接触事故

昨日、こんなことがあった。
家の近くのセブンイレブンまで歩いて行った。
大通りに面していて、隣に駐車場がある。
車が一台出ようとしていたところで、
僕に気づくとゆっくりバックし始めた。
そのとき、背後にもう一台動き出していた車があって
トンと接触する音が。
派手にぶつかったわけではない。しかし……
 
チラッと見るとどちらの車もガテン系で体格がよかった。
どうなるんだろう、と思うも
首を突っ込むことではないよなとそのまま立ち去った。
両方の言い分を聞いて何かを裁定するとか、
証言を求められることでもない。
一方で僕も物陰から不意に現れたわけではなく、
普通に通りを歩いていただけ。
なんだかとても微妙なことになった。
 
ぶつけた側の運転手が車に乗ってエンジンをかけたときには
恐らくぶつけられた側はまだ停止していたのだろう。
バックするときに後方を確認すべきだった。
妻にこのことを話すと
「なんでバックするのか。一時停止でよかったんじゃないか」と。
それもそうだ。
僕という歩行者の邪魔にならないようにという善意からだと思いたい。
それでそんな目に遭うとは運が悪すぎる。
僕なんかが歩いててごめんなさいと無闇に謝りたくなる。
 
セブンイレブンでの用事を終えて外に出る。
裏から出て別の道を行くか、とも思ったが、
僕自身にはやましいことはないんだしと先ほどの駐車場の前を通った。
呼び止められて
「てめえがいなかったらこの事故はなかった」
とすごまれることにならないかと、びくびくしながら……
 
二台の車はそのままにせず、
駐車場内の離れた場所にきちんと停められていた。
二人の男性がこちらに背を向けて腕を組みながら
あれこれ静かに話し合っていた。……ように見えた。
殴り合いの喧嘩にはなっていなかった。
僕に気づくこともなかった。
 
しかし、通り過ぎた後で大声が聞こえたような気がした。
何かを期待しての空耳なのかもしれない。
気になったけど、引き返してそこで首を突っ込んだら
それこそ大変な目に遭うじゃないかと。
空耳だ、何も起きなかった、
ぶつけた側が修理代を払うことで決着して
10分後にはそれぞれの仕事に戻るだろう。
 
歩道橋を上って向こう側に渡る。
だいぶ離れた地点まで来たところで
振り返ってセブンイレブンの方を見てみるが、
駐車場の中までは見えない。
 
何にしても己の小ささばかりを感じさせられる出来事であった。