先週買ったCD #37:2021/06/21-2021/06/27

2021/06/21: www.amazon.co.jp
Big Thief 「Two hands」 \1500
 
2021/06/22: www.hmv.co.jp
Humbert Humbert 「愛のひみつ 初回限定盤」 \3465
富樫雅彦 「Spiritual Nature」 \2834
Taylor Swift 「evermore (Deluxe Editon)」 \3630
(V.A.) 「Outro Tempo II」 (\2750)
Deftones 「White Pony (20 Year Anniversary Edition)」 \2640
Gillian Welch & David Rawlings 「All The Good Times」 \1485
You Me At Six 「Suckapunch: Deluxe Cd / Book Album +Live Cd (Exclusive)」 \6341
(V.A.) 「The Problem of Leisure: A Celebration of Andy Gill & Gang of Four」 \2640
「デソレーション・センター」 監督:スチュワート・スウィージー \3469
 
2021/06/22: www.hmv.co.jp
細野晴臣 「Medicine Compilation」 \3036
細野晴臣Omni Sight Seeing」 \3036
石川晶とカウント・バッファローズ 「アフリカン・ロック」 \2431
Status Quo 「12 Gold Bars」 ¥3080
Chris and Cosey 「Heartbeat」 \2410
Avalanches 「We Will Always Love you」 \2530
(Soundtracks) 「若松孝二傑作選 腹貸し女」 \2429
Coil 「Musick To Play In The Dark」 \1890
Coil 「Guide For Beginners: The Voice Of Silver / Guide For Finishers: A Hair Of Gold」 \2279
Tom McRae 「Tom McRae」 \1927
 
2021/06/22: diskunion.net
Yellow 「Vibration」 \2250
 
2021/06/23: www.amazon.co.jp
矢井田瞳 「music pool 2002」 \300
 
2021/06/24: www.amazon.co.jp
Big Thief 「U.F.O.F.」 \1265
 
2021/06/24: www.hmv.co.jp
Creedence Clearwater Revival 「Penduram」 (\2121)
HMVのポイントで
 
2021/06/25: DiskUnion 新宿インディ・オルタナティヴロック館
Jesus Lizard 「Goat」 \680
 
2021/06/25: DiskUnion 新宿ラテン・ブラジル館
Henrique cazos e marcello goncalves 「Pixinguinha de Bolso」 \990
 
2021/06/26: ヤフオク
Jane's Addiction 「A Cabinet of Curiosities」\8800
 
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(Soundtracks) 「若松孝二傑作選 腹貸し女」
 
学生時代、自主製作映画をつくるサークルにいたので
皆競うい合うようにして映画を見ていた。
90年代の半ばから後半。
池袋の文芸坐ジョン・カサヴェテスの回顧上映だとか
お茶の水アテネ・フランセでカール・テホ・ドライヤーが、とか。
『レポマン』がよかった、『エル・トポ』がすごかった。
日本映画だと鈴木清順が一番語られていたかな。
 
そんな中、今思うと若松孝二監督のことはあまり語られることがなかった。
60年代末の学生運動と結びついた前衛的なポルノ映画から
その後の日活ロマンポルノまで。
部室であれ飲み会であれ、ポルノを語るのがはばかれるというよりも、
語れるほどたくさん、体系的に見ている人がいなかったのだろう。
90年代半ばはまだバブルの残り香があって
再評価がさほど進んでいなかったのかもしれない。
例えば90年代初めに内田裕也北野武宮沢りえ
『エロティックな関係』を撮ったりもしたけど、
配役ばかりが話題になっていたような記憶がある。
 
僕も見てみたのは21世紀に入って社会人になってからだった。
『天使の恍惚』『ゆけゆけ二度目の処女』『処女ゲバゲバ』……
あの頃、60年代末から70年代前半のカウンターカルチャーが、
前衛映画が、ポルノが、昭和の生々しさを失ってオシャレなものとなった。
頻繁に回顧上映がなされるようになって、作品が DVD でも再発された。
秘められたもの、隠されたものではなくなって、
気軽に手が触れられるものになっていた。
 
正直、映画として面白いとは思わなかった。
下手な役者が突っ立ってセリフを棒読みするだけ。
申し訳程度の濡れ場があって、それも中途半端で、
あるのは若さの狂い咲きばかり。
実験的ではあるけれども、稚拙で自意識過剰なものばかりで。
でも確かに、とてつもない存在感があった。
他にはない異臭を放つ異物であり、
世の中のもの全てに対する徹底的な異議申し立てだった。
 
若松孝二自身の芸術的才能、映画的才能というよりも
周りの人間が巻き込まれずにはいられない強烈な磁場。
それが映画という形をとったのであろう。
その後の話題作、21世紀に入ってからの
上手くはなっていてもどこかぎこちない、もどかしいのは変わらず。
テーマは強烈でも、手法そのものはオーソドックスだったりするし。
 
結局若松孝二はこの磁場なんだろうなと僕は思う。
それは映画界に限らず、日本赤軍に出入りしたメンバーもそうだったし、
当時の音楽界にも共鳴した人たちが多かった。
当時の異才たちが引き寄せられていった。
 
若松孝二傑作選」というタイトルでそのサントラがシリーズで再発されている。
今となってはすごいラインナップ。
『天使の恍惚』山下洋輔トリオ
『新宿マッド』フード・ブレイン(スピード・グルー&シンキの陳信輝など)
『夜にほほよせ』はちみつぱい(後にムーンライダースへ)
『腹貸し女』(ジャックス)
他、フリージャズ系音源を集めた編集盤と、ニューロック系音源を集めた編集盤、
大和屋竺『毛の生えた拳銃』のサントラも出ている。
 
この4枚はどれも素晴らしいですね。
山下洋輔はちみつぱいも30分程度の小品。
山下洋輔は「クレイ」「キアズマ」のような怒涛の乱れ撃ちフリージャズが半分と
女性ヴォーカルを入れた抒情的な歌が半分と。
はちみつぱいはムーディーでロマンティック。夜明けに囀る小鳥のような。
若松組にもこういう一面があったのかと驚く。
(この『夜にほほよせ』は漫画『赤色エレジー』で有名な林静一が監督している)
フードブレインはスピード・グルー&シンキ直結のサイケデリックなブルースロック。
ギター、ベース、ドラム、ピアノが地獄の底まで突っ走る。
当時ここまで崖っぷちのギターは他になかったのでは。
ぐちゃぐちゃに縦横無尽に弾きまくる。
フード・ブレインのオリジナルアルバムよりもかっこいい。
60年代末日本ロックの裏名盤。
 
最後に入手したのが今回の「腹貸し女」
このご時世、迂闊に口にできないタイトル。
僕はまだ見ていない。
ジャックスは、あのジャックス。
早川義夫を擁し、はっぴいえんどと並び称される日本語ロックの先駆者。
 
あれは中学生2年生か、3年生か。
どこかの局の番組で、日替わりで当時話題のロックバンドのヴォーカルが
MCとなって1時間、自分の好きな曲をかけるという。
LA-PPISCHMAGUMI は Fishbone を。
氷室京介は意外と、Gang of FourKilling Joke を。
アンジー水戸華之介は日本語多めで、
ジャックスの”ラブ・ジェネレーション”をかけた。
早川義夫の声が聞こえてきたときのことは今でも忘れられない。
腹の底から絞り出した、熱情と劣情のないまぜになった溢れ出す想い。
真夜中のどす黒い、狂った果実
熟れて腐りかけた果汁がどろっとしたたり落ちる。
吐き出す声が、迎え撃つバックの演奏が、ねじれて、よじれて、ふらりふらりと。
こんな歌い方が許されるんだ、そんな時代があったんだ。
 
ジャックスは”マリアンヌ”や”時計をとめて” ”ラブ・ジェネレーション
といった代表曲を収めた1968年の1作目「ジャックスの世界」と
1969年の2作目「ジャックスの奇蹟」を発表して解散。
2作目を作っている時点で既に空中分解していた。
他、発掘音源を元にした編集盤など。
最近も1969年のライヴアルバムが発売された。
 
解説を読むとこの「腹貸し女」は1968年2月の録音とある。
レコードデビュー前の初期音源ということになる。
四人囃子にとっての「二十歳の原点」みたいなものか。
”マリアンヌ”といったヴォーカル入りの曲が半分、インストが半分。
歌も演奏も荒い。とにかく荒い。でもそこに魅力がある。
ジャックスはグループサウンズの時代の突然変異かと思いきや、
根っこにあるのはガレージロックなんだな、ということがよくわかる。
ガレージバンドが短期間で独自の進化を遂げたという意味では
案外、Can に近いかもしれないと思った。
アルバムで言うと「Delay 1968」
 
若松孝二は事前に構成を練って
きっちりしたサントラ、劇伴曲を作ろうとはせず、
演奏者の好きにさせたのだという。
そんなフリーフォームな演奏がフードブレインやジャックスの本質を
期せずして引き出してしまった。
やっぱこの若松孝二の磁力ゆえになんだな。
 
このサントラのシリーズ、何度か再発されている。
他の映画の音楽も聞いてみたいところなんだけど。
発掘されないかな。
今試しに見てみると、時代は下って1982年、
内田裕也主演の『水のないプール』は音楽が
太陽にほえろ!』の大野克夫が担当していた。
どんなだったのか。聞いてみたいものだ。
 
そうか、大野克夫
『十階のモスキート』や『コミック雑誌なんかいらない!』『魚からダイオキシン!!』
といった内田裕也主演映画の音楽を手掛けているんだな。
『エロティックな関係』も。
 
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Jane's Addiction 「A Cabinet of Curiosities」
 
2作目「Ritual De Lo Habitual」が1990年の作品。
僕が本格的に洋楽を聞き始めた頃、最も旬な作品のひとつだった。
まだオルタナティヴ・ロックという言葉がさほど一般的ではなく、
恐る恐るミクスチャーとかラップ・メタルとか言われ始めていて、
前年の Red Hot Chili Peppers「Mother's Milk」や
Faith No More「The Real Thing」と共に
アメリカで新しい一派が生まれつつあると雑誌では語られていた。
 
僕は青森駅前のアーケードの商店街、
さくら野百貨店がまだカネ長武田だったときに脇の雑居ビルの上の階にあった
遊&愛でレンタルしてテープにダビングした。
今でもよく覚えている。
あのときここで一緒に借りたのは、
The Sugarcubes 「Life's Too Good」(Bjork が在籍していた)
Psychedelic Furs 「All of This and Nothing」
手始めに The Beatles / The Clash / Led Zeppelin を聞いて
よし次は、という頃。
未知の扉があちこちにあって
洋楽を聞くということが楽しくて楽しくてしょうがない。
この4枚じゃなくて寄りメタル系、寄りダンス系の4枚だったら
今頃違う音楽を聞いてたんじゃないかと思う。
それぐらい影響の強い4枚。
 
どれもテープが伸びるぐらい聞いたなあ。
その中でも一番聞いたのが、Jane's Addiction だった。
後にレッチリにも加入するデイヴ・ナヴァロのダイナミックなメタルギター。
首謀者ペリー・ファレルの浮世離れした甲高いヴォーカル。
ベースもドラムもファンキー。
まだ若いバンドのはずなのに、かなりの手練れ感があった。
ちゃんとした力量がないとリスナーを鮮やかに欺けないというか。
前半の ”Stop!” や”Been Caught Steeling”は
カラフルでゴムマリのようによく弾けて、暴走する移動遊園地みたいな。
後半の ”Three days” や ”Classic Girl” はメロウで
煙たい狂気がどこかに見え隠れして。
僕は今でも、オルタナティヴ・ロックの最高峰はこのアルバムだと思う。
この頃ペリー・ファレルが始めて今も続くオルタナティヴ・ロックのフェス、
ロラパルーザが開拓して押し広げたものも大きい。
 
「Ritual De Lo Habitual」を発表して最初のロラパルーザの後、解散。
その後何度か再結成してるんだけど、
2002年にはフジロックで来日している。
日曜の Green Stage で、Jane’s Addiction のあとに
レッチリというファン感涙の流れ。もちろんギュウギュウ。
前から3列目ぐらいのところで揉まれながらレッチリを見ていたら
履いていたジーパンが破けてしまい、
宿泊先の苗場プリンスで鋏を借りて半ズボンにして東京に帰った。
Jane’s Addiction もマジカルな瞬間が多かったなあ。
デイヴ・ナヴァロは当然のごとく刺青の入った半裸でギターを。
ペリー・ファレルは魔術師のような、道化師のような、詐欺師のような。
明日になればガラクタに変わってるような
キラキラした幸福の雫をステージからばらまいていた。
 
そんな「Ritual De Lo Habitual」をこれでもう何百回目になるのか
先日聞き返して、そういえばこれってリマスターが出てないなあと。
調べるうちに今回購入したボックスセット
「A Cabinet of Curiosities」のことを思い出す。
hmv.co.jp のウィッシュリストに登録しといて
そのうち買うかと思っていたらいつのまにか10年以上経過していた。
ひゃー!! びっくりした。
もちろん今となっては入手できず、amazon で見たら3万ぐらいの値段に。
(ボーナスディスクのついたのだと6万越え)
ヤフオクで定価近くで出品されているのを見つけて、しれっと即決。
 
「A Cabinet of Curiosities」とは不思議の詰まった玉手箱といった意味か。
パッケージが西洋の箪笥のよう。
1枚目がデモ、3枚目が1990年のライヴ、
2枚目がその他未発表曲、デモ、ライヴという構成。
プラスして、4枚目がミュージックビデオなどを収録した DVD となる。
1991年の最初の解散までに発表したアルバムが3枚だけなので
「Ritual De Lo Habitual」以外の代表曲も網羅されている。
”Jane Says” ”I Woud For You” ”Mountain Song” ”Had A Dad”など。
 
これら3枚に収録された曲の多くは以前発売された編集盤、
「Live And Rare」や「Kettle Whistle」にて既出となる。
「Live And Rare」の”L.A. Medley: L.A. Woman ~ Nausea ~ Lexicon Devil” や
The Doors / X / The Germs の曲をカバーしている)
”Had A Dad ””I Would For You ” ”Jane Says”の Radio Tokyo でのデモ音源、 
「Kettle Whistle」の ”Up The Beach” や ”Ain't No Right” などの
1990年、ハリウッド・パラディアムでのライブ音源など。
結構重なるので「Live And Rare」と「Kettle Whistle」を持っていれば
まあいいかな。
でも、3枚目の1990年ハリウッド・パラディアムが通しで聞けるとか、
2枚目の ICE-T / Ernie C との共演 ”Don't Call Me Nigger, Whitey”
Lez Zeppelin のカバー”Whole Lotta Love”
といった珍しい曲も聞くことができる。
未発表曲なのでそれなりの出来でしかないですが……
 
もうほんと、コアなファン向け。
とはいえ、”Three Days”のライヴ音源は鬼気迫るなあとか
”Jane Says” は隠れた名曲だよなあとか
懐かしい気持ちに浸ることができた。
あとは「Ritual De Lo Habitual」のリマスター盤が出るのを待つだけ。