先週買ったCD #11:2020/12/21-12/27

2020/12/21: DiskUnion 新宿中古館
Ghost 「Ghost」 \1150
Ghost 「Second Time Around」 \1550
Ghost 「Temple Stone」 \880
Ground-Zero 「Consummation」 \1100
Thomas Mapfumo 「Corruption」 \480
Super Furry Animals 「Guerrilla 20th Anniversary Deluxe Edition」 \980
Super Furry Animals 「mwng  Deluxe 2CD Edition」 \780
 
2020/12/21: www.hmv.co.jp
Henry Cow  「Vol.1: Beginnings」 \1852
Henry Cow  「Vol.2: 1974-5」 \1852
Specials 「Specials 2CD Speial Edition」 \1860
Specials 「More Specials 2CD Speial Edition」 \1860
The Special AKA 「in the studio 2CD Speial Edition」 \1860
 
2020/12/26: diskunion.net
Sam Cooke 「Live at the Cope」 \2650
 
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Ground-Zero 「Consummation」
 
朝ドラ『あまちゃん』で僕が最も驚いたのは脚本がクドカンでとか、
小泉今日子がとか、東日本大震災が、というところもさることながら
オープニングテーマを作曲したのが大友良英だったこと。
フリージャズのギタリストやターンテーブリストから始まって、
Novo TonoPhew / 山本精一)など
90年代・00年代のジャンル混交的な尖ったセッション系グループには必ずその名前があった。
朝ドラの主題歌という形でオーバーグラウンドに出るとは思ってもみなかった。
 
Gound-Zero はその大友良英が90年代に率いていたバンドで、関わっていたメンバーは
大友良英はこの頃のアンダーグラウンドな音楽の重要な結節点であった。
ジョン・ゾーンの”TZADIK”レーベルからアルバムを出したり(「NUll & Void」)
中国の京劇をサンプリングしたハイナー・ゲッベルスとアルフレッド・ハルトの作品
"Peking-Oper"をさらにサンプリングした「革命京劇ver1.28」や
ドイツの RIO(Rock In Oppositon)系グループ Cassiber の東京公演をリミックスしたりと
いかにジャンルレス、ボーダーレスを体現するかという活動だったと思う。
(ハイナー・ゲッベルスとアルフレッド・ハルトは Cassiber の創設メンバーだった)
 
「Consummation」は「Consume Red」「Conflagration」と3部作を構成する。
韓国の伝統音楽をサンプリングして暴力的なカオスを体現した音源「Consume Red」を
ジム・オルークのいた頃の Gaster Del Sol や中原昌也のノイズユニット:暴力温泉芸者
奇矯なサウンドコラージュでダンスミュージックを形作る Stock, Hausen & Walkman 
などがリミックスしたのが「Conflagration」となる。
そしてこの音源をサンプリング元として開放し、世界中から作品を募ったのが「Consummation」
ジャケットを見てみると日本だけではなく
アメリカ、オーストラリア、ドイツ、中国からも作品が寄せられている。
メンバーの植村昌弘もリミックスしている。
 
面白いもので、大友良英が選んだからというのもあるんだろうけど
どれも音の質感、方向性が似ている。
チリチリしたノイズ音を拾ってループさせたようなものとか。
電子回路や基盤をチェックするときの音、特にエラーになったもの、というか。
そういうのが大半。背景や状況の提示のみでストーリー性のある楽曲は皆無。
3枚通して聞くと、遺伝子を掛け合わせていった結果の突然変異ってこんな感じなんだろうなと。
最初の「Consume Red」から最後の「Consummation」はあまりにも遠い。
解説にて大友良英は”サンプリングウィルス・プロジェクト”と呼んでいた。
ああ、このミニマルなビットやサインカーブだけの音がウィルスの音楽なんだな。
(そしてこの3枚は解散コンサートを収録したライヴアルバム
 「融解GIG」の3曲目にて再現されることになる。
 韓国の伝統音楽をサンプリングしたカオスからサインカーブの一音へと集約)
 
余談ながら、最初の2枚は発売当時に買ったもののこの「Consummation」は手が出ず。
数年前、CD棚を整理していたら、あ、これ持ってなかったなと。
Amazon で探してみたらいつのまにか1万近い値段がついていた。
そんなとき、何をきっかけにしたのか
神保町のレンタルCD屋 ”JANIS” を一度利用してみようと思い立った。
高校時代、乏しい小遣いをほぼ全額レンタルCDに費やして
洋楽の新譜や旧譜をテープにダビングしていたというのに
青森市だとアコムや MEDIA-INN 、友&愛、スーパーマンなど)
上京後は全く利用しなくなった。CDそのものを買うようになった。
初めて足を踏み入れた”JANIS”はパラダイスでしたね。
雑居ビルの上の階の狭い空間にCDの詰まった棚が林立し、
え、こんなのもあんなのもあるの!? と。ないものがない。
このとき灰野敬二や不失者、Angerin Heavy Syrup なんかと合わせて「Consummation」を借りた。
裸のラリーズも置いてあったんだけどさすがにレンタル中だった。
 
その”JANIS”も今はない。
タモリ倶楽部の”空耳アワー”でもよく利用していたと番組でやってた。
視聴者からのハガキをもとに音源を探すのにちょうどよかったという。
中古CD屋の”JANIS2”はよく昼休みに覗きに行っていたけどこちらも小さくなってしまった。
同じく中古CD屋だった ”JANIS3” は同じ建物内で火事になって店を畳んだ覚えがある。
 
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Henry Cow 「Vol.1: Beginnings」
 
ハヤカワ・ノンフィクション文庫から出ているスティーヴン・ウィット著
『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ壊した男たち』という本を読み始めた。
90年代、mp3 が登場して音楽はネット上で交換可能なデータ、ファイルとなった。
その規格を生み出した研究者、海賊盤流通者、音楽業界の大立者、
様々な思惑と偶然が交錯する。なかなか面白い。
その序盤、興味深いことが書かれていた。
レコード会社にとってその年で一番いいアルバムとは、一番売れたアルバムなのであると。
だから1967年のベストアルバムは
ビートルズの「Sgt. Peppers」でもなくジミヘンの「Are You Experienced ?」でもなく
モンキーズの「More of the Monkees」となる。
同様に1995年のベストアルバムは Hootie & the Blowfish「Cracked Rear View」!!
ええー!? ということになる。(Hootie ファンには申し訳ないですが……)
 
歴史は勝者によってつくられるとはよく言われますが、
ロック・ミュージックの歴史はそうじゃないんだな、ということを思う。
少なくとも勝者=一番売れたものではない。
確かにその時々のメインストリームはそうなるだろうけど、
数十年という時を経て、価値のある作品・アーティストは何かという評価が
ファンや評論家、後代のアーティストの間で定まっていく。
(それが例えば中古CDの価格として現れる)
リアルタイムではごくわずかにしか聞かれなかったとしても、
評価されるべき音楽が後世に語り継がれていつしか名盤となることが多い。
その代表格をひとつ挙げると The Velvet Underground となるか。
 
ロック・ミュージックというものがそもそもが反抗の音楽であるから、
既成の価値観を覆すための音楽であるから、という性質に寄るところも大きいのだろう。
反抗にも様々あってパンクのように下手でもいい、
中指を立てて大きな声でノーと叫ぶことが大事という直接的なものもあれば、
先鋭的・前衛的なアーティストたちが国境を超えて
地下水脈のネットワークを形成するという形もある。
後者で今僕が思い描いているのが、RIO(Rock In Opposition)系のアーティストたち。
70年代、ケンブリッジ出身の、一般的にはチェンバーロック室内楽的なプログレ)の
頂点とされる Henry Cow 、そのフレッド・フリス、クリス・カトラーを中心にオーガナイズされて
フランスの Etron Fou Leloublan やベルギーの Aksak Maboul など
志を同じくするグループの連帯が生まれ、
それはやがてドイツ、アメリカ、日本にも広まっていく。
 
既存の価値観に囚われない音楽、産業としての売れるロックには連ならない音楽。
Aksak Maboul のマーク・ホランダーは Crammed Disc を立ち上げ、
ヨーロッパ、アフリカの反主流音楽を紹介していく。
フレッド・フリスはアメリカに渡り、ビル・ラズウェルら若い世代と合流。
パンクとファンクと前衛を融合した Massacre や Material の試みに結実する。
直接的には RIO のムーヴメントに含まれないだろうが、
そのビル・ラズウェルからジョン・ゾーンという流れも見逃せない。
ジョン・ソーンと共演した、影響を受けた
Ground-Zero / Bondage Fruit / Tipographica といった90年代のグループも裾野に入ってくる。
そしてこれらのグループを聞いて育った00年代、10年代の若いミュージシャンたちへ……
ロックの歴史としてひとつの大きなが流れを形作ってきた。
 
そんなわけで Henry Cow はロックの歴史における
教科書的な意味での最重要グループのひとつとなる。
もちろん音楽的に劣るのならばそんな重責は果たせなかった。
いわゆるクラシックという音楽とロックという音楽を
最も深いところで融合させたグループは彼らだと思う。
一般的には73年の1枚目「Legend」(Leg Endにひっかけてジャケットは靴下の写真)
翌年の2枚目「Unrest」が代表作とされるけど、
僕個人としては78年の最終作「Western Culture」を推したい。
緊張感溢れる室内楽的ロックを完成、それ以上先がないところまで行きついてしまった。
その名の通り西欧文明の総決算。
Western というとベルリンの壁を超えた向こうの東側の世界をも背後に感じさせる。
 
この 「Vol.1: Beginnings」は彼らの原点。
未発表音源集全10巻組のうちの第1巻で1971年から1973年にかけて録音されたもの。
クリス・カトラー、フレッド・フリス、ティム・ホジキンソンら中核メンバーは揃ったものの
リンゼイ・クーパーやダグマー・クラウゼ、ジョージ―・ボーンといった
後に活躍する女性メンバーたちが不在。
手探りながらもその冷徹な室内楽は既に完成に近づいている。
実験のための実験のような無駄なフレーズがひとつもない。
その見通すものは深くて広い。
ロックに必要なのは何よりも志の高さなのだということがよくわかる。
 
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Ghost 「Temple Stone」
 
先日、High Rise に対する興味が出てきて
何枚かアルバムを手に入れて聞いたうちのひとつが
P.S.F.レコードから2000年に出たコンピ「Tokyo Flashback」で
Marble Sheep に灰野敬二、不失者と
日本のアンダーグラウンドシーンの粋を集めた豪華な内容だった。
その中の一組が Ghost で、前から何となくその名前は知っていた。
元Galaxy 500の Demon & Naomi が共演したり、
後にメンバーに加わる栗原ミチオが BORIS のサポートメンバーだったりと。
 
再発盤が DiskUnion で安く中古で売っていたので
初期の90年代前半の3枚をまとめて購入した。
1枚目の「Ghost」と2枚目の「Second Time Around」ライヴアルバムの「Temple Stone」
これがどれも素晴らしく、中期・後期の編集盤3枚目も中古でオーダーした。
 
一言で言うなら古楽器を多用したアシッドフォークということになるか。
その人の心の中の澱みや清らかさが如実に表される、恐ろしい音楽。
自ら記したCDの解説を読むとグループを率いる馬頭將噐という方は
今時珍しく思想、先人たちの思索の体系としての思想を持って
音楽を聞き、演奏していることがわかった。
おそらくチベットインド哲学密教、中世キリスト教からニューアカデミズムまで。
グノーシス錬金術南方熊楠、19世紀末の耽美主義といった辺りも。
60年代のコミューンやヒッピー、70年代の学生闘争やアングラ演劇の系譜。
音楽的には Flower Travellin' Band やタージ・マハル旅行団、J・A・シーザー
ジャケットの撮影が米軍関係の廃墟を好むというのもいい。
 
彼らは既存の音楽の否定から始まったという。
リュートやハープといった古楽器が絡むというところで
アシッドフォークと呼ぶのがよさそうなんだけど、
音楽の形式というよりもその精神性において、と言う方がよさそう。
アコースティックな楽器を用いることで隙間の多い音楽になって、
その隙間が異次元につながって”知覚の扉”を開くというか。
過去に向かい、決して現在や未来に向かうことのない音楽。
妖精によって誘われ、古語によって記されるような。
幼少期の記憶、白昼夢を含む夢と混ざり合って現実と幻想とが
混然一体となったところから生まれる。
それは実際には幼き日に見た木漏れ日や海外の絵本の挿絵から生まれる
イメージだったりするんだろうけど。
 
代表的な曲やアーティストというと
Pink Floyd ”IF”(「Atom Heart Mother」)や
ヴァシュティ・バニヤン、ドノヴァン、シド・バレットとなって、皆英国の。
アシッドフォークの源流のひとつとして
ケルト神話と結びつくところが大きいからだと思う。
(最近のアメリカだとジョセフィン・フォスターやメグ・ベアード)
 
「Temple Stone」はライヴアルバムとなっているけど
世間一般のとはかなり立ち位置が異なって、
80年代の活動初期には新宿の地下道でゲリラ的にライヴを行っていた
という彼らの発展形として、ここでは二か所。
埼玉県和光市の神瀧山青龍寺不動院早稲田奉仕園教会ホール。
後者は現存する国内最古の木造教会だそうで、一切の電気楽器が使えず、
完全にアンプラグドな状態で演奏したと書かれてあった。
リュート、チェロ、チベタン・ホルン、ハーディー・ガーディー、唸り弓、蝉笛……
幽玄を嗜むといったレベルのものではなく、単刀直入に言うと修行。
この世界の外側から来たるべきものに備えるための音楽。
しかし辛いもの、厳しいものではなく、まさに精神世界の旅。
 
以後のアルバムはアメリカのレーベル Drag City から発売され、
国内よりも海外での評価が高かったとのこと。
むべなるかな。