渋さ知らズ『渋彩歌謡大全』など

先日、渋さ知らズのアルバムについていくつか書きましたが。
他にも聞いているうちにもう少し書きたくなり。

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『渋彩歌謡大全』(2012)


エイベックスからまさかのメジャー進出後、このアルバムは徳間ジャパンから。
その後インディーズの古巣:地底レコードに戻ったのであれこれあったのだと思う。


それはさておき。このアルバムはその名の通り歌がメイン。
しかもゲストを多数呼んでいる。
渚ようこ「恋は水いろ」
Sandii「黄昏のビギン」
遠藤ミチロウ「夢は夜ひらく」
坂本美雨「渡」
三上寛「黒い花びら」など。


ヴォーカルなしだけど YMORYDEEN」とか、渡部真一による「君は答えよ」とか
昔からやってたカバーをようやく正式に音源化したアルバムでもある。
この2曲は1999年伝説の年末ライヴ「ケイハクウタガッセン」でもやってて
それもまた歌もの中心であった。
そこで展開された毒気・アナーキーぶりからすると
10数年を経て音はかなりすっきり整理・消毒されたけど、その分円熟の気味はあって。
一頃現代文学の分野で流行った Avant-Pop ってこういうことなんじゃないかと思う。
つまり、アヴァンギャルドなポップ。
どの楽曲もコンパクトにまとまっていて、
渋さ知らズにいつ終わるとも知らぬカオスを求める向きには物足りないかもしれないけど、
これはこれで十分面白い。歌に寄り添い、バックに徹する渋さ知らズ
フジロックCHARA と共演しときにたやったとされる「「Swallowtail」もヴォーカル抜きでカバーを。
それにしても、遠藤ミチロウは他人の曲をやってるとき、とてもいい味を出しますね。

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『天幕 宙を駆ける』(2005)


こ野作品そのものは DVD なんだけど、その特典CDのライブアルバム
『19世紀と20世紀の祈りと21世紀の飛行機の為の音楽』
これが意外と見落としがちな名盤。
収録は2曲という扱いになっている。
「戦士〜飛行機〜股旅〜スペイスイズプレース〜火男〜スペイスイズプレース〜火男」
「飛行機(リプレイ)〜 dahdahdah」というメドレー。


つまり、1曲終えてはい、次の曲ときれいにまとまってるわけではなくて、
実際のライブのように次から次に明確な区切りがなく曲が、
というかその曲のテーマが繰り出されていく。
これぞ渋さのステージ。
Miles Davis『Agharta』『Pangaea』を思い出した。
『渋龍』のような渋さのライブアルバムの代表作も
フェードイン、フェードアウトでエディットされて曲単位でまとめてたりするんですよね。


Sun Ra「スペイスイズプレース」をやってるので、『渋星』がこなれてきたころですね。
エイベックスから出たベスト『渋全』にも収録されていた
宮沢賢治作詞の「飛行機」が中心に据えられている。
よく聞いてるとこのギターって Funkadelic 「Maggot Brain」じゃないかとか、
その後にサックスがドリフのあれを吹いたりとライヴならではの変幻自在。
寄せては返す波のように押し寄せる音の塊。美しいカオス。
それでいて「火男」が始まった途端一糸乱れぬ演奏となってみたり。
おススメです。

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『未発表音源集 2002年8月京大西部講堂前“テント渋さ”にて』


京大西部講堂というと、村八分Bo Gumbos が伝説のライブをやったことでも知られる、
日本ロックの歴史に名を残す独特なステージ。
ROVO のライヴアルバムもよかったな。
そうか、渋さ知らズもやってたかとしみじみ。


と、CD-R に差し挟んであったジャケット替わりの紙を眺めていたんだけど
この出どころが思い出せず。
「月間不破大輔」のシリーズではなく、他は曲目が書かれているのみ。
 1.出島
 2.反町鬼郎
 3.捨吉
 4.タイトルなし(即興)


調べてみると、『渋星』を購入してインストアライブに行った人の特典だったようで。
そういわれてみると、この頃だったか、今はなき新宿高島屋HMV渋さ知らズを見た。
このときもらったものじゃないかな。


音については特筆するものは無し。
4曲目は即興というよりもサウンドチェックみたいな、
まとまりかけてまた次に行ってゼロから組み立て直しみたいな、隙間の多い音。
よくもまあこういうの音源として発表したな、と思ったけど
よくよく考えてみたらタダでもらったものなのでそんなケチもつけられない。


インディーズだろうとメジャーだろうと一定レベルに達した音がパッケージ化される。
ここまで素の演奏はむしろ貴重。
これもまたライブでしか聞けない音。