Squarepusher

このところ、ふとしたきっかけで気になってきて、
Sqaurepusher のアルバムばかり聞いていた。
持ってたのは iTunes に取り込んで、
持ってなかったのは DiskUnion で買って。
国内盤帯ありでも500円から800円ぐらいで入手できる。
国内盤の出ていたものは大半が揃った。
 
結果残ったのは
『Burningn'n Tree』(1997)
『Hard Normal Daddy』(1997)
といった初期の高速ドリルンベース+ウネウネうねるベース。
 
(残念ながらこの時期の
『Feed Me Weird Things』(1996)と『Big Loada』(1998)はまだ未入手。
 今でも名盤の誉れ高い 1st『Feed Me Weird Things』が全然見かけない。
 もちろん Amazon にはあるけれど)
 
それと、突然生音ジャズに振り切った
『Music Is Rotted One Note』(1998)と
中期の集大成にして総決算となった
『Ultravisitor』(2003)この4枚。
 
その間の作品も悪くはなかったけど、
iPhone の容量が厳しいため篩にかけて泣く泣く落とした。
最も無機的で得体の知れない匿名性の悪意に満ちた
『Go Plastic』(2001)を最高傑作に挙げる人もいる。
その次の『Do You Know Squarepusher』(2002)は1枚目のスタジオ録音は
Joy Division 「Love Will Tear Us Apart」のカバーなんかをやってるけどたいして面白くはなく、
2枚目の日本でのライブ音源は音の洪水となる瞬間がたびたび訪れて演奏そのものは素晴らしいんだけど、
低音が全然聞こえなくてスカスカに思える。音がよければとんでもない名盤になっただろう。
 
『UltraVisitor』以後はというと。
これまでの反動からかオーガニック感、ハンドメイド感が増した
『Hello Everything』(2006)はやっぱ物足りない。
一人バンド演奏を試みた『Just A Souvenir』(2008)も
面白い瞬間が20%ぐらいだろうか。
エレクトロニクスへの回帰とされた
『Ufabulum』(2012)と『Damogen Furies』(2015)も今一つ。
攻撃的で暴力的な音なんだけど洗練、成熟していて取り立てて刺激的ではない。
アトラクションとしては一流なんだろうけど、安全でどこかに出口が用意されていて
ヒリヒリしたものがない。
 
初期のシングルをまとめた『Burningn'n Tree』は隙間が多い。密度が低い。
ドリルンベースと手引きのベースの足し算であって、掛け算ではない。
だけどこの作品の方が今聞くと断然面白かった。
頭の中になっている音楽を再現できないというもどかしさがそのまま、音楽的な魅力となっている。
未知の部分が残されている。
四半世紀後の『Ufabulum』『Damogen Furies』ともなると脳内音楽の再現能力が余りにも高まりすぎていて
もはやイマジネーションが追いついてないんだろうな。
AIに作らせたでたらめな音楽を演奏、ぐらいのことをしないともはやダメなのでは。
78本の指を持つギタリスト、22本の腕を持つドラマーというロボットに演奏させた作品もあったけど、
向かうべきは逆だったんじゃないか。
肉体、演奏能力ではなくて、知性、イマジネーションの領域。
 
『Ultravisitor』はこの肉体と知性、
シニフィアンシニフィエじゃないけど、演奏するものと演奏されるものとがぴったり一致している。
他のアルバムのように曲の寄せ集め感はなく、「Ultravisitor」という謎めいたコンセプトのもと、
どれだけタイプの異なる曲であろうとひとつの方向性に向かっている。
だから暴力的な音も抒情的な音も皆、純粋無垢なものとなっている。
そこに音楽的な感動があるのだろう。
エレクトロニクスとそれを演奏する肉体とがここまで融合した作品は他にないのでは。