先週買ったCD #18:2021/02/08-2021/02/14

2020/02/08: www.hmv.co.jp
イ・ラン 「神様ごっこ(増補新装版)」 (\2024)
HMVのポイントで
 
2020/02/09: ヤフオク
 
2020/02/10: www.amazon.co.jp
Paul Simon 「Greatest Hits Shining Like A National Guitar」 \640
 
2020/02/12: tower.jp
The Yellow Moneky 「Live Loud」 \3300
ずっと真夜中でいいのに。 「ぐされ」 \3300
 
2020/02/13: diskunion.net
裸のラリーズ 「'67-'69 STUDIO et LIVE」 \24850
 
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デヴィッド・ボウイが2016年に亡くなって今年で5年になる。
巨星墜つ。
あの日のニュースはフレディー・マーキュリーやカート・コバーンに並ぶ
大きなインパクトがあったと思う。
 
その後も無数の作品がリリースされ続けている。
「Cracked Actor: Live Los Angeles, '74」
「Welcome to the Blackout (Live London '78)」といったライヴアルバム、
「Changestwobowie」といった過去の編集盤の再発、
「Metrobolist 」のような過去のアルバムのニューミックス、そして
「A New Career In A New Town」や「Loving the Alien」といった
全キャリアをいくつかの時代に分けて総括するボックスセット。
まだ聞いてはいないが、2020年のレコード・ストア・デイ限定商品として
「I'm Only Dancing (The Soul Tour 74)」「ChangesNowBowie」という
ふたつのライヴアルバムも発売された。
 
いくつかのアイテムが限定盤。
特に今回の「LIVEANDWELL.COM」が含まれる
『Brilliant Live Adventures』のシリーズが激レア。
今から20年ぐらい前か、インターネットが一般に普及し始めた頃に
ファンサイト限定で90年代のライヴ音源を販売していたのを再発。
これが数量限定で、オフィシャルだと日本ではワーナー・ダイレクトのサイトのみ。
ここでは 1,850円。既に完売。
HMV のサイトで先日数量限定入荷の案内が来て、
見てみたらHMVの会員価格でも7,000円近く。ひゃー! 
試しにヤフオクで見てみたら5,000円弱で新品が出ていて、
だったらと入札。少し競ったが5,250円で落札できた。
まあよしとしよう。
 
肝心の音ですが。
1997年のツアーより。
メンバーのラインナップを見ると当時のアルバム「Earthling」と一緒のようだ。
ベースのゲイル・アン・ドーシーは「Glastonbury 2000」でも弾いていて、
頭を剃った独特な風貌が印象的だった。もちろん演奏もしっかりしている。
歌も上手く、Queen”Under Pressure”をデヴィッド・ボウイとデュエットする場面では
フレディ・マーキュリーの役も果たしていた。
 
正直「Earthiling」は未聴で、
ドラムンベースデヴィッド・ボウイの言い方では”ジャングル”)
を取り入れた音らしい。
このライヴでもそういった音作りで、
ギター、ベース、ドラム、キーボードと必要最小限の編成ながら
かっちり固まった今風(いや、当時風?)の音で案外かっこよかった。
「Glastonbury 2000」は演奏が素晴らしいのに
デヴィッド・ボウイの声が全然出てなかったのが辛かったんだけど、
こちらはまだ出てる方かな。
 
曲目はほぼ90年代以後となるかな、全10曲は
前作「Outside」から”Hello Spaceboy” や ”I'm Deranged” ”The Motel”
”The Voyeur of Utter Destruction” ”The Hearts Filthy Lesson”
「Earthling」から”Little Wonder” ”Seven Years In Tibet” 
”I'm Afraid of Americans” ”Telling Lies” ”Battle For Britain (the letter)”と半分ずつ。
ボーナストラックとして「Black Tie White Noise」の”Pallas Athena”
懐かしの「Heroes」の”V-2 Schneider” がやはり今風の音に。
値段が値段とはいえ、思わぬ拾いものだった。
 
この『Brilliant Live Adventures』シリーズ全6作で、今回が3作目。
前の2作も気長にヤフオクを待つしかないか。
4作目以後を買い逃すことのないよう、
定期的にワーナー・ダイレクトのサイトはチェックしないといけないな……
 
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裸のラリーズ 「'67-'69 STUDIO et LIVE」
 
遂に、入手。
入手できた、というよりも入手することに決めた、というか。
いや、いつでもどこでも買えるというものではなく、
1991年の発売後すぐ完売となって、かなりのプレミアがついていた。
今回僕は24,850円で入手。これが妥当な金額なのかどうかわからず。
本来もっと高いのか、もっと安いのか。
DiskUnion で見つけたのでこれが適正な評価なのだと思う。
しかし、ヤフオクで見てみたらつい先月、
12,000円(帯なし)や15,000円(帯付き)で落札されていた。
この出品に気づかず。しまった……
一方で「’77 LIVE」は48,000円だったりで。
 
ロック界最後にして最大の伝説とでもいうか。
空前絶後の孤高の存在。
1967年、ギター・ヴォーカルの水谷孝が京都で結成。
バリケードで封鎖された京大の中で演奏を行う。
当時からアンプをフルボリュームにした爆音であったという。
1970年より東京に活動拠点を移す。
メンバーを頻繁に変えながらポツリポツリとライヴを続ける。
1997年が最後のステージとされる。
 
活動中にオフィシャルに発表されたアルバムは
1991年の「’77 LIVE」 「'67-'69 STUDIO et LIVE」 「MIZUTANI」の3枚のみ。
他、公式音源として水谷孝が認めているのは
1992年のVHSと1997年の雑誌の付録の7インチシングルのみであるという。
一方でブートレッグ音源は山のように、無数に発売されている。
今も発売され続けている。
10枚組ボックスセットはざら。
ブートレッグをもとに海外の業者が出したブートレッグであるとか。
無限に増殖していて何が何のコピーをもとにしているのか、
全体像を把握している人は皆無だろう。
 
活動初期、1970年までのメンバーには久保田真琴がいた。
1980年ごろは村八分や teardrops の山口富士夫が加わっていたこともあった。
それ以上に、オリジナルメンバーには1970年のよど号ハイジャック事件の実行犯だった
若林盛亮がいた、というのも伝説化する大きな要因となった。
 
彼らについて書いたもので今、入手しやすいのは
『ロック画報』で裸のラリーズを特集したものか。
久保田真琴阿木譲のインタビューが載っている。
拾い読むと水谷孝という人はジャン・コクトーの影響を受けた詩人にして、
日本人では最もボブ・ディランに近い資質を持つミュージシャンということになる。
 
僕が興味を持った10年ほど前、上記3枚はもちろん入手の見通しは立たず。
僕もまずはブートレッグを買った。
Phoenix という海外の業者から出ていた
「Heavier Than a Death in the Family」や「Blind Baby Has It's Mothers Eyes」
「Double Heads」「Great White Wonder」といった辺りを。
(「Heavier Than ~」は『ジャップ・ロック・サンプラー』でジュリアン・コープの選ぶ
 50枚のアルバムの第3位に選ばれている)
強烈なフィードバックノイズまみれのギター、単調なフレーズを繰り返すベースとドラム。
ただそれだけ。なのに中毒性がある。
大きな音で聞いていると時間と空間がぐにゃぐにゃになったまま灰色に凍り付いて、
遠くから水谷孝の声が聞こえてくる。
麻薬を体験した時ってこういう感じなんだろうな。
 
これはすごいなと当時、手に入るブートレッグを買い漁っていた。
それがある日、今はなき中野ブロードウェイレコミンツにて「’77 LIVE」を見つける。
帯付きで15,980円。当然、買い。
聞くともう……、これが決定版だな、これさえあればいいなと
他のブートレッグは全部売り払った。
世界標準で考えてみても稀な、ロック史上最高の名盤のひとつに僕は出会った。
 
後に、『ジャップ・ロック・サンプラー』で見かけて気になった(同じく20位)
「Yodo-Go-A-Go-Go」というブートレッグをカケハシ・レコードで購入。
もちろんよど号のこと。いいのか、このタイトル。
ジャケットには滑走路に駐機した旅客機から広がった噴煙と
「溺れる飛べない鳥は水羽が必要」と書かれている。
詳細はよくわからず。
ネット情報では1967年から1982年までの音源を集めたことになっているけど、
何を根拠にしているのか不明。
僕が聞いた数種類のブートレッグの中では
これが最も裸のラリーズの全体像を把握しやすいのかな……
これだけは手元に残しておくことにした。
 
「'67-'69 STUDIO et LIVE」を聞いてみる。
67年から69年のスタジオ録音、ライヴ録音から選ばれている。
一言で言うと、身も蓋もないけど、
60年代・70年代のアングラ映画の劇伴でこういうの聞いたような気がするなあと。
遠い記憶を呼び覚ます。
路地裏から見えた、空虚な、夜明けの近付いた空。
意味の通らない、モノローグのような男女の会話。
ひしゃげた紙風船が転がってる、というような。
これがあの伝説の裸のラリーズの音、と思って正座しながら聞くと肩透かしに会う。
70年代後半のライヴ音源を聞いたことがあればなおさら、そう。
 
冒頭の”Smokin' Cigarette Blues”は最初期のライヴ音源らしく、
厳密に比べたわけではないが、「Yodo-Go-A-Go-Go」で聞けるものと同じかもしれない。
悪夢製造工場で永遠に続く工事みたいな音。
普通にカセットテープで録音したのだろうか、くぐもって相当に音が悪い。
元が爆音過ぎるため、意図的に音量を落としている。
2曲目の”La Mal Rouge”は不穏で不安定な可能性を秘めた小品。
Can を思い起こす。
でも、あの当時の60年代末のアンダーグラウンドな音は皆、
こんな感じだったのかも、と思う。
 
3曲目の”眩暈 Otherwise My Conviction”からは
簡素なスタジオ録音が続く。
やさぐれたグループサウンズのような、神秘的なフォークソングのような。
取り立てて特筆するものはないか。
裸のラリーズ特有の、と言うほどの間合いや闇の深さはない。
最後から2番目の”The Last One”がライヴ音源で
カオスに足を踏み入れているが、踏み入れたというだけ。
「'77 LIVE」で聞けるのとは同名異曲であるらしい。
 
後の青写真ということもなく、試行錯誤というのでもなく、
ただ単に彼らにとってそういう季節だったのだと思う。
僕は裸のラリーズのリスナーとしては失格なんだろうけど、
このアルバムに対して特にありがたみは感じなかった。
24,850円の価値があったかというと、そうは思わなかった。
誰であったか、ある音楽評論家がこういうことを書いていた。
裸のラリーズの最良の聞き方は、
入手できない音源や見ることのできなかったライヴに思いを馳せ、
想像力の限りを尽くすことなのだと。
伝説とされていたアルバムのひとつに触れた今、僕も、そう思う。
 
『ロック画報』や詳しそうなネットの情報を読むと
ブートレッグにも序列があるようで
海外の Phoenix や国内の Ignuitas から出ている音源は
ブートのブートらしい。評価している人は少ない。
UNIVIVE から出ている諸作は信頼できるようで、ものによっては音質もよいと。
次はいくつかここからヤフオクで探して買ってみる。