『日本縦断 こころ旅』

4月後半から始まった在宅勤務で生活のリズムが変わって、
毎日の習慣というのもかなり変わることになった。
通勤がない、というのが大きい。
7時に起きて、19時までには仕事が終わってプライヴェートの時間になる。
晴れていたら外で縄跳びをして、リビングでクッション腹筋。
朝だと知人のコーヒーショップから挽いてもらった豆でコーヒーを淹れる。
NHKBSプレミアムで朝ドラを見る。
 
そこに加わったのが、引き続き『日本縦断 こころ旅』を見ることだった。
朝版が7:45から。夜の「とうちゃこ」版が19:00から。
朝は6時前に家を出て、定時に出るなどどう頑張っても
19時過ぎに家に着く以前の生活だったら見ることはできなかった。
 
青森に帰ると母がよく見ていた。
俳優火野正平が自転車に乗って、撮影や音声のスタッフを引きつれて
視聴者からの手紙に書かれていた思い出の場所を訪れるというだけ。
特にドラマチックなことが起きるわけでもない。
番組見てますよという年配の方に声をかけられたり、
何の変哲もない地方の定食屋や蕎麦屋、ラーメン屋で昼を食べる、
時折景色のきれいな場所に出会う、ただそれだけ。
何が面白いんだろうと。
 
僕が在宅勤務となってしばらくして、今年春のロケが中断。
2014年春の旅が再放送になった。
愛知県から始まったんだったか。京都から北陸、東北の日本海側へと日々淡々と進む。
一週間で一県。火曜から金曜まで4カ所を巡って、次の県へ。
なんとはなしに見ているうちに毎朝毎晩欠かせないひと時となった。
何がいいのかよくわからない。
 
火野正平さんもどっちかというと口が悪いし。
でも口が悪い人はえてして心は優しいものであって。その優しさが垣間見えるのがいいのか。
決して聖人君子ではなく、欲にまみれた日々を過ごしてきて今ようやく枯れてきたというのがいいのか。
 
撮影再開の予告が先々週放映されて、今週になって放映再開。
神奈川県。三浦半島であるとか4か所を訪れた。
ヘルメットに丸眼鏡、
アメリカのゴールラッシュの時代の鉄道強盗のように口元にバンダナを巻いた姿は
ザ・タイマーズ忌野清志郎というかその周りのメンバーのようだった。
 
先週までは再放送の青森だった。
木造、六ケ所、八戸の蕪島、階上の神社。
後のふたつは僕も訪れたことがあった。
それまでずっと日本海側を走ってきて、青森で太平洋側へ。
 
僕ならどこを手紙に書くだろうか。
そんなことを考えながら見ていた。
高校の通学路にあった周り一面の田んぼだろうか。
でもそれだけだと思い出としても風景としても物足りない。
なかなか見つからないまま青森の週は終わってしまった。
 
子どもの頃住んでいた町から自転車に乗って出掛けた埠頭。
母の実家のある山間の無人駅。
一年生の一年間だけ過ごした、小高い丘の上にあった小学校から見た町の風景。