川の向こう側

東京はどこにあるのか。
どこまでが東京なのか。


23区のはずれに住んでいて、大通りに出て北へひとつ行った先の交差点がもう埼玉。
見上げると「和光市」の標識が。
飛び地のように突き出た埼玉県の一部が侵入しているような。


歩いて県境を超えたところで風景や空気が変わるわけではない。
東京が続いている。
(もちろん、向こう側に住んだら税金とか社会も仕組み的にはあれこれ変わるんだろうけど)


東京というよりも東京圏とでも呼ぶべきか。
大手町まで通勤に1時間半以内で通えるなら、そこはもう東京。
郊外の住宅地が続くならばそこはまだ東京。


しかし実際には川を超えたら、といったところで無意識のうちに境はあるのかもしれない。
首都高に乗っていても利根川であるとか、大きな川を渡ると東京を離れて遠出する気分になる。


和光市練馬区から見て、荒川のこちら側にある。
そんな和光市はなぜ東京都に組み入れられなかったのか。
逆に言えば、荒川の向こうの足立区がなぜ埼玉県ではないのか。


その経緯はわからないまま、そんなもんだとして普段その地に暮らしている。
電車や自動車で通り過ぎる。
地名とは入り組んだもの。まっすぐに線を引いて区切れない。
そもそも川だってまっすぐに流れていない。
山だって垂直にそそり立っていない。


その東京の中心に皇居があって、お濠という水で囲まれている。
そこもまたひとつの、「向こう側」だ。