『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』

竹橋の国立近代美術館に『高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの』を見に行く。
 
午前中は荻窪の床屋へ。
ナイツの「チャキチャキ大放送」がかかっていた。
来たる消費税10%に向けて、街行く人にそろばんで税計算をさせていた。
 
11時過ぎ、終わって総武線に乗ってお茶の水へ。
駅前の DiskUnion に入ってみる。改装後初めて。
CDの売り場面積は半分ぐらいになってしまった。
その分レコードが増えた。
それが時代の流れなんだろうけど、魅力的な品揃えではなくなった。
今後よほどのことがない限り行かないかもな…
 
神保町で妻と待ち合わせ。
13時頃とまだ時間があったので高畑勲展の前売り券がないか探す。
神保町にあったディスカウントチケットの店は映画専門で、
水道橋まで歩いて行って入った店は東京ドーム、後楽園ホールが近いからか
プロ野球とプロレスのチケットばかりだった。
 
ビアホールの老舗「ランチョン」に入るつもりが、夏休みだった。
先週末の広島で妻の友人たちが入ったという駅ビルの担々麺の店、
東京だと神保町に出店しているというので行ってみることにした。
「くにまつ」という。カップ麺にもなっているようだ。
元味と新味とあって妻とそれぞれ頼んでみる。
神保町は「かつぎや」「辣椒漢」とそれぞれ特色ある汁なし担々麵の店がある中で
ここは素朴な味わいを大事にしている。シンプルイズベスト。
食べ終えた後にミニライスを入れて食べるのがおいしかった。
 
すずらん通りへ。「ミロンガ」に入って古いタンゴを聞きながら
妻はベルギービールを、僕はハワイのコナビールを。
つまみにブルーチーズのピザ。
アート・デザイン系の古書店「magnif」を覗く。
入るとなんか買っちゃうんで怖いんだよなー、と思いつつ、
今回も『広告批評』の「日本のコマーシャルBEST100」というのを。
 
竹橋まで歩いて行って国立近代美術館へ。
涼しい日で、皇居の周りを大勢のランナーが走っていた。
俺も再開しないとな……、と思う。
 
もうすぐ終わるというのに、高畑勲展はなかなか混んでいた。
手掛けた作品を年代順に並べて、それぞれに高畑勲直筆の企画・脚本・演出メモ、
宮崎駿によるレイアウト、(『なつぞら』の)奥山玲子によるキャラクタースケッチ、
その他、絵コンテにイメージボードに背景画に香盤表に
膨大な量の物量、情報量で迫る。床一面、壁一面にメモがぶちまけられた部屋もあった。
宮崎駿は絵やイメージで、
「描かないアニメ映画監督」とよばれた高畑勲は言葉の人だったんだなと思う。
しかし語られるのはそれらの芸術的作品を成り立たせたパーツのみであって、
高畑勲スタジオジブリに加わってという個人的なところはほとんど語られなかった。
あくまで美術展だからか。
 
当代一流のスタッフたちと共に自らの作風を確立し、アニメがどんどんリアルなものになっていく。
火垂るの墓』でその頂点に立ち、『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』で引き算が始まり、
となりの山田くん』がまた反対がの極点、引き算の極みとなる。
それを受けての『かぐや姫の物語』の余りにも美しい、日本アニメの到達点であって。
その流れがよくわかった。劇場で見ておけばよかった……
 
展示の入口で高畑勲の作品、日本と世界のアニメの主な作品、日本と世界の主な出来事を
重ねたクロニクルが大きな部屋の壁一面に広がっていた。
1987年、1988年だとそれぞれ実写映画の『柳川堀川物語』『蛍の墓
『木を植えた男』『王立宇宙軍オネアミスの翼』『となりのトトロ』『AKIRA
国鉄民営化、といったような。
これとても重要で。プリントアウトしたものを配って、
それを手元で参照しながら展示を見ていくことができたらより理解が深まったと思う。
 
個人的におおっと思ったのがテレビ版アニメの『ドラえもん』の企画書を
高畑勲が書いていたということ。
ちょっと大人の事情を感じたのが、
謝辞にスタジオジブリの名前がなく、たぶん何も貸してくれなかったのだろう、
だけど出口を出た後のにミュージアムショップにトトロやカオナシのグッズが売られていたこと。
 
収蔵品展も見ていく。
藤田嗣治、青木譲、和田三造、猪熊弦一郎……。近現代の絵画や彫刻、写真。
高畑勲展に連動して、巻物は日本ならではのアニメーションの原点だったと。
その中に並んでいた横山裕一によるネオ漫画の『アウトドア』
これが相当やばかった。かろうじて漫画の体裁をなしているが、
そこで描かれる音と映像、それによって描かれるストーリー、全ての均衡が狂っている。
僕の頭の中にあるもの、夢で毎晩のように見るものが第三者によって具現化されたようで。
ミュージアムショップで思わず一冊大型版を買ってしまった。
本来の悪夢ってこういうもんだよなと。
何の脈絡もない出来事の連続に翻弄され、根源的な強迫観念だけがある。
Nurse With Wound『Spiral Insana』以来の悪夢の具現化。
 
美術館の庭でハートランドビールを飲んで、一休み。
東京駅まで歩いて、丸の内線を銀座駅まで一駅乗って。
数寄屋橋の交差点に出て、銀座熊本館へ。
『ヴィルゴ』というスペインバルでアヒージョやパエリアを食べた。
一日中歩き疲れてくたくた。
帰りは汐留まで行って大江戸線でぐるっと回って帰ってきた。
思わずうたた寝