辺境のアイドルたち

 
光が丘公園の広場では毎年恒例の新酒祭り。
テントが並び、八丈島を初めとして都内各地の酒蔵が出店する。
モツ煮とおでんの店、たこ焼きの店、広島焼きの店と
毎回同じ店が全く同じ並びで参加する。
島の民芸品や器を売っていたり射的といった遊び場もある。
これら食べものの店がおいしくて必ず食べに行く。
夕方、妻と散歩がてら行ってみた。
 
公園に近づくと何やらスピーカーを通した男性の声がする。
なんだろうか。
今日は裏の小学校が運動会で、昼間洗濯物を干していると賑やかな歓声が聞こえてきた。
そういうのとは違う。
煽っているような声。
先日妻が何かのお祭りのときに通りがかったときに
ものすごくローカルな地下アイドルらしきパフォーマーがテントの中で歌っていて、
(ステージではなく、あくまで並んでいたテントのひとつ)
司会の男性がいて、客が一人もいなかったのに「ありがとうございました」と言っていたと。
その司会の男性だろうか。
いや、その女性アイドルの声も聞こえてしかるべき。
アイドル本人を差し置いて司会の声だけが聞こえるというのはさすがにおかしい。
 
公園に入って広場へと向かう。
新酒祭りのテントはゆるやかな階段の上、ステージよりも高いところにあって
その他の出店は階段の下の広いスペースに並んでいる。
そのひとつが本来テントがあるはずなのに設置していなくて、
若い男性2人がマイクを手に歌って、煽っていた。
その前に熱心なファンが10人ほど。
そうか、やはり下積みのアイドルグループなんだな。
桜祭りを見に来た時もステージでヒップホップ系の若い男性グループが歌っていて、
大勢の若い女の子たちが群がっていた。
今回の2人組もたぶん練馬区出身ってことはなくてどこか他の遠い場所から来ていて、
ファンの子たちも恐らく遠くから来ているのではないか。
ああ、地下アイドルって秋葉原で活動しているだけじゃないんだな、と思う。
 
金曜の夜、『爆笑問題の心配賞!!』を見ていたら地下アイドルの話題になって、
複数の組がステージに立つのを取り上げていた。
この国には今、アイドルが地下も含めて1万人近くいると言っていた。
その中から這い上がるのはごく一握り。
この時登場したアイドルグループのひとつは
5人組だったのが2人抜けてその1人は音信不通になって、
さらにこの日のライブを最後にさらに2人抜けるのだという。
何が何だかよくわからない。
そこまでしながら夢を追い求め、夢を与え続ける。大変なことだ。
現場には混沌しかないんだろうな。
僕が親だったらむやみに応援できない。
 
ともかくもこの埼玉に近い辺境で
末端はとんでもない世界が広がっているのを垣間見ることができた。