大宅壮一文庫へ

よく晴れた予定のない土曜。
昼前に妻が、仕事の調べ物があって大宅壮一文庫に行くという。
ジャーナリスト大矢壮一が設立した日本唯一の雑誌の図書館。
前から話は聞いていたが、行く機会がなかった。
 
みみたに昼のカリカリをあげて、車に乗って出かける。
地図を見たら京王線八幡前駅の近くにあった。
つまり、ほぼ環八沿い。
世田谷区と聞いてたけど、なんだ、こんなとこにあったのか。
渋滞に巻き込まれず、案外早く八幡前駅近くまで行くことができた。
荻窪に住んでた頃はよく夜、環八を散歩しながら考え事をしていたけど、
駅前までは来たことがなかった。
 
コインパーキングに停め、昼を食べるかと駅前の商店街を歩く。
食べログを見るとこの辺りはラーメン屋が多いですね。
しかも軒並み点数が高い。
そのうちのひとつに入ることができた。「孤高」という店。
あの佐野実の弟子なのだという。
確かに麺もスープも完成度の高い、とてもおいしいラーメンだった。
 
赤堤通りを南へ歩く。
大宅壮一文庫に着くと駐車場があった。
なんだ、あったのかと引き返してコインパーキングから車を出して
ここの駐車場に停め直した。
入り口では蓑虫が巣をつくってぶら下がっていた。
 
利用料は500円。
1階にデスクトップPCが並んでいてキーワード検索する。
その結果としてこの雑誌を閲覧したいとなったら
専用の用紙に手書きして2階のカウンターに持っていく。
窓口の人が持ってきてくれるのを閲覧席で待つ。
書棚を自由に歩き回れる、というのではない。
この紙に書く、カウンターに持っていくというのがかなりアナログ。
でもまあ、いいか。それもひとつの味がある。
 
妻の調べ物をしている間ただ待ってるのもなんだなと
そうだ、昔の rockin'on を見てみようと思い立つ。
1990年代初め、僕が洋楽に興味を持った
マンチェスターグランジ一色だった頃の。
その号のディスクレビューに載っていた
ある日本のバンドのあるアルバムに興味を持ったものの名前が思い出せず、
というのでずっとモヤモヤしていたのがあった。
 
あれはいつだったか……
中学3年生の時点でもう読んでただろうか……
試しに1990年1月号から12月号と用紙に書いて窓口に持っていく。
500円で15冊まで持ってきてくれる。
その後は10冊追加するごとに100円。
 
10分か20分か待つ。結構時間がかかる。
カウンターで呼ばれて受け取りに行く。
わくわくしながら1冊ずつディスクレビューを開く。
この号ではない、これでもない、と繰り返すうちに12冊全部チェックし終えた。
うーむ、この年ではなかったか。
もっと前かと1989年でさらに12冊、追加料金を払って持ってきてもらう。
 
……しかし、目当てにしていたそのアルバムは見つからず。
そもそもこれら、僕は読んでなかったんじゃないか。
記憶を辿っていくと、そうだ、僕が読み始めたのは1991年からだ……
Led Zeppelin が表紙だった。
1989年、1990年共に彼らが表紙の号はなかった。
しまった。
15時過ぎ。妻の調べ物が終わって日も傾き始めていたのでこの日は帰ることにした。
また来た時の楽しみにしよう。
 
チェックしている間、昔のディスクレビューを拾い読む。
My Bloody Valentine『Isn't Anything』がよくわからん新人って感じで評価低かった。
その後、1992年の『Loveless』でも
冒頭の合評ではなく後の方の扱いだったことを思い出す。
それが年を経るごとに評価が高まっていった。
そういう最初のレビュー、おそらくレコード会社からサンプルを渡されて
何回か聞いただけのレビューというのが面白い。
The Cure『Mix Up』とか Roxy Music『Heart Still Beating』とか。
10000 Maniacs『Blind Man's Zoo』とか。
 
高校時代、青森市の古本屋でたまたま見かけて買った
Mary My Hope というバンド、当時は聞いててよくわからなかったけど
このときのレビューでは案外高評価だった。
あと、当時の増井修編集長が
The Stone Roses の初期のシングル「Made of Stone」に大興奮して、
このバンドは世界を変えると息巻いていた。実際、そうなった。
なんかいいものを見たなあ、という気になった。
 
入り口では全国各地のフリーペーパーを置いていて、ご自由にお取りくださいと。
長崎県の観光連盟の出した壱岐対馬のガイドブック、
『ふるさと鉄道の旅』という地方民鉄旅ガイドの2021年度版、それと
『O+』というアート、デザイン系のがチームラボ、熊切和嘉、いのえひでのり
と名前が載っていたとりあえずもらってみた。