弱い橋をつくる

おかげさまで妻がメインナビゲーターを務めるオンラインイベント
『【イシス祭@熊本】来て見てはいよ! 熊本「朝見世」モノヒト語り』
が無事、本日昼に終了。
妻や友人たちが集客をがんばって、当初の定員をオーバーすることに。盛況でした。
 
熊本城の城下町で「毒消丸」を商って100年以上続く老舗の「吉田松花堂」と
イタリアの職人たちのつくる高級な服や鞄を扱う銀座の「HIKO」
ふたつの店を重ねて熊本というもの、店というものを語るという試み。
ここでしか聞けない話ばかりとなって有意義な時間になったと思う。
 
最後に登場したのは熊本市在住のM君。
仕事の合間を見つけては
7月初めに起きた県南地方の豪雨災害のボランティアに出かけている。
facebook で毎日のようにそのことを書いていて、状況がリアルに伝わる。頭が下がる。
その報告が少しなされた。
 
あれから2カ月経過。
町全体がまだ、泥と下水の混ざった臭いがして真夏。いまだそれがきついという。
人付き合いの盛んな人の家はどんどんボランティアに手伝ってもらってきれいになりつつあるけど、
お年寄りの家などはボランティアにも頼みにくく
家の中の泥や外に捨てられたものがまだ全然片付いていない。
そういう格差がどんな所にもついて回る。
 
こんな話があった。
日本の三大急流のひとつに数えられる球磨川
林業が主要産業ということもあって頑丈な橋があちこちに架けられている。
その頑丈さが仇になって上流から流れてきた岩や車といったあれこれが橋に引っかかって、
溜まりに溜まってその重みに耐えきれなくなって壊れる。
それが付近の家に甚大な被害をもたらす。単に大量の泥水が溢れるのではない。
少なくとも3か所の別々なところでその話を聞いたと。
 
これまでの日本は、特に昭和の時代の建築物というのはより強く、頑丈にという考えでつくられてきた。
M君は、あえて脆い橋をつくるほうがこれからの時代に合うのではないかと言う。
トラックは通ることができるが、集中豪雨のような強い圧力のかかったときには自ら壊れる橋。
実現するのは工学的にかなり難しいだろうし、代わりにダイナマイトを置いておくというわけにもいかない。
でもその発想はありだな、と思った。
 
M君は facebook でも数週間前にそのことを書いていて、読み返してみたら
車が通るなどの上からの圧力にはこれまで通り強く、
川の流れなど横からの圧力にはあえて弱くつくることができないかと。なるほど。
それだったら実現の糸口は見えてくるだろうか……
人々が腕を組むように必要な時はしっかり結びついて
危険な時には腕を離し合えるというような。
そういう橋。弱いを前提とする橋。
 
九州には大型の台風10号が近づいている。
今朝、熊本の店では養生テープやミネラルウォーターなど様々な物資を買う人たちでレジが行列になっていたと。
災害に備えるために買っておくといいものを聞かれたときにM君が答えていたのは
スマホを充電するバッテリーと水を溜めるためのポリバケツとのこと。