北の富士のこと

ほんとおこがましいですが。
大相撲のこと、続き。
 
妻は北の富士のことが大好きで、
NHKの中継で解説を務めるときは録画してでも見ることがある。
第52代横綱にして(元祖?)角界のプレイボーイ、夜の帝王。
この解説席の姿が粋なんですよね。真っ赤なマフラーを巻いていたり。
語ることも辛らつにして簡潔、適格。大相撲への愛が滲み出ている。
そこにたまーに酒場の酔っ払いオヤジトークが混ざるのがご愛敬。
場所の間は中日スポーツで毎日前日の取り組みについてコラムを書いている。
これも辛らつ、適格でなかなか他の人は言えないこともズバッと。
今日のコラムは昨日照ノ富士に負けて4敗となった大関:朝乃山に対して
ちゃんこの味が染みていないと一刀両断。
 
この人かっこいいな、と僕もファンになった。
しかし、気になるのは他に北の富士クラスのタレントが
大相撲出身者にいない、ということ。
バラエティー番組に出る、ではなく、あくまで華のある解説者として。
酸いも甘いも噛み分けてきた経験と知識から生まれるあの余裕、あの迫力。
他にいないもんだから NHK まで twitter
【きょうの #北の富士 さん】を写真付きで毎日アップしている。
いいんだろうか。
こんなことは考えたくないが、
北の富士に何かあった場合、同じだけの存在感をもって
代わりを務められる者は他にいない。
(そもそも大相撲に興味がない人は北の富士の名前を知らない)
 
その次の知名度となるとバラエティー番組にもよく出る舞の海ということになって、
博識で物腰柔らかく、ひとつのスタイルを築いて
土日に北の富士が解説を務めるときに向こう正面の解説を担当することも多いけど、
相並ぶかと言うとさすがにそれはない。
知名度だけで言えば貴乃花ということになるが、
これまでいろいろ問題もあったので相撲協会との間に距離があり、
北の富士の後を継ぐということはないだろう。
それこそバラエティー番組の方が似合う。
 
これはかなり悩ましい問題で。
若いうちに部屋に入って相撲だけの生活を送って引退。
力のある力士は親方となって部屋を継ぐ。
相撲の外の世界に触れることが少ない。
関係者や力士仲間、タニマチ、ファンに取り囲まれながら外を眺めることになる。
相撲の決まり手については語れるが、先場所の取り組みについては語れるが、
そこに何かを重ね合わせるということが難しい。
実際、北の富士舞の海以外の解説者に対しては
NHKのアナウンサーも相撲のことしか求めない。話が広がらない。
じゃあ若いうちから相撲以外のことも
もっと学んでおけ、遊んでおけ、交わっておけ、というと
それはそれで相撲の大事なところが失われてしまいそうで。
(もちろん、稽古が終わった後の自由時間を好きに過ごしている力士は多いと思いますが)
 
コロナ禍でも開催しなかったのは昨年の夏場所だけ、
今場所も大勢の力士がコロナ禍の影響で休場となったがそれでも続けている。
もっと別なところでこの大相撲というものはあっさり崩壊してしまうんじゃないか、
今や危ういバランスでギリギリ成り立っているという印象はなかなか変わらない。
この世界のあらゆる場所、あらゆる局面で多様性が求められているけど、
多様性は諸刃の剣だなと最も感じさせるのは大相撲だな、と思う。