『アウラ 未知のイゾラド 最後のひとり』

日曜の夜、NHKスペシャルアウラ 未知のイゾラド 最後のひとり』を見た。
「イゾラド」とはそれまで未知だった、未開の部族のこと。
アマゾンの奥地で今も見つかることがある。


1988年頃、開拓民の村を襲った二人の男性が半年後、保護される。
一人はアウレと名付けられ、もう一人はアウラと名付けられた。
見つかったときに素っ裸でナタを持っていたという彼らは二人きり、
他の部族の居留地に送られるが敵対的な態度を取り、他の部族の者を殺害することもあったという。
アマゾンの居留地を転々として30年を過ごすことになる。
その後探しても同じ部族の者は見つからず、
独特な抑揚を持つ彼らの言葉は彼ら二人にしかわからないという状況が続いた。
言語学者が長い時間をかけてようやく800の単語を分類できたが、
それでも彼らの話す内容は断片的にしか理解できない。


2012年に片割れのアウレが癌で死亡。
大きな病院で治療を受け、アウラがずっと付き添った。
死後アウラ居留地に戻り、そこからようやく周りの人たちと打ち解けるようになった。
アウレの死について語ったのは一度きり。
しかし、アウラが今も繰り返し話す単語は部族の最期を語っていたのではないかと
言語学者は考えるようになった。
「夜」と「雨」、「火花」と「矢」、「大きなカヌー」「髭」「部族以外の者」、
「死」を表す三つの言葉、「長く歩いた」「二人きり」
そう、アマゾンの開拓で来た者たちなのか、当時のゴールドラッシュに目が眩んだ者たちなのか、
大きな舟で川を遡った者たちが夜、銃を手にアウラとアウレの部族に襲い掛かり皆殺し。
生き残った二人は長い距離を歩いた。
あくまで仮説。もはや真相はわからない。
彼らの住んでいたとされる地域は開拓されてかつての原生林はなく、
他の未開とされた部族も今や居留地スマホを手にしている。


自分の何が重ね合わされるのかはわからないが、身につまされる思いだった。
この地上に一人残されたアウラは夜、地区の集会所的役割を果たす保健所へ。
テーブルに座って食事を供され、その後珍しく帰らずに、一人しゃべり続けた。
しかしその言葉は誰もわからない。
「夜」「雨」「火花」「矢」…
親切そうだった保健師の女性もやがて子供をあやしながらスマホを見る。
テーブルに一人きり残される。
足の不自由な彼は松葉杖をついて粗末な小屋に帰っていく。
彼が死ぬとき、彼の部族の歴史も言葉も消滅する。
60歳を過ぎて、もはやほぼ消滅している。
人類の成し遂げたことっていったいなんだったのだろうか。


http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20181216_2
今晩遅く、再放送とのこと。