バスに乗って

成増と吉祥寺とを結ぶルートが家の近くを走っていて、
途中石神井公園と上石神井を通る。
便利なのでよく利用する。
妻と石神井公園まで散歩して、帰りはバスに乗るとか。
 
昨日も吉祥寺まで往復した。
ずっと終点まで乗っていく人は少なく、途中のどこかしらで下りる人が多い。
だから行きも帰りもだいたい座ることができる。
1時間ぐらいかかるので本を読むのにちょうどいい。
活字に疲れるとぼんやり窓の外を眺める。
昨日は上石神井駅の近くに長い行列のできたパン屋があった。
へー、なんだろと妻に LINE で伝えた。
カレーパンと大きく書かれた幟が立ててあった。
 
先週末も荻窪の床屋の帰り、吉祥寺からバスに乗って帰った。
松本清張の『日本の黒い霧』を読んでいたのだと思う。
松本清張が戦後の、GHQの絡んだ未解決事件を追う。
のんびりしたバスの中という対比があるからこそ、のめり込んで読む。
一区切りまで読むと満ち足りた気分になって
後半目を閉じて寝てしまった。
ゴトゴト揺れるのが心地よい。
 
電車や地下鉄の中で揺れる中眠るのもよいが、
レールの上をまっすぐ進んで駅に近づいてスピードを落とす、
停車するという繰り返し。
バスは交差点を大きく曲がる、狭い商店街に入ってそろそろと進む、
遅れを取り戻すためか乗り降りのない停留所を通過する際にスピードを上げる、
生活感を感じさせる緩急があっていい。
 
家の近くまで来ると物足りなく思う。
もっと乗っていたいと思う。
このまま乗って行ったらどうなるか。
いや、成増駅までということはよく知っている。
しかしそこからまた適当に居合わせた始発のバスに乗ってどこかへ。
そんなことを考える。
そんなことを考えながら、バスを下りて家までわずかな距離を歩いていく。