車を売る

義父が車を譲ってくれることになり、これまで乗っていた軽を売る。
(この車も義父からもらったわけですが…)


メーカーの営業所が家のすぐ近くにあって、
車検の時などお世話になっているので試しに来てもらったところ
あまりパッとしない買取り額が提示された。
性能的にはこれぐらいなんだけど、キズやヘコミを差し引くと半分になるという。


うーん、試しにガリバーとか買い取り業者にもっていって査定してもらうか、となる。
妻が義父に相談すると、とある大手のところを勧められる。ここは熊本でも評判がいいと。
そこにする。車に乗って10分ほど、目白通りにある。


広い駐車場に入って車を停める。
奥の方では店の人が何やら専門的な器具を使って車を磨いていた。
すぐに営業マンが出てきて事務所に案内され、無料のコーヒーが出てくる。
書類に住所とか記入していると、他のところで査定してもらったかと聞かれる。
あるなら、うちはそこよりも高く買い取りたいと。
妻の方が僕よりも商売上手なので、
メーカーでは性能的にはこれぐらいと言われたというその額だけ伝える。
そこから傷の分だけいくらか引かれるみたいですよと。


もろもろの書類を預けて、査定は10分ほど。
最初に提示されたのは『ナイス』という分厚いカタログ。
国産・輸入問わず国内で扱われているメーカー・車種の標準的な買取価格が
年式やモデル、さらに色ごとに網羅されている。
相場は日々変わるからこれが毎月出版されているとのこと。
どの買取り業者もこの『ナイス』を元に査定しているので基本、どこもだいたい同じ買取価格になると。
そうか、目利きのエンジニアが「なんでも鑑定団」のようにこれはいくらと決めるものではないんだな。
一点ものの芸術品ではなく、大量生産された消費財なのだから当然か。


その『ナイス』を引いてみると、ベースとして提示された額はまさに
メーカーの担当の方が「性能的にはこれぐらい」と示したその額と同じ。なるほど。
でもうちは、いくつかキズはあるけれどもそこまで目立つものではないので差し引かず、
そのベースの金額でいいと。さすが大手。妻が即決でここに売ることにする。
営業マンが本部に確認を取ってOKが出ると、その場で契約書にサインした。
1万を買い取り保証額とする。
買取り後に実はエンジンの修理が必要でこれだけかかったということになっても
それうちの方で持ちますよと。その1万引く分も込みで、ベースの金額のままとなった。


では、いつ引き渡しかという話になる。
もちろん早いほどいい、急な話で恐縮ですが、今日だとありがたい、
すぐ販売に出したく、整備業者が立て込んでいるので土日のうちに引き渡したいと。
今日引き渡しても2・3日後に出しても買い取り額は変わらない。
どちらかというと気にしているのは、契約後数日か数週間か間を置くうちに
事故を起こしたり、気が変わって契約破棄したり、
契約書を交わした後に他の買取り業者の方に持っていって
そっちが高かったからそちらにしたという人が結構な割合でいるのだと。
そういう話を聞いているとこちらもお人よしなのか、
今日はこの後買い物で使って明日の夜に出も引き渡すかと思っていたのが、
じゃあ今晩にするか、となる。


一通りあちこちで買い物して一度家に戻って下ろした後、再度買取り業者へ。
車、鍵、書類を引き渡す。妻が車の写真を撮り、僕が妻と車の写真を撮る。
しかし、困ったことにいくつか書類が足りないと。
妻がこれはいらないだろうと事前に抜いたものが実は実用だった。
自賠責の保険証書やリサイクルの券。それと、スペアのキー。
一度戻って、僕がまた引き返し持っていくことにする。
帰りは歩いて家まで。30分ほど歩く。
家に着いて一休みして、『小さな村の物語 イタリア』を見たのちに
今度は一人、歩いて往復する。
着いてすぐ書類とスペアキーを渡してすぐ終わった。


これで全て終わり。あっさりしたものだった。
記入した書類も簡単な売買契約みたいなものに妻が名前と住所と振込先を書いたぐらいで、
所有権変更の書類は後でこちらで記入しますと判子を押しただけ。
数日後査定額が口座に振り込まれる。


帰り道、歩いて気づく。
どんなに不景気であっても車社会は変わらず。
特にここ練馬区笹目通りは新車を売る店、中古車を買い取る店、中古車を売る店ばかり。
飲食店よりもはるかに多い。国産車に限らず輸入車のディーラーも多い。
あ、この中古車買い取り業者はトヨタの系列だったのか、とか、
ここはメーカー問わずか、とか、いろんなことに気付いた。
これまであんまり考えずに眺めていた。
オートバックスなんかのパーツの販売やガソリンスタンド、町の整備工場などすそ野は広く、
車関係が産業に占める割合はかなり高いのだろう。
そんなことを考えながら歩くと、道のりがやたら長く感じられた。