Pere Ubu 続き

Pere Ubu のライヴアルバムを聴く、後編。

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『London Texas』(ReR)


1989年、ロンドンの録音。
ジャケットにこうある。
「Memorialisibng the intence but short-lived version of the
 band that existed betweeen the arrival of Eric Drew Feldman
 and the departure of Chris Cutler.
 This is the ONLY recording of that incarnation of the band」


そう、元 Henry Cow / Cassiber などで知られる鬼才ドラマー、Chris Cutler が辞める直前で
Captain Beefheart & His Magic Band だったキーボードの Eric Drew Feldman が加わった直後
という奇跡的な邂逅を捉えている。
Pere Ubu のレジェンダリーな編成の中でも No.1 ではないか。裏ロック史的に。


David Thomas - vocals, commie horn
Jim Jones - guitar, backing vocals
Tony Maimone - bass, backing vocals
Eric Drew Feldman - electric keyboard, synthesiser
Scott Krauss - drums
Chris Cutler - drums


「Wating for Mary」
「Cry」
「The Waltz」
「Love Loce Love」
「Pushin'」
「Caligari's Mirror」
「Breath」
「Lost Nation Road」
「Humor Me」
「On the Surface
「Final Solution」


再結成後の Pere Ubu を方向づけた Jim Jones のギター。
初期より David Thomas を支え続けてきた
Tony Maimone と Scott Krauss によるリズム隊。
しかも2ドラム体制。
タイトでダイナミックな「ロック」がここでは聞ける。
音の塊がしなやかに、うねり、うごめき、とびかかる
Pere Ubu のライヴアルバムの中では、個人的にはこれが最もお勧め。
初心者がここから入るのもあり。


Chris Cutler がらみだからか、
レベールは「ReR」(Recommended Records)というのも一本筋を通している。
Curis Cutler らの掲げた「Rock in Opposition」を
Pere Ubu もまた体現しているのだということ。

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『Apocalypse Now』(Cooking Vinyl)


Recorded December 7 1991 at Shuba's Chicago


「My Theory of Spontaneous Simultude」
「Life of Riley」
「Wine Dark Sparks」
「Heaven」
「Worlds in Collision」
「Cry Cry Cry」
「Non-Alignment Pact」
「Caligari's Mirror」
「Invisible Man」
「We Have the Technology」
「Humor Me」
「Busman's Honeymoon」
「Oh Catherine」
「Misery Goats」


David Thomas - vocals, radio, swirl horn
Jim Jones - acoustic guitar, rat pedal
Eric Drew Feldman - honky tonk upright
Tony Maimone - acoustic guitar, electric bass
Scott Krauss - drums, percussion


1999年、突然発表。
既に Chris Cutler が抜け…、という編成。
これもまた名演。
アコースティックな編成により、
Pere Ubu の音楽の特異性がより浮かび上がりやすくなっている。
エレキギターシンセサイザーの呪縛から逃れ、よりフリーフォーマットな演奏となる。
どこにもない音。


僕らが普段聞いている音が、いかにガチガチな固定観念に凝り固まっているか。
Pere Ubu にはまると、世の中の 99% の音楽がくだらないものに思えてくる。
(それが時として愛おしくもなるのだが)
彼らの感性、情熱、演奏技術の確かさを越えることのできたグループは数少ない。
そこに狂気はない。あくまで真剣そのものである。


日本盤を持っているので解説を読んでみると、
この頃のツアーのサポートで Pixies も一緒に回っていたと。
こんなふうにして次の世代に受け継がれていくんですね。

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David Thomas & Two Pale Boys『Meadville』(Cooking Vinyl)


「Obsession」
「Nobody Knows」
「Red Sky」
「Can't Help Falling in Love」
「Nowheresville」
「Fire」
「Kathleen」
「Surfer Girl / Around the Fire」
「Beach Boys」
「Weird Cornfields」
「Bushman's Honeymoon」


David Thomas - vocals
Keith Moliné - midi-guitar
Andy Diagram - trumpet through electronics


David Thomas によるソロ。
1996年のソロ7作目『Erewhon』(Nowhere のアナグラム)の頃の
ライヴを集めて、1997年に発表されている。
バックを務めるのは Two Pale Boys の2人。
以後何作か共にすることになる。
それまでは Pere Ubu も David Thomas のソロも
参加するミュージシャンはほとんど変わらなかったが、
ここではっきり分けることにしたのは大きい。


Pere Ubu のギター、ベース、ドラム、シンセという「バンド」スタイルが
ある程度音楽的な枠組みを決めてしまうものだとしたら
ここではギターとトランペットとエレクトロニクスというミニマムな編成が
David Thomas のより自由なヴォーカル、というよりヴォーカリゼーションを導き出している。
なるほど、ソロでやる意味はそういうことか。
自称「音痴」の David Thomas ですが。
ここで聴ける唄も演奏も鬼気迫る圧倒的な存在感があって、
Pere Ubu とソロを通じて、最高傑作のひとつだと思う。
彼の音楽的な到達点。
Elvis Presley で知られる「Can't Help Falling in Love」をしっかり歌いこなしていたりして
初期のふにゃふにゃした鼻歌からここまで来たかと感慨深い気持ちにもなる。


Davis Thomas のソロアルバム5枚を集めた
ボックスセット『Monster』の特典として発表されたものですが、
今は iTunes などからダウンロード可能。