第四の男

土曜の夜、最近はBSフジの『所さんの世田谷ベース』を見ている。
正直、何が面白いのかわからない。さっぱりわからない。でも、見てしまう。
 
昨晩はいつものガレージの2階で古い短刀の刃をひたすら砥石で磨いていた。
その間にあれこれ蘊蓄や与太話を話すのを見るだけで45分。
役に立つようでいて役に立たないことがほとんど。
「刃を磨くとは己を磨くこと」といった名言も出てくるが、
これは何も所ジョージが初めて言ったことではない。
残り15分は出入りしている若者が持ち込みで、
モデルガンのレボルバーに台座を付けたというのを紹介。
たまにモデルガンの射的の大会をやっているのでそこから発展した話。
 
先週か先々週は視聴者からのメールを読んでいた。
これもガレージの1階で。椅子に座って読んでいくだけ。
途中寝落ちして目が覚めたら変わらず読み続けていた。
また寝てしまった。
 
でも、見てしまう。
あのしゃべり方、存在感、世の中とか物事との距離の取り方がかっこよいのだろう。
斜に構えるわけではなく、ただただ自分の好きなことをやり続けるというだけ。
ひょうひょうと、一人楽しそうに。
たまに『ポツンと一軒家』を見るけど、
VTRがメインのあの番組よりも世田谷ベースの方が断然面白い。
番組を通して、長年かかって身につけた市井の哲学を語る、ということなのだと思う。
 
タモリビートたけし明石家さんまがお笑いビッグ3だとしたら
第4の男は所ジョージだろう。
赤塚不二夫はかつて毎晩のように編集者や気の合う芸人を集めて大宴会を開いていた。
タモリもそこで芸を磨いた。
その最後の世代が若い日の所ジョージだった、酒も飲めないのに来ていた、
というのをどこかで読んだ。
(そこにアルフィー坂崎幸之助研ナオコも加わっていた)
 
この前、『お笑い向上委員会』を見ていたら
明石家さんまがドキッとすることを言っていた。こんな感じのこと。
「この前、所ジョージに言われてハッとしたんや。
 若手と番組するのは楽しいだろうけど
 誰かが自分の芸を引き継いでくれるなんて期待しない方がいい。
 後ろを振り向いてごらんなさいよ。
 誰も付いてきてないってことにあるとき気づくんだよ、って」
 
世田谷のガレージには工具にモデルガンにプラモデルの戦車、所狭しと並んでいるけど、
何かに執着しているようには見えない。
人は皆無一物、何も所有することなく一人死んでいくのだと。
そんな哲学を笑いに変えていく、稀有な人なのだと思う。