先週買ったCD #35:2021/06/07-2021/06/13

2021/06/07: tower.jp
Tal Farlow 「A Recital by Tal Farlow」 (\1980)
タワレコのポイントで
 
2021/06/07: www.amazon.co.jp
渋谷毅 「渋やん」 \1824
(V.A.)  「Scenary of Japanese Jazz 2」 \1320
 
2021/06/08: www.amazon.co.jp
Rachael Yamagata 「Acoustic Happenstance」 \2390
 
2021/06/08: diskunion.net
ピンク・レディー 「ライブ・イン・武道館」 \3850
(V.A.) 「30-35 (7) いか天特集」 \1200
 
2021/06/09: diskunion.net
Kirkby / Hogwood 「Mozart Arias」 \465
Los HermanosLos Hermanos Na Fundicao Progresso 09 DE Junho De 2007」 \465
 
2021/06/10: TowerRecords 光ヶ丘店
渋谷毅 「ドリーム」 \2189
山下洋輔トリオ 「クレイ」\2189
Tonu Naissoo Trio 「R」 \2619
 
2021/06/11: DiskUnion 池袋店
スチャダラパー 「WILD FANCY ALLIANCE」 \580
ライムスター 「ウワサの真相」 \300
ライムスター 「ウワサの伴奏」 \300
Stevie Ray Vaughan and Double Trouble 「In Step」  \380
Dwight Yoakam 「Last Chance for A Thousand Years」 \300
(V.A.) 「Kubrick's Music Selections from the Films of Stanley Kubrick」 \3550
Fugazi 「Steady Diet of Nothing」 \880
 
2021/06/11: www.amazon.co.jp
San Ul lim 「13」 \2588
 
2021/06/12: diskunion.net
Joe Chindamo 「Anyone Who Had A Heart」 \680
 
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Rachael Yamagata 「Acoustic Happenstance」
 
レイチェル・ヤマガタアメリカのシンガーソングライター。
日系人の父親を持つんだけど、これまで日本での公演はそんなになかったようだ。
2009年や2012年にあったぐらい。
一方で韓国ではかなり人気があるみたいで。
オフィシャルサイトを見ていても海外ツアーのアジア方面は韓国だけだったり。
 
韓国では『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』 という
2018年のドラマの主題歌を歌っている。
”Something in the Rain”という曲で、他のアルバムには入ってないので
今度サントラを入手してみようと思う。国内盤もあった。
同じ年に発表されたミニアルバム「Porch Songs」にも
このドラマで使われた曲 ”Be Somebody's Love” が収録されている。
 
この「Porch Songs」を amazon で見てみると
出品していたのは韓国からCDやDVDを輸入している店だった。
今のところ日本国内で他ではなかなか手に入らないみたいだ。
(しかも、1000枚限定とある)
韓国独自に編んだベストアルバム2枚組というのもあった。
今回の「Acoustic Happenstance」でここから買うのは3回目。
恐らく、これらCDとしては韓国でのみ発売されている。
他の国では、もしかしたら本国アメリカでも
ダウンロードかストリーミングのみとなるのか。
 
印象的な、美しく翳りあるメロディーで
恋愛の歌だけを歌う。
爽やかな恋の始まりの歌ではなく、
ズブズブ・ドロドロのどうしようもなくなったわたしとあなたを歌う。
低いハスキー気味の声が絶妙にマッチする。
声が題材を選んでるんじゃないかと思うほどの。
というか韓国ドラマの主要テーマのひとつが
報われない純愛であるならば、こんなにぴったりの人はいない。
 
「Acoustic Happenstance」は
2004年のデビューアルバム「Happenstance」を
2016年、ギター弾き語りで録り直したもの。
代表曲 ”Be Be Your Love” や ”Worn Me Down” ”Reason Why”など。
デビュー作ではドスの利いた声は変わらずもまだどこか初々しかったのが、
干支が一回りするうちに人はここまで大人になるものなのか。
切ない思いを、焦がれた声を、絞り出すかのように歌う。
レイチェル・ヤマガタという人の本質をダイレクトに形にしたという点で
このアルバムは代表作に挙げてもいいと思う。
 
英語のブックレットには、韓国語の印刷された紙が挟まっていた。
横長のを真ん中で折って4ページ。
恐らく対訳なのだろう。
 
なお。
他、2019年の『春の夜』というドラマのサントラにも
カーラ・ブルーニらと共に曲が収録されていた。
”No Direction” ”Is It You” ”We Could Still Be Happy”
こちらは輸入盤のみ。フォトブックがつく。
日本でも放送されていたようだ。
この辺りの曲を集めたアルバムが
そのうち韓国限定で発売されるんじゃないかな。
というか出てほしい。
 
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Tonu Naissoo Trio 「R」
 
僕が社会人になって数年経った00年代の初め頃、
タワレコHMV のジャズのコーナーに行くと
よく澤野工房が特集されていた。
実験や前衛とは無縁の、アナログな古きよきジャズ。
その多くがヨーロッパの端正なピアノトリオ。
デジパックのジャケットは流麗にして上品。
レーベルとしてのイメージの統一感が秀逸で、
ワンランク上の大人のジャズを思わせた。
あの頃は買うとよくその時々のサンプラーがおまけでついてくる
というのも商売上手だった。
僕も少しずつ買い揃えた。
オーナーの澤野さんは大阪の通天閣近くで本業は靴屋と知って驚いた。
 
今から十数年前、30代前半の僕は一時期、
毎週のように大阪や和歌山に出張で行っていた。
一泊して京都でぶらぶらして帰るということもあったけど、
多くは日帰りで終電前の新幹線で東京に戻った。
時間のある時はよく、梅田マルビルのタワレコに寄った。
お膝元ということで、ここでよく澤野工房のバックカタログを買って帰った。
 
そんなある日、こっち来てるんだったらと
当時大阪に住んでいた高校の友人と会って一日過ごすことになった。
金曜に出張で来て、自腹で一泊して土曜。
大阪に来たのもまだ数回という頃だったので
ベタだけど通天閣・新世界界隈を案内してもらうことにした。
ビリケンさんを見に行って足を撫でた。
あ、そういえば、と澤野工房を探してみた。
アーケードの商店街は串揚げの店だとかでかなりコテコテな雰囲気。
通りの端の小さな建物で、半分はCDの棚、
半分は大阪のおばちゃんの履くようなごく普通のサンダルという
なんともシュールな店だった。
その日たまたま澤野さんが店にいらしていたので、お勧めのCDを聞いて買った。
ウラジミール・シャフラノフとロバート・ラカトシュだったと思う。
 
今もレーベルは続いているけど
かつてほどのリリースペースではないようだ。
澤野さんもだいぶ高齢だしなあ。
 
澤野工房には看板となるピアニストが何人かいた。
ウラジミール・シャフラノフ、ヨス・ヴァン・ビースト、アーノルド・クロス、
ジョー・チンダモ、ロバート・ラカトシュ、そしてトヌー・ナイソー。
山中千尋も最初は澤野工房から出していた。
 
トヌー・ナイソーはこの中で最もロマンティックで甘さのあるピアニストかな、
と最初は思っていた。
ジャケットも海辺で一人遊ぶ少女のきれいな写真とかで。
しかし5年ぐらい前、上野のエキュートの中の雑貨屋で澤野工房特集が組まれていて、
この時見かけた「FIRE」というアルバムがとても気になって。
真っ赤な中に「FIRE」とあって、Iの文字の中に「TONU NAISSO TRIO」とあるだけ。
澤野工房らしい流麗さはなく、いたってシンプル。
 
家に帰って聞いてみて驚いた。
チャカ・カーン ”Through The Fire”に始まって、
3曲目も The DoorsLight My Fire
Fire が曲名に入っていたのはこの2曲だけだけど
それまでにないファンキーさがあった。
ベースの音もゴリゴリしているし。とても今っぽいジャズ。
しかも最後の曲は坂本龍一の戦メリ。 
澤野工房から出たアルバムでは僕はこれが一押し。
 
その後しばらく澤野工房からは遠ざかっていて、最近また聞き直したくなった。
トヌー・ナイソーは「R」というアルバムを出していた。
封入された解説にもある通り、この R とは ROCK のこと。曲目は
U2  "With Or Without You"
Nirvana ”Come As You Are”
The Rolling Stones ”Sympathy for the Devil”
Guns'N Roses ”November Rain”
Madonna ”This Used To Be My Playground”
Oasis ”Don't Look Back In Anger” など。
様々な年代の名曲が元になっている。
 
これもいい。
ありがちな、ロックの曲をジャズっぽく演奏して
ロックファンにもジャズを売りたいというな安っぽい企画ものではない。
トヌー・ナイソーの今のフィーリングがここ、ということなのだろう。
だから音楽的なモチーフの入り口はこれらの楽曲の印象的なメロディーだけど、
そこから自由自在にトヌー・ナイソーの今表現したいイメージへと広がっていく。
それはあくまで現代的なジャズであって、ロックではない。
僕が聞いた限り、ロックの曲を演奏したジャズのアルバムとしては
これが一番聞きごたえあるかな。
 
ブラッド・メルドーRadiohead をカバーしたのもよかったけど、
それは同世代の共感に基づくものであったように思う。
トヌー・ナイソーのこのアルバムは
純粋に音楽的な共感に寄るものなんじゃないか。
 
トヌー・ナイソーは1951年生まれなのでもう結構な年となる。
出身地のエストニアでこのアルバムを録音したという。