岡本太郎記念館

妻が仕事の関係で岡本太郎記念館に行ってみたいという。
興味があるなら一緒に行かないか、となって今日の午前休みを取った。
妻の運転する車で南青山へ。
朝なので高田馬場から北参道に抜ける辺りが混んでいた。
 
骨董通りの近くにあった。
高級なブティックや輸入雑貨の店が立ち並ぶ一角の少し奥まったところ。
この界隈は何度も来たことがあったのに
僕は恥ずかしながら岡本太郎記念館のことを知らなかった。
根津美術館も近いですね。
 
灰色のコンクリートの箱のような建物。
冷たさはなく、どこかゆったりしている。
それが半分と、残り半分が山荘のような邸宅と。
青山だけあって隣も同じような古くからの超高級邸宅だったように思う。
庭にバナナなど南国の木々が生い茂り、
その間に「犬の植木鉢」といった有名な彫像が無造作に置かれている。
二階のベランダから太陽の塔が身を乗り出して、地面に立った象を見下ろしている。
 
シュールだけどどこか懐かしい空間。
なんだか安らぐし、こちらもエネルギーをもらうような。
難解な作品を前にしてこちらがエネルギーを要する、というのではない。
岡本太郎というと「芸術は爆発だ」という有名なフレーズと共に
赤青黄色と原色のけばけばしい作品を思い浮かべる人も多いと思うが、
ただ奇抜なものをつくったのではない。
我々の原初に潜むものを素直に引き出したのだ、というのがよくわかる。
 
入場料を払って中へ。
1階がサロンとアトリエとミュージアムショップ。
2階がふたつの展示室。
庭を臨むサロンには一瞬本人かと見間違えてギョッとする精巧な実物大の人形と
「こどもの木」といった作品や何体ものカラフルな「坐ることを拒否する椅子」
天井には飛行船の模型が浮かんでいる。
アトリエは横に広い壁一面が棚になっていて大小様々なサイズの額が収まっていた。
左手には生前作業していた時のままと思われる机。
細かなものから巨大なものまでの刷毛。古びた絵の具の瓶やチューブ。
その脇によく見るとゴルフバッグが立てかけてあった。
右手にはアップライトのピアノ。岡本太郎が引いたのだろうか。
いくつか並んだイーゼルにはもちろん油絵が。書き上げた直後という雰囲気があった。
吹き抜けになって2階には書棚。こちらは上がることができず。
読書家だったと聞いているけど、どんな本が並んでいるのか。
 
2階の展示室はひとつは岡本太郎賞を受賞した作品の展示。
もうひとつは岡本太郎の版画の特集。
ミュージアムショップで1966年に出版された画集が発見された、というのを買う。
ほとんどのページが白黒で時折カラーが混じるのみ。
しかし冒頭で阿部公房や武満徹花田清輝といった方たちが言葉を寄せ、
岡本太郎自身の文章も添えられていた。
1966年なので東京オリンピックのメダルが最後の方に登場するが、
大阪万博はまだなので太陽の塔は出てこない。
最近出た画集や太陽の塔周りの写真集はきれいなつくりのものが多いけど、
昭和の時代のこういう素朴なもののほうが岡本太郎には合うかな、と思う。
 
ミュージアムショップでは岡本太郎記念館館長、平野暁臣氏選曲の
70年代の日本のジャズのコンピレーションCDも買った。
ジャケットが岡本太郎作品のコラージュ。
3種類出ていて、有名なところでは渡辺貞夫、日野皓正、菊地雅章といった名前が。
 
午後は僕も妻も仕事、かつ駐車場がなくて目の前のコインパーキングに停めたら
10分400円と超都心設定だったのでゆっくりはできず。
一時間もいられなかった。
今度来るときは時間を気にせずその空間に浸りたい。
作品を見るというよりは岡本太郎のエネルギーを浴びに行くという感じなんですよね。
 
エネルギーをもらったようでいてどこか追いつかないところがあったのか、
僕も妻も仕事にならず、帰ってきてそれぞれ午後のひと時をソファーで寝て過ごした。