代前半に The BeatlesThe Beach Boys が3分間のポップソングで世界を席巻して以来、
1970年代に入ってからはテクニック至上主義のプログレやステージ衣装至上主義のグラムなど
ジャンルがマニアックに細分化。
それなりに売れるけど、それ以上どこに向かっていいのかわからない。
そんなロックが息詰まった頃のリセットボタンであり風穴が PUNK でした。


ギター、ベース、ドラムとヴォーカル。シンプルな3コードに立ち返って
10代や20代ならではのフラストレーションを歌詞と演奏に叩きつける。
若さを搾取する薄汚い大人たちに NO を突きつける。
下手でもいい、頭がよくなくてもいい。自分たちにできることを大きな音でやる。
1970年代後半に The Rolling Stones がスタジアムで演奏するようになり、
例えば Fleetwood Mac『噂』が1,700万枚を売るといったように
産業化がどんどん進んでいった中で
ロックを本来の担い手である無名の若者たちに取り戻したのが PUNK でした。
誤解を恐れず、一言で言えば「純化」ということになるでしょう。
彼ら彼女たちが求めたのは「物事の本質」であり、
金もチャンスもないこの毎日を変えてくれる「新しい価値観」だったのです。
「自由」であるとか、「Do It Yourself」であるとか。


1970年代後半のロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス。その他無数の都市。
路地裏の小さなライブハウスという空き地に集まった若者たちは
どんな拙い演奏となろうとも
自分たちの感性だけを武器に名曲を生み出していきました。


1970年代末から1980年代にかけて
PUNK が投げつけた爆弾で地ならしされた荒野には
NEW WAVE」や「POST PUNK」が爆発的に広がっていきました。
PUNK が「何でもあり」であることを示すと、
それはレゲエやラテンなどの周辺の音楽を貪欲に吸収していきました。
PUNK が「僕らはひとりじゃない」ことを示すと、
都市から都市へ、部屋から部屋へとネットワークをつなげていきました。


今や、PUNK の影響を受けていないロックミュージックはほぼ皆無でしょう。
若者たちの手に取り戻された表現として、
自由を求める全てのロックが POST PUNK とも言えます。


今回はロンドン、ニューヨークの PUNK と
そこから広がっていったイギリス、アメリカの POST ROCK の曲の中でも
代表的なものを幅広く紹介したいと思います。
短いというイメージに反して10分を超えるような曲、
noisy でうるさいというイメージに反して美しい曲、
様々取り上げます。


よろしくお願いします。