ベストアルバムというもの2

年明けぐらいに Spoon のベストアルバム『Everything Hits At Once』を買った。
2007年の出世作『Ga Ga Ga Ga Ga』や2017年の最新作『Hot Thoughts』
といった代表作に限らず、
初期の『Girls Can Tell』や『Kill The Moonlight』からも選ばれている。
最後には新曲も1曲収録されている。
それなのに13曲で46分とLPサイズ。コンパクトにまとまっている。
USインディーズの雄。さすが潔いな。
 
帯にこんなことが書いてあった。
ヴォーカルのブリット・ダニエルの言葉。引用します。
「ベスト盤のアイデアは何度かあった。
 最初はどうしようか迷っていたけれど、ある時思い出したのは、
 俺が初めて買ったザ・キュアーの作品は『Standing On A Beach』だったし、
 ニュー・オーダーの作品は『Substance』だった。
 そうやってバンドたちに出会い、そこから過去へ遡った。
 上手くまとまっているベストアルバムは大好きだ。
 それ自体が作品になり得るからね。」
 
ああ、そうだよなー。
『Standing On A Beach』も『Substance』も僕が聞いたのは高校時代か。
どちらもそのバンドの入り口になって、今でも聞き続けている。
確かに「それ自体が作品になっている」からだ。
前者はほとんどがシングル曲んだけど
最後に「A Night Like This」という活動初期から演奏していた隠れた名曲が置かれている。
後者は12inchシングルを年代順に集めたもの。2枚目はそのB面。
普通のシングルを並べるよりも彼ららしさが伝わってくる。
 
前にも書いたが、ベストアルバムは12曲ぐらいで50分弱というのがちょうどいい。
CDの収録時間めいっぱいだとお得感はあるけど、
自分たちの焦点が絞り込めていないように感じられる。
20曲で80分近くとなるとそこで完結してしまい、これだけ聞いていればいいかとなる。
12曲で50分だと他のアルバムを聞いてみようと思うようになる。開かれている。
 
よくできたベストアルバムは魔法がかかっている。
以前は The Cars『Greatest Hits』が素晴らしいと書いて、それは今も変わらないんだけど、
今選ぶ究極のベストアルバムは R.E.M.『Eponymous』かな。12曲で43分。
「Radio Free Europe」「Gardening At Night」「Finest Worksong」
といった代表曲はミックス違いを収録。
未発表曲「Romance」もこの並びだと違和感がない。
新曲や未発表曲が1曲入っているのがいいアクセントになるんですよね。
新曲だとこれからの方向性を指し示すし、未発表曲はバンドの隠れた一面を引き出す。
 
僕自身は彼らのオリジナルアルバムのひとつと思って聞いている。
『Standing On A Beach』も『Substance』もそう。
ダニエル・ブリットも『Everything Hits At Once』をそんな思いで選曲したんじゃないか。
今聞き直しているが、秋の風のように柔らかく吹き抜けてゆくのを感じる。