下山(GEZAN)『侵蝕の赤い十六日・東京』など

外壁塗装の工事もあってこの四連休はどこにも出かけず、
読みかけの寺田寅彦の続きを読んでるか、最近買ったCDの解説を読んでるか、
昔買ったけど床に積み上げたままになっていたDVDを見るか。
 
土曜は大森靖子。どちらもアルバムの特典DVDを。
MUTEKI』のZEPP東京と今年出たベスト3枚組の全都道府県のライブハウスを回るツアーと。
生き様系とでも言うか。
「上手に生きることのできない不器用で醜い私」を前面に出す女性シンガーソングライター
というひとつの傾向がある。その中では頭ふたつみっつ抜け出ていると思う。
いや、そんなたくさんの人を聞いたわけではないけど。
音楽的な高さ、という意味では宇多田ヒカル椎名林檎には全然かなわないと思う。
それは持って生まれた才能というみもふたもないものに結局はなってしまう。
じゃあ、僕らは宇多田ヒカル椎名林檎だけを聞いていればいいかというとそんなことはなく。
そこには辿りつけないもどかしさをどんな心の叫びにするか、
私は私で生きているという強さを、弱さを、どこまで表現できるか。
「M」「オリオン座」「Family Name」「きもいかわ」といった曲が妙にひっかかった。
 
日曜は OASIS の2009年の解散表明後に発表されたシングル集
『Time Flies 1994-2009』のビデオクリップを収録したもの。
トータルで3時間近くというのにびびって発売から10年ほったらかして、ようやく見た。
スタジオでオーケストラと共演する「Whatever」と
ボスニアヘルツェゴビナの戦地跡を思わせる場所で撮影した
「D'You Know What I Mean?」が印象に残った。
やっぱ2枚目の『(What's the Story)Morning Glory?』の曲はいいなあと思いつつ、
後半はなんかしながら見る、になってしまう。
 
今日は Tool『Salival』と下山(GEZAN)『侵蝕の赤い十六日・東京』
どちらも今は入手困難で、DiskUnionで辛抱強く中古の入荷を待ってようやくこの夏購入。
どちらも下手な映画を見るよりもよほどよかった。
Toolは初期のビデオクリップ4本。(付属のCDにはライヴなどレア音源も)
クレイアニメがメインとなるか。
どれも体毛のない、奇形の体を持つ人類の末裔が架空の未来世界で一人きり生きていて、
その存在証明のために残虐な行為を受け続ける、という感じ。
これはヴォーカルのメイナードではなく、映像の仕事をしていたというギターのアダムの世界観か。
多くの人は受け付けないと思うが。
TOOL - Stinkfist
 
下山(GEZAN)は2012年に大阪から東京に活動拠点を移して、
高円寺の「UFO CLUB」や「二万電圧」といったライヴハウス
16日間連続で演奏した時のドキュメンタリー。
ヴォーカル、ギターのマヒトゥ・ザ・ピーポーはこの前毎日新聞の取材も受けていたので
かなり今更感ありますが。
これは日本ロックのひとつの極点だと思う。1970年代京都の「村八分」から連なる系譜。
この手のものでこれを超える音源、映像ってもはや出てこないのでは。
ドラムは半裸。ベースは全裸。ギターの二人は肩までの長髪。
メンバーは容赦なく客席に飛び込んで殴りかかっていく。
つかまえたらくってやるぞ、と言わんばかりに。
どしゃめしゃ、やぶれかぶれな轟音に身を任せたシャーマンたちが野蛮な儀式を行っているような。
ロックは本来、生来のはぐれ者、あるいははぐれ者に身をやつした者たちでないと生み出せない音だった。
それが痛いほどよくわかる。これが本物の音なのだと思う。
時代錯誤こそ時代を超える。