「terrA 神保町てら」

昨晩はおさんぽの取材で仕事が終わってから神保町へ。
「terrA 神保町てら」という店。
以前バル「Bilbi」があったところ。妻と最初の頃のデートで入った思い出の店。
二階建ての小さな建物で、かつては古本屋だった。
「Bilbi」のあとはパンバル「PANKU」となったが、諸事情で閉店。
その後どうなったのかな、と思っていたら今年6月に「terrA 神保町てら」が開店とのこと。
 
まだ若い夫婦で切り盛りしている。
旦那さんは32歳。若い頃はバックパッカーで旅していて、いつかはゲストハウスを開きたいと。
そのために日本の料理を学ぼうと安定した仕事を捨てて居酒屋に弟子入り。開店資金を貯めた。
山が好き、旅が好き、本が好きということで神保町は憧れの地であったが、なにせ家賃が高い。
しかし縁あってここに決まった。企画書に込めた思いが大家さんに評価されたのかもしれない。
 
店を開く前にふたりでスペインを訪れ、リュックサックを背負って
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の 800km を32日間かけて歩き通したという。
旅で困っているときにスペイン各地のバルで出会った人々の優しさに触れて、
様々な人々が集まるバルのような店にしたいと思ったと、語っていた。
この日店は instagram にアップしたその時の写真を見た、
スペイン巡礼の旅に行ってきたばかりだというお客さんが店を訪れていた。
 
1階はカウンターで6・7人か。
2階は手前に6人掛けのテーブル、奥にソファー席。
このソファーはもしかしたら「Bilbi」の頃からのものかな。見覚えがある。
昭和の時代の大きなテレビや置時計もそのまま。
旦那さんは1階ではワイワイ楽しく過ごして、
2階は自分の家のようにのんびりくつろいでほしいという。
食や文化の交流地点にしたい、ワークショップやギャラリーもいずれ開催したいと。
単なる飲食店ではなく、志があるのはいいことだなと思った。
 
それが器のひとつひとつや食材の選び方、調理の仕方に現れている。
最初に出された豆腐は青梅の、品評会で日本一になった豆腐屋に寄るもの。
他は高級料亭に卸しているものを縁あって、ここにも。
新潟の肴豆という枝豆を使用している。
自信作の豚の角煮も新潟産の「甘豚」を。名前の通り、砂糖を入れなくても甘味が出る。
こちらも生産された方とのつながりで。
こんなふうに「縁」というもので成り立っているお店なのだなと。
 
鶏胸肉、モロヘイヤ、オクラの小鉢を食べると底で鯉が泳いでいる。
描いたのではなく、実際に造形して色付けしている。
その小鉢がひとつひとつ違う。台湾の茶器を見つけたのだという。
 
今回最もおいしさにびっくりしたのは鯵のなめろう
旦那さんの故郷九十九里浜では酢を付けて食べる。
小さい頃からそうしていて、それが普通と思ってきたのだと。
新鮮ななめろうは味噌の風味も程よく、あっさり、しっとり。
それが酢を付けるとさらに魚の味が引き立つんですね。
時期によってはカツオのなめろうもあるようなのでまた食べてみたいですね。
 
奥さんが日本酒好きということで東北を中心に全国の様々な蔵のお酒を仕入れていた。
僕も聞いたことないものばかり。
黒板にあったのは
「美酒の設計(秋田)」「楽器正宗(福島)」「文佳人 お化けラベル(高知)」
「赤武 SEA(岩手)」「仙禽かぶとむし(栃木)」「鬼夜叉 遠心分離(新潟)」など。
(オープン当初のラインナップを消さずに残していて、今はまた違うラインナップとのこと)
田酒は「古城の錦」が置いてあったかな。
豊盃は「ん」を飲ませてもらった。これも青森でないとなかなか手に入らないもの。
すっきりしたのを、ということで「美酒の設計」も飲んでみた。
料理もおいしい、酒もおいしいでかなりお金を使ってしまった…
 
今のところ食べログはなし。
お店の instagram のみ。
旅の写真もいいけど、ふたりのイラストにほっこりします。
 
今年一番グッとくる店でした。
長続きしてほしいものです。