先週買ったCD #46:2021/08/23-2021/08/29

2021/08/24: BOOKOFF 飯田橋駅東口店
尾崎豊 「ARTERY & VEIN: THE VERY BEST OF YUTAKA OZAKI」 \1180
 
2021/08/24: ヤフオク
Keb' Mo' 「Live & Mo'」 \1980
 
2021/08/24: www.amazon.co.jp
(Soundtracks) 「ピアノ・ブルース」 \1144
 
2021/08/24: www.hmv.co.jp
上松秀実 「Dear My Friend / トラウマ」 \165
上松秀実 「時代」 \165
上松秀実 「Dear Lady」 \220
 
2021/08/25: www.hmv.co.jp
Wilhelm Furtwangler 「Beethoven Symphony No.1 & No.4」 \297
Wilhelm Furtwangler 「Beethoven Symphony No.5 & Schubert Symphony No.8」 \495
Wilhelm Furtwangler 「Beethoven Symphony No.6 "Pastoral"」 \396
 
2021/08/26: tower.jp
Bon Jovi 「Slippery When Wet」 (\1885)
タワレコのポイントで
 
2021/08/26: www.hmv.co.jp
久保田利伸 「Such A Fanky Thang!」 \330
 
2021/08/28: www.hmv.co.jp
Albert King 「Born Under A Bad Sign」 (\1518)
HMVのポイントで
 
2021/08/28: www.amazon.co.jp
Mountain 「Twin Peaks」 \1224
 
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(Soundtracks) 「ピアノ・ブルース
 
大学の映画サークルで映画をつくっていたとき、
ある先輩にアメリカの現役の監督で誰を見るのがいいか聞いたことがあった。
その先輩はぴあの主催するフィルムフェスティバルで入選している。
90年代後半のこと。
渋谷の単館上映系のシアターでは
人によってそれはガス・ヴァン・サントコーエン兄弟だった。
この2人の新作は必ず見に行く。とにかく撮り方がうまい。
え? と僕は意外に思った。
70年代から80年代にかけてが全盛期だけど
今も撮り続けていて時々新作が話題になる。
『誘惑のアフロディーテ』とか『マディソン郡の橋』とか。
そんなイメージを抱いていた。
 
認識が甘かったのは僕の方で、21世紀に入って
ウディ・アレンは『マッチポイント』や『ミッドナイト・イン・パリ』で
何度目かのピークを迎えることになる。
というか、沈んでる時期があったというのが間違いで
2人とも一貫して佳作、名作を撮り続けていた。
今や2人ともアメリカを代表する名監督と呼ぶことに誰も抵抗はないだろう。
どちらも人間や人生というものに対して冷徹にして優しい、
確固たる視点や哲学がある。
片やそれを喜劇にして、片や悲劇にしてしまうけど。
 
そういえば2人とも自らの作品で主演を務めることが多い。
作曲も担当することがある。
ウディ・アレンも自ら選曲するんじゃなかったかな。
ウディ・アレンの映画で使われたジャズの曲を集めた3枚組というのを持っている。
アニー・ホール』がアカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞した時、
その曜日はいつもニューヨークの決まった場所で吹く日だからと
授賞式を欠席したのは有名な話。
 
一方でクリント・イーストウッドが演奏するのはピアノ。
ジャズ・ミュージシャンの仲間たちをゲストに呼んで
カーネギー・ホールで演奏したライヴアルバムがあって、それがなかなかいい。
ジョシュア・レッドマンロイ・ハーグローヴ、クリスチャン マクブライドなど。
音楽映画もいくつか監督してるんですよね。
チャーリー・パーカーの生涯を描いた『バード』がその代表作か。
 
ピアノ・ブルース』もそのひとつで、
ブルースの誕生から100周年とされる2003年、
マーティン・スコセッシ監督がキュレーターとなって
ブルース・ムービー・プロジェクト』と称して7本の映画が製作された。
その中の1本となって日本でも劇場公開された。
僕が見たのはヴィム・ヴェンダーズ監督の『ソウル・オブ・マン』だけか。
サントラの国内盤も買っている。
ピアノ・ブルース』を見なかったのは
単純にタイミングが合わなかったからだと思う。
 
7本のうち4本のサントラが国内発売され、
ミュージシャンにスポットライトを当てたオムニバスも6枚。
バランスよくなかなか興味深いラインナップだと思う。
女性シンガーに白人のギタリスト、現代的なブルースを歌う若手。
マディ・ウォーターズやB.B.キング、エタ・ジェイムズではない。
少しずつ集めるうちにこの中の一枚へ。
もう少し聞いてみようとカタログを見ていたら
 
残念ながら映画はまだ見ていない。
帯には『ピアノ・ブルースの変遷を辿る』とあって
プロフェッサー・ロングヘア、レイ・チャールズ
その名の通り、ピアノを主体としたブルースの入り口。
聞いてみるとその終着駅でもあるように思う。
雨だれのような素朴な音で奏でられるピアノ、単純なコード進行。
そんな1930年代末の録音から始まって40年代、50年代、60年代……
ブギウギから、モダン・ブルースへ。
最後の4曲は2002年、クリント・イーストウッドがプロデュースした
ギターで奏でるブルースとは違ってピアノのブルースはどこか上品だ。
それってクリント・イーストウッドの品性に寄るものかもしれないけど。
 
四方田犬彦にある人が、
中上健次がジャズを演奏するならどの楽器だったと思うか、
と聞いたことがあった。
サックスじゃないかとその人は考えた。
しかし四方田犬彦は答えて言った。
中上健次はピアノだ。
88個の鍵盤しかない、どんなに頑張っても
それ以上高い音もそれ以下低い音も出せない、
という制約の中でもがきながら、格闘しながら、鍵盤を叩き続けるだろう。
その話を思い出した。
このアルバムで聞くことのできるピアノは流麗なようでいて、
哀しみに満ちている。
本物のジャズ・ピアノは、ブルース・ピアノは戦い続けるものなのだ。
その姿が、クリント・イーストウッドに重なる。
 
なお、アメリカを代表するジャズ・ジャーナリスト、
ナット・ヘントフが解説を書いていた。
アメリカのジャズを文章として味わうなら断然、この人。
 
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Wilhelm Furtwangler 「Beethoven Symphony No.6 "Pastoral"」
 
普段ロックやジャズを聞いている人からし
クラシックがとっつきにくいのは
CDショップで作曲者別に並んでいたり、指揮者・演奏者別に並んでいたりで、
どっちやねん、という。なんかこう探しにくい。
よって多くの初心者は『○○なモーツァルト』や『○○に合うクラシック』
みたいな軽めのものに手を出してそこから先、本格的に入り込めない。たぶん。
ベートーヴェンモーツァルトの名前は知っていても、
大きな店だと録音がたくさんありすぎてどれを聞いていいかがわからない。
例えばベートーヴェン交響曲第9番『合唱付き』もいろんな時代、
いろんな指揮者、オーケストラのものがありすぎて……
何をとっかかりにしていいのか、きっかけがないと二の足を踏む。
 
世界的に有名な指揮者は今もカラヤンなのだろうか。
僕は正直、指揮者による演奏の違いはほとんどわからず。
カラヤンはトータルなバランス感覚がよく安定感がある、
実験的な尖った試みはしない、重厚感があって格調が高い、というイメージがある。
 
もう一人、この人のは分かるというのがフルトヴェングラー
時代的には戦中、戦後か。
あの音の震えるような深みは西欧の歴史を背負っているから、というと言いすぎか。
感覚的なものにすぎないけど。
最初に聞いたのはワーグナーの『ニーベルングの指輪』
その第一夜『ワルキューレ』CD4枚組の4枚目、冒頭の『ワルキューレの騎行
地獄の黙示録』の序盤、
ベトナムのジャングルにヘリコプターの群れが現れて
ナパーム弾を落としていって火の手が上がる、あの音楽ですよ。
これがすごい。
ここまで聖なるものと禍々しいものとが一体となって
とてつもない高みへと至った音楽はロックやジャズも合わせて
他に聞いたことがない。
聞いてると高揚感で身体が満たされてゾクゾクする。
 
これは神保町の DiskUnion が靖国通りの向かい側にあった時に
たまたま見つけて買ったもので、
2・3日してから他のも聞いてみようと
中古で並んでいたベートーヴェン交響曲のうち、
第3番<英雄>と第7番の2枚を買ってみた。
もう10年ぐらい前になるのかな。
どれも『EMI CLASSICS BEST 100』のシリーズ。
最近また聞き直して、HMV のサイトで同じシリーズの
第1番と第4番、第6番<田園>、
第5番<運命>とシューベルト交響曲<未完成>
この3枚を中古で買った。どれも1枚400円ぐらいだったか。
 
いわゆる第9ってこのシリーズにないのか、と探してみると
あるにはあってこのアルバムだけ、
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団となっている。
ジャケットの雰囲気が違う。
こちらは DiskUnion のサイトで買った。
ジャケットから察するに、どれも元はEMIのクラシック部門である
『ANGEL RECORDS』というところで原盤がつくられたようだ。
 
『運命』とか『第9』ってドラマで使われたりでテレビでもよく聞くけど、
恥ずかしながらCDを一枚通して聞いたのはこれが初めて。
こんなだったのか。あの有名なフレーズはほんの一部分なんだな。
 
第6番の<田園>も名前はよく聞くのに、どういうのかよくわからず……
あ、この曲だったのか。
雄大さ、格調の高さは他の交響曲と変わらず。
しかしこのゆったりと流れるような美しさ、たおやかさは何だろう。
一言で言うならば生の喜びだ。
フルトヴェングラーはこのような純粋無垢な優しさも表現できたのか。
天上界に広がる色鮮やかな田園風景が思い浮かぶ。
あの『ワルキューレの騎行』と同一人物とは到底思えず。
 
ちなみに、Angel Recordsが気になって Wikipedia を見てみたら
今は Blue Note レーベルのグループの傘下にあった。
CD業界の再編により様々な紆余曲折を経ているようだ。
 
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Bon Jovi 「Slippery When Wet」
 
僕が中学生だった1980年代、周りで洋楽と言えば Bon Jovi だった。
U2 でも Van Halen でもなかった。
1988年の4作目「New Jersey」が世間を席捲する様と言えば
とてつもない勢いだった。一家に一枚ぐらいのペースで売れたんじゃないか。
それは言いすぎにしても、今見てみたら日本の年間アルバムチャート1位とあった。
妹の読んでいた『あさりちゃん』にも
このアルバムをCDラジカセに入れて聞く場面があった。
シングルの ”Bad Medicine” はラジカセのCMにも使われて、メンバーも登場して、
テレビから流れない日はなかった。
僕も友達から借りて、テープにダビングして聞いた。
 
そもそも、ファーストアルバムからのシングル”Runaway”(夜明けのランナウェイ)が
大映ドラマの『乳兄弟』に使われていたんですよね。
以前から日本では人気が高かった。
よく来日公演を行っていたし、あのわかりやすいメロディーは日本人好みだろうと
正直な話、僕は日本でだけ人気があると思い込んでいた。
2018年に『ロックの殿堂入り』を果たしていると知って驚く。
無知ですみません……
日本とかアメリカとかじゃなく、全世界的に今も人気なんですよね。
 
随分と聞くことがなかったけど、聞き直してみたくなったのは
東京オリンピックがきっかけ。
BMX やスポーツクライミングだったかな、試合会場の BGM に
彼らの代表曲 ”Livin' On A Prayer” が流れていたことが何回かあった。
アメリカの選手が出る競技だったからかな。
ああ、いいなあとたちまち中2の気分に引き戻されてしまった。
 
収録されていた3作目「Slippery When Wet」は1986年で小学生だったので
ギリギリ、聞いてなかった。
この機会に買ってみる。
”You Give Love A Bad Name” も懐かしいなあ。
あのメンバー全員でアカペラで叫ぶサビ。
ああいうかっこよさって80年代が最後だった。
でもやっぱ、”Livin' On A Prayer” だな。
これぞパワーバラード。
この2曲目、3曲目ばかりリピートしてしまう。
世界とったるぜ!! とやたらギラギラしてる。それがいい。
 
僕が中学2年生の時に借りた「New Jersey」のCDは
ボーナストラックに ”Livin' On A Prayer” のライヴバージョンが収録されていた。
今もその形で発売されてるかと思いきや、そうじゃないんですね。
それがあればお得だなあ、1枚買うだけで済むのになあ、なんて思ってしまった。
今の「New Jersey」には「New Jersey」の曲のライヴバージョンが、
「Slippery When Wet」には「Slippery When Wet」の曲のライヴバージョンとなっている。
 
あと書くべきはあのジャケットか。
褐色の肌の女性が黄色いタンクトップを着て、
そこにタイトルの「Slippery When Wet」と書かれている。
その肌が濡れている。
写っているのはその口元から胸元まで。
これぞアメリカ。これぞ80年代ロック。
いろんな下世話な想像をかきたてる。
いいジャケットだと思う。
濡れたら滑りやすい。言ってることが深いような浅いような。
しかし、なんで日本でのタイトルは収録曲から取られた
「Wild In The Streets」という当たり障りないものになってしまったんだろ。