なんとなく思い出したこと。
かなり昔、書いたかもしれない。
学生時代、映画サークルの後輩たちが治験バイトに行ってきたという。
施設の中で寝泊まりして処方される薬を毎日飲み続ける。
マンガを読んでもいいしずっとゲームを読んでてもいい。食事も出る。
だけど施設の外には出られないし、部屋に窓はない。
人間がモルモットとなる。
実験には危険度に基づくランクがあって、報酬も左右される。
最高ランクは一か月近くいて20万ほどもらえるという。
「それで食ってる人がいる」「やばかった」と後輩は言う。
治験参加者はモニターと呼ばれる。
登録するだけで交通費1,000円がもらえるというので僕も行ってみた。
当時のバイト先に向かう途中、寄道すれば行ける場所にあった。
出てきた窓口の方はさえない感じの方だった。
申込用紙に名前住所とか書く。健康状況を問われる。
注意事項を読むと、治験後に体の不調があっても当方では責任を一切持ちませんと。
今申込できるコースの一覧というのをもらって、どれか受けますかと聞かれて、
僕はもごもごと何かを言ってその場を去った。
今から20年近く前のこと。
時々思い出す。そういう生き方もある。
あの頃最高ランクで危険な薬を飲み続けた人たちは今も生きているのか。
死んでいるとしたら副作用によるものなのか。
統計を取る程の母数にはならないだろうけど、自殺率は普通よりも高かったのではないか。
働きたくない、漫画読んでるだけでいい、というので軽いノリで応募したか。
人生が嫌になって、何もかもが嫌になって、やけになっていたか。
人間が捨てないと、応募できない。
しかし、そういう人たちがいたからこそ開発できた薬もあったんじゃないか。
その薬で救われた人たちもいるんじゃないか。
そう思うと名もなきヒーローじゃないかとも思うが、
いや、そんなかっこいいもんじゃないなと。
でも、そういう人たちの話は聞いてみたいと思う。
何を考えているのか、何を感じていたのか。
夢や希望はあるのか。金はなんに使うのか。何のために生きているのか。
両親と話すことはあるか。何を話すか。
一歩間違うと、僕やあなたもそういう人生を選択していたかもしれない。