いい風呂の日

11月26日は語呂合わせで「いい風呂の日」
なんかイベントあるだろうかと見てみたら
富士山の麓にある下部温泉の11の施設にてこの日無料で入浴できるという。
 
これまで何度か書いたことがあるが、
学生生活も終わりを迎えようとしている3月後半の春休み、
映画サークルの後輩が車に乗ってロケハンに行くというのでついていった。
山中湖のほとりにトランポリンを設置したドライブインがあるという。
樹海に少しだけ入ってみて、トランポリンを探して、
明け方温泉に入って帰るかという話になって地図を探したら出てきたのが下部温泉
朝の9時という中途半端な時間にもかかわらず
部屋に入れてくれるという温泉宿があってありがたく利用した。
飾り気のない古びた、湯治場のような温泉だった。
部屋も客室というよりは布団が積まれた物置だった。
だけど中居さんのおばちゃんがおなかすいてるなら食べる?
ほうとうの入ったカレーを持ってきてくれて、
賄いの残り物なんだろうけどすきっ腹を抱えた僕らにはとんでもないごちそうだった。
 
下部温泉甲府からローカル線に乗って行けば着く。
あの温泉宿また行ってみたいなあと思ってある時調べたことがある。
しかし宿という宿をしらみつぶしに見てみたけど、どれも違う。
廃業した宿の情報がWEB上に残っていたのを見つけた時、
あ、もしかしたらここかもしれないなと。
なんだか切ない気持ちになった。
あのおばちゃんは他の宿に再就職できただろうか。
 
今から十数年前、大学の寮の友人が青森支社に異動になって数年間を過ごした。
夏に帰省したときに会うということが何度かあって、
彼の運転する車で青森県内を旅した。
下北半島を回ってみようと恐山から薬研温泉へ。
鄙びた宿がいいとその一帯で最も安いところにしたらなんとも侘しい佇まいで。
料理は悪くないし、部屋で飲む岩魚の骨酒がうまくて何度も頼んだ。
でもその数年後、あの旅館で火事があったと友人から聞かされた。
ボヤだったか全焼したか今となっては記憶がはっきりしない。
後者だったような……
これも事故だったのか、それとも……
 
もしやと思い、6年前、熊野古道を歩いたときにお世話になった民宿を探してみる。
老夫婦二人だけが営む小さな宿だった。
その日泊まったのは僕だけ、もしかしたらしばらくお客がなかったかもしれなかった。
しかし服を洗濯してくれたり家庭的にもてなしてくれた。
次の日の朝、昼に食べるおにぎりを握ってくれた。
ここも今は営業を終えていた。
 
なぜか今、そういうことばかり思い出す。
そんな風呂の日。
どれもいい思い出なんだけど。