先週買ったCD #5:2020/11/09-11/15

2020/11/09: www.hmv.co.jp
Rachael & Vilray 「Rachael & Vilray」 (\2201)
Michel Corboz 「Faure: Requiem」 (\880)
HMVのポイントで
 
2020/11/09: www.amazon.co.jp
Tom Petty & The Heartbreakers 「Damn the Torpedoes Deluxe Edition」 \3499
 
2020/11/10: ヤフオク
山崎まさよし 「Blue Period」
※2枚セットで1,000円
 
2020/11/12: www.amazon.co.jp
Cabaret Voltaire 「HAI!」 \864
 
2020/11/12: www.hmv.co.jp
山崎まさよし 「With Straings」 \297
山崎まさよし 「Cover All Ho!」 \297
福耳 「The Best Works」 \297
 
Rachael & Vilray 「Rachael & Vilray」
ボストンの音楽学校で出会った2人が再会、
古きよき時代のジャズが好きという共通点に気づいて一緒にステージに立つようになった。
ヴォーカルのレイチェル・プライスは Lake Street Dive という
その音楽学校で出会った仲間たちで結成されたグループで歌っていた。
ウェルメイドな Pop / Rock / R&B を演奏する。
雑味がなく、嫌味もない。趣味のよさを感じた。
 
毎日新聞にて以前、3人の音楽評論家が1枚ずつ新作のアルバムを紹介する
という月に一度のコーナーがあって、
2016年、「Side Pony」というアルバムの国内盤が出たときに取り上げられた。
男女2人ずつの4人組。真ん中に立つ、健康的で品のいい金髪の美女がヴォーカルだろう。
サイド・ポニーとは脇の方で束ねるポニーテールのことで、
もうひとりの女性がその髪型だった。
このジャケットが白黒の紙面でもかっこよく、すぐ買いに行った。
 
2018年に「Free Yourself Up」を発表。こちらは国内盤は出なかった。
その後新作は出たのだろうかと先日検索してみたら代わりに「Rachael & Vilray」が。
昨年の10月には出ていたのですね。
細野晴臣がラジオ番組でかけて、桑田佳祐も愛聴していると語ったと。
Lake Street Dive が70年代アメリ東海岸のFM局から流れる音だとしたら
Rachael & Vilray はもっと遡って40年代のアメリカで全国放送されたAM局か。
夕食後、家族そろってラジオに耳を傾ける時間に流れる優しい、だけどビターなジャズ。
一頃ウディ・アレンが郷愁を込めて描いたような。
 
新しいものは何もないけど、古びたものもどこにもない。
12曲のうち、10曲はヴォーカルとギターのヴィルレイ。
残る2曲はスタンダードナンバーだろう。
歳をとればとるほど、この”未来のノスタルジア”とでも呼ぶべき音楽が
しっくりくるようになる。
 
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Tom Petty & The Heartbreakers 「Damn the Torpedoes Deluxe Edition」
日曜はできる限り予定を入れず、家でゆっくり過ごす。
11時から15時までは InterFM の『Lazy Sunday』を聞く。
”音楽はFM、トークはAM”と呼ばれているが、
ジョージ&マヤさんの掛け合いが面白い。
音楽も70年代の西海岸を中心に素晴らしいものばかり。
若手・ベテラン問わず日本人のミュージシャンや
来日したミュージシャンがよくゲストに呼ばれるので最近の音楽もよくかかる。
70年代の西海岸というと主に
 
トム・ペティはソロになってからの1枚目の「Full Moon Fever」しか持っていなかった。
(1曲目の「Free Fallin'」は『Lazy Sunday』でも2ヶ月に1回はリクエストでかかる名曲)
最近、ソロ2作目「Wild Flowers」の4枚組 Deluxe Edition が出るということで
ジョージさんが表題曲をかけていた。これがかっこいい。
せっかくだからとこの Deluxe Edition を買った。
ライヴテイクやデモトラックが目いっぱい詰め込まれていて
等身大のトム・ペティがどんな人かほんの少しわかったような気がした。
 
もう少し聞いてみようと、Tom Petty & The Heartbreakers の代表作「Damn the Torpedoes」を。
リマスターされたのを探そうと思ったら紙ジャケはとっくの昔に販売終了でプレミア。
輸入盤のみの2枚組 Deluxe Edition も中古がわずかに流通しているのみ。
もちろんこちらもプレミア。
お、これはまだ安いほうかと amazon を通して海外の業者から買ってみたら
割とヨレヨレのものが届いた。致し方なし。
 
「Damn the Torpedoes」は邦題が「破壊」
リッケンバッカーを抱えたトム・ペティ一人がジャケットに写っている。
1曲目の”Refugee”から9曲目の”Louisiana Rain”まで
少し陰った王道アメリカン・ロックがグイグイと繰り出される。
トータルタイムは37分と潔い。無駄がない。しなやかで引き締まっている。
(Deluxe Edition の2枚目も9曲で30分しかない。その分駄曲がない)
 
これ、中学・高校のときに聞いてもよくわからなかっただろうな。退屈だと遠ざけただろう。
でもおっさんになった今聞くと、この何の変哲もない音、
何も足さない何も引かない音を出すのがいかに難しいかということがわかってくる。
しかもバンドの状態がいい。一体感がある。
これはどこに向かおうとしているかメンバー皆が皮膚感覚でわかっていて、
実際そこに到達できた音だな。
 
なお、2曲目のポップなメロディーが印象的な”Here Comes My Girl”は
一世代下のスザンナ・ホフスとマシュー・スィートが
60年代、70年代、80年代のロックの名曲をカバーした
”Under The Covers”シリーズでも取り上げられていた。
 
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先週末、南房総の温泉宿に止まって夜、
焼酎を飲みながらぼんやりとテレビを眺めていたら『Songs』のゲストが山崎まさよし
ホスト役の大泉洋とは実は同じ年にデビューしていて、それぞれ50歳を前にする歳になったと。
小さい頃見ていた50歳は何でも知っていて、責任感がある立派な大人だったけど、
いざ自分が近付いてみると周りにそんな立派な50歳って全くいないよなあ、
昔の50歳は偉かった、そんな話だった。
僕よりも一回り上のお兄さんたちがもうすぐ50際になる。
 
”僕はここにいる”やコロナの自粛期間中につくったという新曲の”updraft”を歌った。
改めて、いい声だなあとしみじみ思った。
僕がそれまで持ってたのは2つのライヴアルバム「ONE KNIGHT STANDS」と「Traisit Time」だけで、
ああ、もっとちゃんと聞こうとその場でさっそく、HMVのサイトから中古で3枚オーダーしてしまった。
古いのだと帯付き、初回限定盤DVD付きで330円だったりするんですよね。
なんかもっと高くてもいいように思うけど。人気がある、ってそういうことなんだろう。
 
ヤフオクでは初期のベストアルバム「Blue Period」と
同時発売のB面その他集の「Out of the Blue」のセットが
初回限定盤のカラーケース付き、帯付きで1,000円だった。
入札したのは僕一人だけで、翌日落札となった。
まず聞いてみたのは「Out of the Blue」の方で、
”江古田”という曲はライヴアルバムにも入っていたよなあとか
Over the Rainbow”や”Stand By Me”のカバーが入ってるなあとか
”お家へ帰ろう”はハウスのシチューのCMで流れてたなあ、
帯を見るとああこの曲もあの曲もCMで使われてたのかと
なんかもう普通のシンガーソングライターなら表のベストなんじゃないかってぐらい粒ぞろいで。
”セロリ”や”One more time, one more chance”の入っている「Blue Period」を聞くのが怖くなってきた。
 
Out of the Blue」で面白いのは2枚目。
”mud skiffle track”というシリーズが11曲入っている。
これまでシングルの中で発表されてきた、
その名の通りギターとハーモニカを中心としたスキッフルな短いブルースナンバー。
これが山崎まさよしならではの独特な深みと軽さをもった演奏で。
ただ声がいいだけではなく、こういう引き出しがいくつもあるから
長い間活動を続けることができるんだなと。
勉強になります。
 
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福耳 「The Best Works」
もうひとつこちらも HMV のサイトで。
予定のない日曜の夜、妻と初回限定盤のDVDを見る。
1曲目が”星のかけらを探しに行こう Again”のクリップで、
2曲目が”星のかけらを探しに行こう Again”のライヴバージョンのクリップ。
10曲目も”星のかけらを探しに行こう Again”のライヴ。2004年のAugusta Camp
どんだけ押してんだ、と突っ込みたくなるけどこれがまあ唯一無二の名曲なんですよね。
 
妻と、あの当時カラオケに行くと誰それが必ず歌ってたとかそういう思い出話に。
1999年。僕が新卒で入社した年。
社会人になってやりたかったことのひとつにスキューバダイビングがあって、
荻窪のダイビングショップに通ってライセンスを取ろうとした。
その時のインストラクターの方が携帯の着メロにしていて、耳にタコができるぐらい聞いた。
彼は鼻歌でも歌っていた。
 
BARBEE BOYSの杏子、山崎まさよしスガシカオといういろんな意味でちょっとあり得ないメンバー構成。
所属事務所が同じだから、というのがよくわかるようなよくわからないような。
あの頃の流行語のひとつに”ドリカム状態”っていうのがあったけど、
クイーン&キング・オブ・”ドリカム状態”は間違いなく福耳だろう。
でも、よくも悪くも「星のかけらを探しに行こう」が素晴らしすぎて他のシングルが耳に残らない……
 
CDの後半は Office Augusta 所属アーティストたちがコラボした曲。
福耳の3人の他は、COIL とスキマスイッチ元ちとせあらきゆうこ
ショーケースとしてよくできている。
恥ずかしながら、スキマスイッチを初めてちゃんと聞いた。あ、いいじゃん! と膝を叩く。
ベストアルバムの帯付きが HMV のサイトで330円だったので買ってみることにした。
 
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Cabaret Voltaire 「HAI!」
大学進学を機に青森から上京してきた。
バイトに行くとか、映画を見るとか都心に出るときはCD屋ばかりめぐって歩いていた。
90年代半ば。携帯ではなくポケベル(持ってなかったけど)。
インターネットの存在は知らず、MacWindowsを持っている人もまだ少なかった。
洋楽に関する情報源は身の回りの同好の人たちとの会話、
『Rockin'on』といった雑誌やシンコー・ミュージックなどから出ているガイドブック、
そして国内盤の解説のみという時代だった。
今のように amazonHMV といったECサイトもなく、
欲しいものがあったらとにかく電車に乗って歩き回るしかなかった。
あの頃は新宿や池袋に Virgin Mega Store があったし、
中野ブロードウェイには中古CDの recomints が最大3店舗あった。
 
そのアーティストの他のはよく見かけるのにあるアルバムだけが見つからなくて、
1年も2年も探し続ける。ようやく見つけたときの嬉しさと言ったらなかった。
先週まではその棚になかったのに、根気よく定点観測していたらなぜか今週は置いてあった。
今もよく覚えているのが、
Tuxedomoon「Divine」(モーリス・ベジャールのバレエ作品のためにつくられた)と
Cabaret Voltaire「Three Mantras」
 
後者はインディー大手の Mute から出ていたからか
「Mix-Up」や「Red Mecca」といった初期のアルバムが輸入盤屋なら必ず何枚も置かれていた。
(ちなみに1枚目の「Mix-Up」は大学生協の輸入盤のバーゲンで買った覚えがある。800円ぐらいだった)
Mute時代のほとんどのアルバムを買い揃えていたが、この「HAI!」だけは買わなかった。
ジャケットには「唯」と漢字一文字があしらわれ、機材の並んだ無人のステージ。
そこになぜか関取の背中の映像が投影されている。
その頃の僕にとっては相撲というのは夕方の病院や薬局に行くと必ずテレビでやっていて、
他のチャンネル見たいのにな、なんだかな、カッコ悪いな、というものだった。
(妻の影響でここ数年相撲の中継を見るようになって、それは180度逆転したが)
 
ジャケットの通り、来日公演のライヴアルバム。1982年。
ブックレットには当時の資料がそのまま使われている。
チラシに寄ればツバキハウスとボトムラインでやったようだ。
そして評論家、水上はるこによる”ノイズで踊れば怖くない”という表題の記事。
よく見たらジャケットの裏の Thanks To の一人がピーター・バラカンだった。
 
この時期は創立メンバーの一人、クリス・ワトソンが Hafler Trio を結成するために脱退した直後。
早すぎた音響系というか、音というものと音楽というものの違い、
その関係性が当時誰よりもわかってる人だったんじゃないかと思う。
美しい音楽とされるものとノイズ・ミュージックとは等価のものであると。
以後、グループはお決まりの方向性としてダンスミュージックへと接近していく。
 
その過渡期にあって、生ドラム担当のメンバーを加えた編成となっている。
残された創立メンバーの一人、スティーブン・マリンダーはグワグワしたベースを弾いて、
もう一人のリチャード・カークはギターやエレクトロニクスによるノイズを。
Throbbing GristleSPK と並んで”インダストリアル”の創始者とされるが、
この頃はまだ攻撃的で強迫的な音を出していた。今聞いてもかなり刺激的。
当時なんで聞かなかったんだろうなあ。
些細なことで人はその音楽を聞こうとして、些細なことでその手を引っ込めてしまう。