その週のフィーチャリング・アーティストって感じに
重点的に聞くアーティストやグループがある。
先週が渋さ知らズで、先々週は Prince だった。
何がきっかけでそうなるかはわからず、
来週何を聴いているかはその時になってみないとわからない。
そんなわけで今週は The Bevis Frond を毎日。
「ベヴィス・フロンド」と読むのだとばかり思っていたのだが、
「ビーヴァス・フロンド」という説もあって。
その辺からして情報が足りない。
そんなこともあってイギリスを代表するカルト・バンドのひとつとされる。
1980年代末から活動、というか
ニック・サロマン(もちろんこの読み方も正式には分からず)の
一人宅録ユニットとしてリリース開始。
インディー・レーベルから毎年のように(ここ10年は2年に1枚のペースか)
アルバムを出して結構な分量になる。再発がまた別のレーベルだったりして。
90年代後半からはライブを行うようになって、
ベースに元 Hawkwind のエイドリアン・ショウと
ドラムに元 Camel のアンディ・ワードを迎えて3人編成のバンドとなった。
何この地味にアンダーグラウンド・スーパー・グループな感じ。
ネットで検索してもたいした情報は出てこない。
メアリー・ルー・リードがアルバムで何曲かカバーしているとか。
ティーンエイジ・ファンクラブがファンと公言しているとか。
でもね、何も謎めいた存在にしたいわけではなくて
アルバムの歌詞カードやジャケットを読めばけっこうたくさんのことが普通に書いてるのね。
誰がゲストで客演しているとか。
何枚かに名前のあったデビー・サロマンって奥さんか。確かに女性コーラスが時々聞こえる。
あと、今回一番の発見だったのは
『Hit Squad』で見つけたマーク・バージェスってまさか
同じくイギリスを代表するカルトバンド、The Chameleons の!?
音は強いて言えばサイケデリックなガレージ・ロック。
ニール・ヤングや Dinosaur Jr. を引き合いに出しているのを見たことがあるけど、
個人的にはエルヴィス・コステロだと思う。
双子の兄が実はいて、生後間もなく人さらいにあって
暗くて狭い部屋に閉じ込められてギターとポテトチップだけが与えられて何十年。
髪も薄くなって腹も出てきて、40代になってヨレヨレの服を着て
ようやく外の世界に出ることができたというような。
引きこもる以外の生き方を知らず、それが今になって人生を取り戻しているというような。
そんな独特のポップ・センス。
もうね、どのアルバムを聞いてもどの曲を聞いても一緒なんですよね。
違いが分からない。覚えられない。
ロックミュージックの型に沿ってどれも既視感のあるオーソドックスな曲のはずなのに
曲の中の起承転結とかアルバムの中の起承転結というものがない。
イントロも曲調も違うはずなのに、それを上回る手癖が全てを覆っている。
それでいてどのアルバムも CD の収録時間いっぱいに曲を詰め込むので
聞くときにはものすごく体力がいる。
半分の長さにしたら次々に名盤が生まれそうな気がするのに。
iPhone で近くを通っても「ベヴィスか…」と思わず素通り。
いや、ほんとアルバムを半分のところでぶった切って別々のアルバムとして発売しても
違和感聞けて誰も何も思わないと思う。
80分のリストから奇数のナンバー、偶数のナンバーで選り分けても同じ。
なのになんか、ロックの負の部分を愛する者の心の襞にはしっかり入り込むんですよね。
今週聞いたのは中期? の5枚。
『Vavona Burr』(Flydaddy / 1999)
『The Bevis Frond : Live』(Flydaddy / 1999)
『Valedictory Songs』(Woronzow / 2000)
『What Did for the Dinosaurs』(Rublic Records / 2002)
『Hit Squad』(Rubic Records / 2004)
いやー、ほんとどれ聞いても同じだった。
さすがにライブアルバムは質感違ったけど。
『Vavona Burr』までが一人宅録のローファイ期で、以後3人編成となる。
なのに全く違いが分からない。ある意味凄いことだ。
ライブであっても一人多重録音に聞こえる。
あえておススメするなら『Hit Squad』かな。
管楽器や女性の声のサンプリングが入って(比較的)音がバリエーション豊か。
何よりも音の鳴りが違う。ローファイ感が薄れて、クリアになった。
ドラムが別の人に変わってて、共同プロデュースとなっていた。
『What Did for the Dinosaurs』もそうだったけど、ようやくこなれたか。
狂おしい程愛おしいのは宅録期の『Vavona Burr』だったりしますが。