第44回芸能山城組ケチャまつり

昨晩は妻と、妻の後輩ちゃんと3人で芸能山城組による「ケチャまつり」へ。
新宿三井ビルの「55HIROBA」にて44年連続でこの時期開催しているという。
芸能山城組というと映画『AKIRA』の音楽を担当している。
AKIRA』が本来2019年を舞台としていることもあって名画座で再上映されたり、
今年4Kリマスター化されたりで再び脚光を浴びている。
正直な話、僕はしばらく芸能山城組の存在を忘れていたんだけど、
44年祭りを続けるというのはひとつのコミュニティとして全くぶれてないわけだし、
この世界の無数の民族舞踏、音楽のDNAを探ってパフォーマンスを行うという姿勢は
一周回ってようやく時代が追い付いてきたんじゃないかという気もする。
 
仕事を終えて都庁前へ。18時半には着いた。
昼から様々な演目があって、
竹のガムランであるジェゴグの演奏やブルガリアの女声合唱などが披露されたようだ。
僕が広場の階段に座ったときにはバナナの叩き売りが実演されていた。
 
18:45より、ガムランの演奏。
キングレコードが昔だした「WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY」のシリーズの
バリとジャワのガムランを後追いで集めて、ジェゴグも含めて
10枚ぐらいは iPhone に常備してるかな。
そんな僕も生で聞くのは初めて。
床に並んだ金属製のゴングを細かなビートで叩き続ける。
大勢で行うのでほんのわずかなズレが揺らぎを生む。
鋭くも繊細な響きが幽玄な音のうねりを形作る。
世界で最も美しい音楽はガムランだと思う。何時間でも聴き続けられる。
手元を見るととても素早く右手を動かしていた。音階を奏でる方。
これまで僕は鉄琴をイメージしてたんだけど、
むしろスチールギターの打楽器版のような感じがした。
途中から踊りも加わる。
そのうちに日が暮れて夜になった。
 
妻たちが合流。フレッシュネスバーガーでポテトやコーラを買ってきてもらう。
20時過ぎにケチャ。
広場の真ん中に燭台を立て、上半身裸の男たちが集まる。
年老いた男が現れ、並んで座った男たちにお清めの塩と思われるものを振り撒く。
火のように真っ赤なライトに照らされて座ったまま身体を揺らし、
時には風になびく草原のように腕を伸ばし、立ち上がり一点へと向かう。
なんというか、原初からの生物群の生命の活動のような。
怒声のコーラスが行き交い、そこに王子、魔王、猿たちが現れてストーリーを語る踊りを。
新宿のビル街の隙間に異世界が現れたかのような。
この日もまた日中暑かったが、日が暮れて少し涼しくなる。そこに風が通り抜けてゆく。
完売になって入手できなかったんだけど、主催者側ではビンタンビールも売ってたみたいですね。
浴衣やアジアンな軽装で、瓶を片手に歩きながら飲んでいる人たちをよく見かけた。
 
公演は寄付で賄っているという。いいもの見せてもらったと僕も箱に入れた。
芸能山城組では毎日ここで(この広場で?)ケチャの練習をしているという。
いろんな人が加わって活動しているようだ。
ケチャを踊っていた中には小学生らしき男の子もいたし、外国人もいた。
できるんなら僕もガムランやってみたいな、と思った。

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追記:
The Pop Group『Fow How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』
1曲目「Forces of Oppression」冒頭でコラージュされているのがケチャ。
 
『Bali Music from the Morning of The World』の7曲目「Ketjak Dance(excerpt)」から(のはず)。
世界各地の民族音楽を録音したイギリス人 David Lewiston によるもの。1966年。
海外だと Nonesuch から出てるのかな。国内盤も探せばあります。
僕が持っているのは『≪バリ≫バリのガムラン1 世界の夜明けの音楽』