雪かきの話

九州出身の妻を青森に連れて行って驚かれたのは雪の多さと、雪かきと。
以来いかに大変かという話を友人たちによくしているようだ。
雪かきって一日一回朝やればいいというものではなく、
一日ずっと降り続くならば朝昼晩と片付けないといけない。
その労力そのものもさることながら
土日ならまだしも平日で共働きだとどうなるのか。
お年寄りの一人暮らしだとどうなるのか。
手伝いに来る人がいたり、融雪の機械を導入したり、暖冬だったりでなんとかなっている。
そのことの方が驚かれる。
もちろんどうにもならずに埋もれていく家もあるにはあるが、
外に出ていく道は何とか確保する。


もっと驚かれるのは、その片付けた雪をどこに持っていくかというときに
トラックの荷台に積んで海に投げ捨てることもあるということ。
実際に僕らも海辺を車で走っていて見たことがある。
一般的な解決方法ではなく、
家庭の雪でそうすることはよほど広くて人手のある家でない限りないだろう。
多くは製材所とか工場とかそういう場所と思われる。
たまにうまく雪を海の中に投げられず、トラックごと突っ込むという事故も年に一度はあるという。
都市伝説かもしれないが。


ロータリー車とかキャタピラのついたブルドーザーとか、
除雪車が駐車場のような広い場所で豪快に雪を運んでいるのも初めて見る人に驚かれる。
夜遅くや朝早く、あるいは何日も吹雪で雪がやまないときだと
タイヤのブルドーザーが道端で稼働していることもある。
そこまでしなきゃいけないのかと。ええ、そこまでしなきゃいけないんですよ。
それをたぶんトラックで海まで運ぶんですね。


金属のとかプラスチックのとか家にスコップが何種類も常備されていて、
壁にずらっと立てかけているというのも
青森市民には普通でも南国の人からするとびっくりなようだ。
特にスノーダンプとか。一家に一台!? と。
この前は歩いていたら普通に店先で家庭用の除雪機が中古で売られていた。
さいころから見慣れていたらそんなもんかだけど、
雪の降らないところから結婚して青森に住み始めると毎日の雪かきで気が滅入ってくると思う。
来る日も来る日も。そしてそれは春になると皆解けてしまう…


この春になればなくなってしまうものと
冬の間せっせと向き合わねばならないというある種の諦め。
これが雪国の人の性格の一部を形作っている。


僕らが帰った年末年始は雪が全くなかったが、
今週はずっと吹雪なのだという。