会社の行き帰り、今からあの職業に就くにはどうしたらいいだろう、ということを考える。
例えば、殺し屋というもの。
あるのだろうか。ある。この国にも何らかの形で存在するんじゃないか、と思う。
今から5年ほど前、餃子の王将の社長が何者かによって射殺された事件であるとか。
そういうのとは別の、プロの殺し屋。
なんらかの組織に属することはなく、一子相伝ないしは師一人弟子一人受け継いでいくとか。
表向きは別の職業に就いていて、
信頼できる筋からの依頼があれば用具一式を詰めた鞄を手に静かに旅立つ。
地方のビジネスホテルに泊まって、
対象に接近、音もなく仕留めて跡を残さず、去っていく。
この場合、依頼する方は何らかの大きな組織に属しているのかもしれない。
見も知らぬ人からの依頼をホイホイ受けるようなことは危険すぎるのでできない。
殺害の手段としてはヨーロッパのスパイ事件でよく見かけるように
至近距離から毒物を注射するとなるだろう。
ピストルで、なんてのはやはり目に着きやすく危険だ。
血縁関係にない師匠の下に付くというのなら、お互いの素性は知らないまま過ごし、
弟子が独り立ちしたら互いに関係は一切断ってその後二度と会うことはなくなる。
その方が身元が割れなくていい。
そういう可能性はどんな些細なものであってもすぐ芽を摘んでおいた方がいい。
生涯孤独なまま生きていく。家族や友人を持つことは許されない。
一子相伝という場合、家族がいる、ということになる。
父と息子だけではなく、母や他の兄弟もいるだろう。
その中でどう、一族の秘密を守り伝えていくか。
母から息子へ、父から娘へ、母から娘へ、という組み合わせもあるだろう。
母から娘に「殺し屋」を引き継ぐ。母も娘もそれを望んでいる。
母は本来兄にそれを受け継がせようとした。しかし、兄は向いていなかった。
それどころか、人が人を殺してはいけない、このような職業は世の中に存在してはならない、
自分の代で絶やしてしまおうと考えていた。
母は娘に、どこかに消えてしまった兄を探し出し、殺すことを命じる。
それを果たした時、晴れて独立を認めようと。
娘は兄を追い詰めるが…
ここに、独り立ちした天涯孤独な殺し屋の若い青年や
小さい頃に亡くなったはずの父を絡める。
なんか一本書けそうだ。