大阪へ その4(10/01午前)

何度か目を覚まし、ここはどこだろうと。寝心地がいつもと違う。
ああ、大阪のビジネスホテルかと思い出してまた眠る。
7時半起き。昨日食べすぎて朝食は何も食べない。
大浴場に入りに行く。割と混んでいる。
大塚製薬の「RAIZIN」の試供品が冷蔵庫の中に入っていて、1本飲んでみる。
そんなにおいしくはない。
お茶を飲みながらコニー・ウィリスを読んで、8時半過ぎにチェックアウト。


昨日、国立民族学博物館シーボルト展のチケットをもらったので
予定もないし見に行くことにする。
万博公園にあって、太陽の塔も見てみたかったし。
堺筋線に乗って山田駅まで。大阪モノレールに乗り換える。
親子連れが多い。ボールなど遊具を抱えている。
万博公園まで一駅。大勢が下りていく。改札の外でも待ち合わせしている。
広い箱のような駅舎を出るとなだらかな坂道があって、右側にホテルと大きなららぽーと
左側にモノレールの線路と、公園の緑からニョキッと突き出ている太陽の塔


え!? こんな大きかったの??
失礼ながら勝手に 3m ぐらいと思い込んでいた。岡本太郎が粘土をこねて手作りで。
全然そんなんじゃなくて、70m もある。
ウルトラマンに出てくる怪獣ってこれぐらいの高さかな、と思う。
いや、ほんとこれはすごい。
神々しいわけでもなく、禍々しいのでもなく、ただただ太陽の塔としてにょきっと立っている。
それがなんか宇宙とつながるような波動をぼわーんと放っている。
もう一度言うけど、これはすごい。
それがそこにあるというだけで感動する。
そして大阪の人はもう慣れ切ったのか写真を撮る人はわずかで、
親子連れがそこにはなにもないかのように通り過ぎていく。
あとで広場に出たとき、ピクニックのシートを広げてサンドイッチを食べている人たち、
ボールで遊んでいる人たちとたくさんの人たちがいたけど、
その背後に太陽の塔が立っている姿はかなりシュールだった。


250円で入場券を買って中に入り、国立民族学博物館へ。
前の日言われていた通り、これはかなり大きい。
一周しようとしたら一時間ぐらいかかるのではないか。
園内は子どもたち向けの鉄道も走っていた。


開館が10時からなので少し待つ。
「開館40周年記念特別展「よみがえれ! シーボルトの日本博物館」」
http://siebold-150.jp/
シーボルト没後150年を記念しての展示。
日本を二度訪れている。博物学を志すが医者の家系。長崎には医者として赴任する。
一度目の際はタキとの間にイネが生まれるが、帰国の際に船が難破、
その当時持ち出し禁止とされていた日本地図が荷物に含まれていることが見つかって
国外追放処分に。いわゆるシーボルト事件。
本人としてはまたすぐ日本に戻ってくるつもりだったのが叶わず。
処分が解除されて日本に戻ってきたのは実に30年後。


シーボルトがオランダに持ち帰った動植物の標本や書籍、衣類、日用品などのコレクションは
何万点にも及び、後に「日本博物館」を開設する。
今回の展示はその日本博物館を再現するという目的があった。
最初の方はタキに充てた書簡など、シーボルトの日本滞在をしのぶものたち。
2階に上がると買い求めた羽織や香炉、人形など。
そのままにしていたら壊れ、失われていたものがきちんと保存されていたのはよかったと思う。
個人的に興味深かったのはやはり地図や風景画ですね。
その当時の人たちにこの世界はどう見えていたのか。
日本全図、樺太図、世界地図など。


こちらはまあぼちぼちで、続いて本館へ。
1階がミュージアムショップなど。2階に展示。
ここの評判は前から聞いてはいたけど、これほどまでのものだったとは。
圧倒された。
基本構造はアフリカ、ヨーロッパ、オセアニアなどとエリアごとに分けられて
民族衣装やお面や楽器などを飾ってるんだけど
(右半分がアジア、左半分がアジア以外で、アジアも各地に細分化される)
その量もさることながら、目に見えないコンセプトのようなものがあってロジカルに並べられている。
美しいカオスというか。情報量が多いのにスッと入る。相当練り上げられたインデックスがある。
そして過去だけではなく現在もまた視野に入っているのがいい。
ただの回顧主義ではなく、ダイナミックに民族学というものを捉えている。
今、彼らはどんな服を着ていて、どんな音楽を聴いていて、どんなものを食べているのか。
そのルーツはどこにあるのか。他のエリアとどうつながっていくのか。
言葉での説明は少ないけど、暗示に満ちている。
例えば、その地でどういう日本食が食べられていて、それがどう売られているのか。
(もちろんインスタント食品が多いわけですが)


基本エリア別だとして、テーマ別のコーナーもいくつかあった。
世界各地の打楽器や弦楽器を集めた音楽のコーナーや
言語のコーナーでは世界各国の『はらぺこあおむし』の絵本を並べていたりとか。
中国の龍を模した飾りが天井を這い、黄金の山車が突き上げるようにそびえたつ。
ベトナムかどこかの民家には酒井法子のポスターが、モンゴルのパオには衛星放送のアンテナが。
大漁旗にカヌーにシロクマの毛皮におしらさまにキックボクシングの衣装、トゥクトゥク
数え上げていくときりがない。


企画展のひとつとして
「カナダ先住民の文化の力―過去、現在、未来」というのが開催されていた。
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/thematic/canada20170907/index
普通に先住民の狩りの道具やブーツというだけではなく、
セイウチなどをデフォルメして模した彫刻や赤、白、黒の色鮮やかな版画。
西洋現代社会に生きる我々とは全く別の尺土をもつ美意識に
思わず立ち止まって深々と眺めてしまう。
ここまで異質な美しさってアボリジニのアートに出会ったとき以来か。


入る前はそのつもりがなかったのに、過去の企画展の図録など買い込んでしまい、外に出る。
うーん、この民博、また来たい。じっくり一日かけて。
シーボルトと合わせて30分ぐらいかと思いきや、2時間もいた。
でももっと見たい。
ららぽーともあるし、終日ここで楽しめる。