中国の秘境、マジックの殿堂

昨晩19時半から NHK BS のドキュメンタリー、
「天空のゆりかご 中国・大秘境に生きる」というのを見た。
 
長江の上流、切り立った崖で閉ざされた村。
農業で慎ましく暮らしてきた。電気が来たのは8年前。
ケーブルを2本渡しただけのゴンドラで対岸に渡る。
そのゴンドラを長年操作してきた老人がいる。渡し場の渡し守とでもいうか。
20年前、家族が崖から転落して亡くなったのをきっかけに
全財産を投入し、借金をしてゴンドラをつくった。
最初は人手で押していたのがディーゼルエンジンになり、ようやく電気になった。
家を建てるにもそのゴンドラで資材を運ぶためそれだけで3年かかるという。
いざ建てるとなると村総出で手伝う。
手伝ってくれた人と日数は台帳に細かく控えておき、その人が家を建てるときには
その日数分手伝って返すのだという。
 
そんなふうにして助け合ってきた村も変わりつつある。
橋と道路ができてゴンドラが不要になる。
一方で秘境観光のブームが来て
ネットで見たという都会人がわざわざゴンドラに乗りに来る。
渡し守の老人の家族は、町で暮らす息子の嫁なんかは、
いかにして観光業者により高く売りつけることができるかを考える。
老人は一人何も言わず、寂しそうに部屋の隅に座っている。
 
村の役人が来てゴンドラをどうするかという話になる。
一案として政府に売ってはどうかと。
老人は引き続きその世話係を受け持ってもいい、それならこれまで通りじゃないかと。
でも老人は首を縦に振ることはなく、自分が生きているうちはゴンドラは売らないという。
ゴンドラはこれまで妻と二人で渡してきた。
岸辺の小屋で老人が操作し、妻が車掌としてゴンドラに乗ってきた。
その妻も足の病気でゴンドラに乗ることができなくなった。
今も一人黙々とゴンドラの操作を続ける。油を塗り、磨き、メンテナンスを続ける。
 
割り切れない、やりきれない問題。
中国政府は道路を作り、橋をかけ、
こういった山奥のゴンドラを廃止したいのだという。
大局的にはそれがいいだろう、しかし、そうすることで儚く失われていくものもある。
 
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引き続き見たのが、
「世界最高峰のマジック殿堂『マジックキャッスル2019』驚きと感動の奇跡の技」
 
マジックキャッスルというのはハリウッドにある奇術の殿堂。
会員制で、会員とその紹介者しか入ることができない。
観客席にいるのはフォーマルな恰好をしたセレブだけ。
そこに哀川翔勝俣州和がゲストとして招かれ、レポートするという。
番組としては1年に1回、今年で3回目となる。
 
世界最高峰のマジック、8組のステージ。
一組目。9分で15個のマジックを矢継ぎ早に繰り出すアメリカのコメディ系マジシャン。
二組目。豪華絢爛なイリュージョンを演じるアメリカの夫婦による人体切断術の最先端。
三組目。10代の頃サーカスでジャグリングを学んだというフランスの若者による巧みな技。
…どれも面白かった。
最後の二人が数々のコンテストで優勝している日米の巨匠。
マジックキャッスル奥の図書室でカードマジックの奥深いところを語り合う。
哲学問答のようであった。
 
ステージの後の解説の中に興味深い発言があった。
「マジシャンはイメージしたことの99%は実現できます。
 あとは、どこまでイマジネーションを広げられるかです」