『ボヘミアン・ラプソディ』

クリスマスイヴ。妻と映画を見に行く。
最近の話題作となると、『ボヘミアン・ラプソディ
カメラを止めるな!』に続き、SNSがらみの口コミで大ヒット。
いいことですよね。


タイトルの通りの映画。
フレディ・マーキュリーがクイーンに加わり、契約にありつき、デビューする。
人気が出て「ボヘミアン・ラプソディ」で彼らは最初の頂点を迎える。
プレッシャーに押しつぶされたフレディ・マーキュリー
おかしな取り巻きたちと夜な夜なパーティーに興じる。虚飾の日々。
最愛の女性も去っていく。
ブライアン・メイ、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラー
3人のメンバーとも仲たがいし、ソロアルバムへ。
ますます酒とクスリに溺れていく。
しかしエイズに侵されたことを知り、ようやく自分を取り戻す。
弁護士立ち会いのもと3人とも仲直りし、
ライヴ・エイドに出演するため数年ぶりにクイーンとしてステージに立つ。
ウェンブリー・アリーナ
フレディ・マーキュリーは「ボヘミアン・ラプソディ」をピアノで弾き語り始める。


この1985年のウェンディ・アリーナが伝説の名演だったわけで。
そのライヴ音源をそのまま用い、ラスト21分、そのステージを再現する。
フレディ・マーキュリーの力強い声と振り上げた拳に導かれて
集まった7万もの人々がスタジアムを揺らす。
その迫力たるやない。確かにそれだけで泣ける。
ロック映画の歴史に残る名演だろう。
涙もろい僕がウルッと来たのは当然として、隣で見ていた妻も泣きそうになったと。
クリスマスイヴということもあって満席の場内はほとんどがカップル。
僕よりも先に涙ぐんでいた男性も近くにいたな…


映画そのものは『ユージュアル・サスペクツ』や『X-MEN』などで知られた
ブライアン・シンガー監督のため、手堅く無理なくつくられているけど、
映画そのものは名作というほどのものではないと思う。
これがクイーンとフレディ・マーキュリーの実際の演奏ではなく、
代役のミュージシャンによるものだったら特筆することは何もない、
なんとも凡庸な作品になっただろう。


フレディ・マーキュリーの声には往年のハリ、輝きはなく
高い音域が全く出せていない箇所もあった。
それでも最後の力を振り絞って歌う。
一緒になって歌う観客たちから力をもらい、それを何倍もの強さで返していく。
そのコール&レスポンス。


かといってこれをドキュメンタリー映像そのもので見ても
ここまで感動したなかっただろう。
フィクションの映像にリアルのライヴ音源を足すというアイデア
これが初めてということはないはず。
でもこここまではまった映画はないのではないか、ということ。


事前に入手したサントラがよかったんですよね。
クイーンのベストアルバムはこれまでいろいろあったけど、これが一番しっくりきた。
ライヴ音源と組み合わせることで
クイーンの魅力をすっきり簡潔に、かつダイナミックに伝える。
クイーンの最初の一枚としてはこれがあればいいんじゃないかという決定盤。
そういうところにもクイーンへの愛を感じたんですよね。