時々、今思えばあれはなんだったのだろう? というものに出会うことがある。
自分に関わるものではなく、多くの人の巻き込まれた事件でもない。
ふと気づいたときに目の前の片隅を通り過ぎて行ったもの。
昨晩、駅に着いていつもの道を歩いて帰った。
団地の間の公園を抜けると練馬特有の住宅街の間の畑に出て視界が広がる。
何気なく空を見上げると飛行機が瞬きながら横切っていく。
なんか大きいな、結構早いなと思う。
というか近い。低いところを飛んでいるのか。
もしかしたらヘリコプターか。サーッと通り過ぎていく。
その高度が少しずつ下がっているように見える。
かといってバランスを崩して墜落しているのではない。
滑らかに下降している。
ヘリコプターにそういうことできたっけ?
どこに向かってるのだろう? 近くにヘリポートあったっけ?
そもそもなんで飛んでる? 大事件が起きて上空から取材?
あれこれ思っているうちに4・5階建てのマンションの立ち並ぶ一角に差し掛かって遮られた。
小走りになって大通りへ。
謎の光を放つ飛行体は消えてしまっている。影も形もない。
しまったな、と思う。
あれはなんだったのか?
イヤホンを外してヘリコプターの音を確認すればよかった。
普通に考えれば下降しているように見えたのは目の錯覚で、
僕の歩いているところからは見えない角度で普通に飛び去ったのだろう。
先に帰っていた妻にそのことを話すと「UFOなんじゃないの?」と。
僕もそう思った。
案外あれがUFOなのだ。
意外と頻繁に空を飛んでいて、誰も気づいていないだけなのだ……
住宅地の隙間に着陸して宇宙人が地上に降り立ち、恐る恐る注意深く付近の調査を始める。
呼吸可能な空気かどうかわからないため宇宙服のようなものを着て。
そんな場面に出会えなかったのが返す返すも残念だ。
明日も仕事。
家の前にところどころ放つまばゆい光に包まれたUFOが着陸するところを思い浮かべながら
布団に入って寝た。