「解決した。連絡求む」

世の中から人知れずいつのまにか消えていくものがある。
オレンジカードやポケベルがその代表か。


新聞を読んでいたらふと、
昔は紙面の下の方に1行や2行だけの、
当事者にしかわからないような伝言を載せてたよなあと。
「豊彦へ。解決した。連絡求む」というような。


あれを見かけなくなった。いつからだろう?
少なくとも僕が学生だった20世紀末まではあったように思う。
試しに今、毎日新聞の直近1週間分を見てみたけど見つからなかった。
(本当なら最低でも半年分は調べてから言うことだろうけど)


こういうのを見て、本当に連絡してくるのか、効果はあるのかと不思議だった。
たぶん読売、朝日、毎日と全国紙にまとめて出す。
どれを目にするかわからないから。藁をもすがる思いで。
それが何十年と続いてきたのだから一定の効果があったのだろう。


不要となったのはざっくり言ってネットの時代になったからか。
他にも連絡する手段があるとか、
紙媒体としての新聞が読まれなくなったとか。
前者は駅に伝言板がなくなったのと理由は同じだ。


新聞からその伝言欄がなくなったわけではなくて、
お金を出せば載せることは今でも可能ではないか。
ただ単に今は利用する人がいないというだけで。


東京新聞の伝言欄はまだあって、
スマップ解散に寄せてファンが昨年紙面をジャックしたというニュースを思い出した。
ローカル紙だとまだ有効、というか今の時代こそ有効なのかもしれない。


昔読んだ誰かの推理小説か映画で
この伝言欄にメッセージを出すことで誘拐犯と連絡を取るというのがあった。
そういう手段がひとつなくなったのは味気ないようでいて、
代わりの手段が世の中に出てきているはずで。
とはいえ紙だからこその味わいが。
半永久的に参照可能なネットとは違って、その日発行される新聞はその日限りだ。


「○○へ。解決した。連絡求む」と出したその日に○○はたまたま新聞を読まず、
他の日ならば読んでいたというようなこともあったのではないか。
そこで運命の歯車が大きく変わってしまう。
そんなことを考えると今でもドキドキする。