『Abbey Road』50周年記念エディション

ビートルズAbbey Road』の50周年記念エディションが先週金曜に発売されて、
2枚目のデモ音源集と合わせてさっそく聞いてみた。
 
一昨年の『Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band』
昨年の『The Beatles (White Album)』同様、
当時のプロデューサー、ジョージ・マーティンの息子である
ジャイルズ・マーティンが新しくミックスし直している。
ベースとドラムの音がほどよくズシリと来て、
アコースティックギターやオーケストラの弦楽器が美しく流れる。
目の前で演奏して、その場で同時進行でミックスしているかのよう。
あの日アビーロード・スタジオで聞こえた音はこういう音だったんじゃないかと思わせる。
 
来年は2020年ということでいよいよ『Let It Be』のニューミックスが登場するはず。
一年に一度届く絵葉書のようで毎年この時期楽しみにしている。
2021年以後は遡って昔のアルバムも出してほしいなあ。
『Magical Mystery Tour』や『Rubber Soul』をこの音で聞いてみたい。
 
よく言われるように解散が決まって、
最後の一仕事とポール・マッカートニーがまとめ役に徹したアルバム。
大半の曲を提供して(主に後半)存在感たっぷりだけど……
Maxwell's Silver Hammer」「Oh! Darling」「You Never Give Me Your Money」
と佳曲揃いではあるものの、ポールの代表曲ではない。
一方でジョージ・ハリソンは「Something」「Here Comes the Sun」と
自身のキャリアを代表する名曲を打ち出して
ジョンとポールに並ぶ作曲家へと成長したことを印象付けた。
 
ジョン・レノンはもう興味無くしてたんだろうなあ。
オープニングの「Come Togher」のとげとげしさ、「I Want You」の緊張感、
後半の「Polythene Pam」の潔さに全てが現れている。
リンゴ・スターは楽しく愉快な「Octopus's Garden」を提供、
この曲がA面のあの位置になかったら
Abbey Road』というアルバムはかなり味気ないことになっていた。
 
後半の「Because」から「The End」を経てアンコールのように「Her Magesty」を。
これら短い曲が矢継ぎ早に繰り出されメドレーのようにつながっていくパートが評価高い。
若い頃は全然その良さがわからなかった。目立つ曲がないなと。
今聞くと楽器の弾けない僕であっても
「これ、どうやってつくったんだろう?」と狐につままれたようになる。
ただ短い地味な曲を並べればいいというのではない。
他の誰にも作れない。ビートルズの底力を感じる。
 
でもやっぱ。
「I Want You」の重苦しいベースとシンセサイザーのノイズが無機的に繰り返され、
高まり続ける中で突然音がブチっと切られる。
一瞬間を開けて「Here Comes the Sun」の瑞々しいアコースティックギターの音が流れだす。
いつ聞いてもここがたまらない。
どんな苦しみに対しても救いはもたらされるのだ、というような。
ビートルズが最後残したメッセージってそういうことなんじゃないかなと。
レコードだと「I Want You」がA面最後なので自分でひっくり返さないといけないですが……
 
青森の実家には高校時代にビートルズのCDかレコードを買った時にもらったポスターを
母が額に入れてくれて今も部屋に飾っている。
『Abeey Road』のジャケットを拡大したもの。
30年近く前のものなので少し色あせているが、
ビートルズの4人は今もアビーロードの交差点を歩き続けている。