『ザ・ゴール』

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か


昨日『ザ・ゴール』を読み終えた。
なんかビジネス書を読もうと、積読の山から取り出す。
分厚かったんだけど思ってたよりもはるかに面白く、サクサク読めた。
さすが往年のベストセラー。
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小説仕立てになっている。
主人公は3カ月で工場を立て直すことになった。
大学の恩師からいわゆる「TOC」(Theory of Constraints)を教えてもらい、
経理や資材といった役割の部下たちと試行錯誤を繰り返すなかで
全体の生産性はボトルネックの生産性に依存するといった法則を身をもって知る。
一方で仕事優先で家庭を顧みないでいるうちに妻が出ていってしまい、
人生において何が大事なのかということも知る。


といった話。いたって単純なストーリー。
起伏があってもありがちなものばかり。
なのにそれが面白い。読んでいてとても不思議だった。
文体に凝ったところは何もなく、癖がなく、味わいも美しさもない。
うまくはないけど、下手でもない。かえってそれがいいのだと思う。
例えば似たような位置づけの本に
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』があったけど
あれは下手なのに文学性を諦めきれない文体が辛かった。その記憶しかない。


ラブストーリーやミステリーだとそうはいかない。
ストーリーもさることながら文体に読みごたえがないと見向きもされない。
それだけジャンルとして成熟しているということなのだと思う。
皆、ラブストーリーを読み慣れていて、良し悪しがよくわかっていて、
文体の中に味わいを求めるようになる。


いや、それだけではないか。
単に経営技法を解説するだけではなく、家を出ていった妻をどう主人公は取り戻すか。
ストーリーの軸が二つあるというのがよいのだろう。
これがどちらか片方だったら余りの平板さに僕は最初の方で放り投げていたと思う。
ふたつのスジが交差するところに奥行きが生まれる。
ビジネスがビジネスだけではなく、ラブストーリーがラブストーリーではなく、
別の視点から光が投げかけられている。
それがよいのではないか。というか、実際はこの効能の方が大きいはずだ。


しかし、サクサクと読みやすい分、
右から左に抜けていってほとんど何も残っていない。
この教えを活かそうとするなら別にマニュアルが必要か。