エンディングから始まる小説

エンディングの部分から始まる小説は可能だろうか、と考える。
構成をひねって最初に掲げたクライマックスに至るために時間軸を戻していくというのではなく、
普通の小説ならばハッピーエンドなりバッドエンドなりに至って終わる、
その場面から書き始める小説。
既にあるのかな。実験的な小説とかで。
 
でもただ単に後日談、後日譚を書きたいわけではなく。
ハッピーエンドとして盛り上がった後は退屈な日常が待ってました、と言いたいのでもなく。
小説として切り出した単位としては終わりがあるにしても
物語としてはその前後左右に果てしなく広がってるわけで、それが描けないか。
いや、大河小説ってそもそもがそういうものか。
何世代にも及ぶある町やある家族の物語。
 
しかしそれを何十冊も費やして書くというのではなく、
数十枚の短編小説でそれを感じさせられないか、ということ。
だとするとそれは大きな枠組みを用意して
その中で起こることを細かくたくさん用意しておくが、
描くのはほんの一部分というものになるか。
世界の隅々まで想像しておくに越したことはないが、
最低限のルールを決めておいてあとは予感のようなものに委ねるでもいい。
 
連作で、主人公Aにとってはひとつのハッピー/バッドエンドに至ったが、
居合わせた主人公Bにとってはそれがストーリーの始まりだというようなものとか。
そういうのは古今東西でいくつもありそうな気がする。
それをひとりの主人公で描き続けるというのもありか。
それならば実験的にならず、読むほうも分かりやすい。
それを僕自身の私小説として書くとか。
あのときのあれはその後こういうふうになったんだよな、という。
そう、そういう連鎖のようなもの。
潮の満ち引きのようなもの。