少し前のこと。
5月下旬、東京都の緊急事態宣言が解除される数日前。
午後、郵便物を取りに出たらガレージにネズミの死骸が転がっているのに気づく。
身体そのものは小さく10cmもなかったか。
しかし尻尾がピンと伸びていた。
手足も丸まらずに突き出て、口と目が開いていた。
ロウのように真っ白だった。
家野中からスーパーの袋を持ってきて、
玄関のゴミ箱に捨てていた使い捨てマスクでくるんで掴んで袋の中へ。
家の外に置いておく。
次の日が燃えるゴミの日だったので一緒に出した。
ガレージと言っても建物があるわけではなく、
バルコニーの下が駐車場になっているというだけ。
入ろうと思えば誰でも足を踏み入れることができる。
(もちろんその先はいつも鍵をかけていて、玄関にも鍵をかけている)
ネズミはその石畳の上に転がっていた。
車を入れたときにはその中心に来るような位置。
もしかして誰かの嫌がらせだろうか?
自粛警察が見回っていて、県外ナンバーの車を見て、という。
妻の車は故郷から来たもので、ナンバープレートをそのままにしていた。
3週間が経過して、考えすぎだったのだろうと思う。
ようやくそう思えるようになった。
その後車に対して直接いたずらはされず、ポストに変なものが投げ込まれることもなく、
道路に面した植え込みに不快なものが捨てられるということもなかった。
その間に緊急事態宣言が解除され、急速にそれまでの生活に戻っていった。
しかし、嫌がらせと思ったときにはかなりゾッとした。
誰かがどこかで見張っている。
いわれのない悪意を抱いている。
小動物の死骸というのも呪いの儀式のようで。
一方で、他県のナンバーで嫌がらせを受けるというのは
東京など大都市からの車なんじゃないかと首も傾げた。
この場合は逆だった。
何か他に気に食わないことがあったのだろうか。
たまたまだった。
練馬ならネズミもいるだろう。
見つけた死骸をわざわざ保存しておいて、
ここぞという家に捨てるという愉快犯はきっといないだろう……
地下鉄の線路で見かけるような巨大なドブネズミではなかった。
まだ生まれて間もない頃のネズミだ。
食べ物がなくて飢え死にしたか。
毒になるものを食べてしまったか。
ネズミ自身には罪はない。
このネズミが病気を持っていなくてよかった。
いや、その数日後みみたがなぜか一日に何度も吐いてたな。
よく洗ったつもりで僕の手から何かがうつっていたのだろうか。
しかしそれも一日で済んだ。
今となっては何もわからず。