先週買ったCD #54:2021/10/18-2021/10/24

2021/10/18: diskunion.net
Prince 「Hit And Run Pahse 2」 \1300
The The 「45 RPM」 \1100
Soundgarden 「Telephantasm」 \480
Sly & Robbie 「Dub Sessions 1978-1985」 \1000
The Isley Brothers 「The Isleys Live」 \580
Ivete & Criolo 「Viva Tim Maia!」 \1200
 
2021/10/18: www.amazon.co.jp
(V.A.) 「Discover URC」 \350
(V.A. Starbucks) 「Trojan Reggae」 \660
 
2021/10/19: diskunion.net
ISIS 「The Mosquito Cotrol EP + The Red Sea」 \1100
ISIS 「Live VII / 02.25.10」 \1100
Orchstral Manoeuvers in the Dark 「Organisation」 \680
 
2021/10/19: tower.jp
Violent Femmes 「Why Do Birds Sing? Deluxe Expanded Editon」 \3041
 
2021/10/19: www.amazon.co.jp
Dan Penn 「Do Right Man」 \780
(V.A. Starbucks) 「sundown music for unwinding」 \519
(V.A. Starbucks) 「Sleigh Ride」 \180
 
2021/10/20: www.amazon.co.jp
Dan Penn and Spooner Oldham 「Moments From This Theatre: Dan Penn and Spoomer Oldham Live」 \454
 
2021/10/21: www.hmv.co.jp
Brian EnoRams - Original Soundtrack」 \2530
Mudhoney 「Real Low Vibe」 \5280
Black Sabbath 「Paranoid 50周年記念デラックス・エディション」 \11132
The Black Crowes 「Shake Your Money Maker 3CD Edition」 \8602
 
2021/10/21: www.hmv.co.jp
スピッツ 「花鳥風月+」 (\3300)
(Soundtracks) 「黒いオルフェ」 (\1100)
Guru Guru 「UFO」 \2014
HMVのポイントで
 
2021/10/21: www.hmv.co.jp
Sly Mongoose 「Tip of the Tongue State」 \110
The Hello Works 「Payday」 \110
くるり琥珀色の街、上海蟹の朝」 \880
 
2021/10/21: www.amazon.co.jp
The The 「Hanky Panky」 \500
Ivete Sangalo 「Se eu nao te amasse tanto assim」 \1527
(V.A. Starbucks) 「Summertime Groove」 \337
 
2021/10/22: diskunion.nt
Enya 「The Celts」 \5250
 
2021/10/22: tower.jp
Tal FarlowTal Farlow Quartet」 (\1980)
タワレコのポイントで
 
2021/10/24: diskunion.net
Merzbow 「1930」 \1100
Merzbow / Gore Beyond Necropsy 「Rectal Anarchy」 \1500
 
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Violent Femmes 「Why Do Birds Sing? Deluxe Expanded Editon」
 
Violent Femmes はウィスコンシン州ミルウォーキーで80年代初めに結成されたバンドで、
1991年の5作目「Why Do Birds Sing?」は
1作目「Violent Femmes」(1983)や2作目「Hallowed Ground」(1984)と並ぶ
彼らの代表作であると思う。
ヴォーカルとアコースティックギター、アコースティックベース、
スネアともう一個ぐらいの簡素なスタンドアップドラムという3人編成。
音楽的にはアコースティックな楽器でパンクをやったらカントリーに間違われた、という感じか。
 
いい曲を書くんだけど、シニカルな印象がある。
アメリカの片田舎で生まれ育ち、ひっそりと死んでいく男たちのシニカルさとでもいうか。
朝起きたら近くの安食堂に行って、いつもの席で同い年のウエイトレスのケツを触りながら
お決まりのジョークを言って薄いコーヒーをお代わりして、
職場はめったに客の来ることのないハイウェイ脇のガソリンスタンドで
壊れかけたラジオで地元の音楽番組かスポーツ中継を流しっぱなしにしていて、
仕事が終わったら酒場に行ってウダウダと一晩中飲んでいる。
そんな男たちが互いに言い合っている皮肉なジョーク。
そういうのを、ヴォーカルのゴードン・ガノの声が体現しているように思う。
哀切に満ちた情けない声。
(ちなみに、父親はキリスト教のどこかの宗派の説教師だったとどこかで読んだ記憶がある)
 
1曲目”American Music”では
『君はアメリカン・ミュージックが好きかい? 僕は大好きさ』と軽快に歌い始め、
6曲目の”Used To Be”では
『私は幸福な人間だった、なんとも愛すべき人間だった、何もかもがぶち壊しになるまでは
彼女は幸福な人間だった、なんとも愛すべき人間だった、何もかもがぶち壊しになるまでは
私たちは幸福な人間だった、なんとも愛すべき人間だった、何もかもがぶち壊しになるまでは』
と繰り返す。
 
白眉は4曲目、Culture Club ”Do You Really Want To Hurt Me”(君は完璧さ)のカバー。
原曲がロンドンのおしゃれなプールバーで 片方の眉をくいっと挙げながら
『君は僕を苦しめたいのかい?』とささやくようなものだとしたら
こちらは酒に酔った勢いでウェイトレスに手を出して、
朝ふと目が覚めたら横にそのウェイトレスが生活感丸出しでまだ眠っているときに
『てめえいったい何しやがったんだ?』と自分に対して呟くような。
いや、歌詞を追加して事細かく情景を説明しているわけではない。
でも、彼の声を聞くとおんぼろのトレーラーハウスにくしゃくしゃの毛布であるとか、
いつか見たアメリカ映画のどんずまりの情景がいくらでも思い浮かぶ。
名もなき一人の人間の夢や希望や諦めや絶望、
それゆえの優しさが一曲の中に込められている。
原曲を超えたカバーだと思う。
 
30周年記念ということなのだろう、今月、デラックス・エディションで再発された。
1枚目はリマスター音源に未発表曲を追加。
2枚目は1991年のライヴ。
初期の代表曲”Blister in the Sun” や ”Country Death Song”
”Add It Up” ”Kiss Off” もやっている。
 
その後は失速したように思う。
1990年代後半に解散、2000年代後半に再結成の後、今も活動を続けている。
アイスランドで行われたのとか、ライヴアーカイヴのシリーズがなかなかよい。
彼らの根っこにもブルースがあるのだな、とわかる。
 
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くるり琥珀色の街、上海蟹の朝」
 
くるりが1998年に”東京”でデビューしたとき、なんて名曲だろうと思った。
何回も何回も繰り返し聞いた。
遠距離恋愛の若い二人。
日常の何気ない一こまを切り取った歌詞に、
もどかしさあふれる轟音のギターがその世界観をガッと広げる。
こういう等身大の表現を続けていくのだろうか、
四畳半フォークの現代版として話題になっていつか消えていくのだろうか、と思っていた。
その後の音楽的変遷は意外だった。
くるりの2人の腹の中には音楽に飢えた虫が住み着いていて
なんでもかんでも手当たり次第に食べ続け、空腹感が満たされることはないが、
宿主の2人はうまく飼いならしている。そんな印象がある。
 
その道のりは決して順調ではなく、試行錯誤の繰り返しだった。
大学の音楽サークル仲間で結成、メジャーデビューを果たすも、
バンドをより成長させるために苦渋の決断でドラムをクビに。
サークルの先輩がギターで加わったのちに脱退。
アメリカ人のドラマーが加入した時期もある。
しばらくヴォーカル・ギターの岸田繁、ベースの佐藤征史の2人組だったが、
あるときいきなりメンバーが3人増えて、すぐ2人いなくなって、
トランペットの女の子だけが居付いた。
 
ウィーンのオーケストラと共演したり、ユーミンとコラボしたシングルを雑誌形式で出したり。
ジョゼと虎と魚たち』『奇跡』『『まほろ駅前多田便利軒』のサントラで
岸田繁のピュアな部分を吐露、NHKみんなのうたには”かんがえがあるカンガルー”を提供。
東日本の震災の年には細野晴臣と東北ツアー。
出身地でフェス『京都音楽博覧会』を定期的に開催。
かと思うと鉄道マニアの岸田繁は時々、タモリ倶楽部鉄道研究会に出演している。
いかにも不器用そうな、ひ弱そうな外見なのに
その音楽性と行動力はあまりにもたくましかった。
 
どの時期も秀作を残してきたけど、やっぱ
3作目「TEAM ROCK」(2001)と4作目「The World Is Mine」(2002)かな。
(ちなみに、後者のタイトルは新井英樹の同名の漫画から取ったと
 Rockin'on JAPAN のインタビューで読んだ)
朴訥で不器用そうな3ピースのギターバンドがエレクトロニカに色気を出した、
という印象を当時は受けた。
今思うとこれが彼らにとっての大きな分岐点になったのだろう。
前者には ”ワンダーフォーゲル”と矢野顕子もカバーした”ばらの花” に ”リバー”
後者には”WORLD'S END SUPERNOVA”や”男の子と女の子”
という必殺の名曲シングルが収録されている。
 
正直僕はここ数年の作品からは遠ざかっていた。
でも、2016年のミニアルバム 「琥珀色の街、上海蟹の朝」 の初回盤にて
「TEAM ROCK」と「The World Is Mine」の再現ライヴを
抜粋したライヴアルバム「Now And Then Vol.2」が付属すると聞いて、聞いてみたくなった。
「TEAM ROCK」から15年後。
”トレイン・ロック・フェスティバル”のように肉体性を増してインプロまみれになった曲もあれば
”TEAM ROCK”はラップ調に生まれ変わった曲もあった。
でも多くは肩の力の抜けた、今のくるりがこの曲を演奏するならばこうしたい、という演奏だった。
回顧主義にもならず、ガラッと変えてしまうのではなく。
 
本来の 「琥珀色の街、上海蟹の朝」 は岸田繁のラップがメインで、
これはちょっと不器用な面が裏目に出てしまったような……
でも他の曲が素晴らしい。
前述の、NHKみんなのうたの”かんがえがあるカンガルー”や
この頃手掛けたFM番組のテーマ曲やキャンペーンソングなど。
最後の曲の”Bluebird II(ふたりのゆくえ)” は土岐麻子に提供した曲のセルフカバーのようだ。
岸田繁の弾き語りで、沁みる。
20年以上最前線で働き続けてきた人ならではの深みが、ここに凝縮されているように思った。
 
「vol.2」ということは「vol.1」があるのかと調べてみたら
高橋留美子原作のアニメ『境界のRINNE』のテーマ曲のシングルの初回盤がそうだった。
こちらは1作目の「さよならストレンジャー」(1999)と
2作目の「図鑑」(2000)の再現ライヴの抜粋。
”東京”をやってるんですよね。次はこれを探そう。
 
くるりは何回か見ている。
一番印象的だったのはフジロックのホワイトステージ。2005年だったかな。
岸田繁が『くるり、京都からやってきました』とボソッと呟いた後で”東京”を。
夕暮れの苗場を美しい轟音で染め上げた。
 
”東京”って Radioheadで言えば ”Creep” のような位置づけか。
初期の代表曲って、その後音楽性を変えていくとなかなかやりにくいのかもしれない。
Radiohead は”KID A” 以後ほとんど演奏していないはず。
少なくとも僕が見に行った5回ほどで一度も演奏されなかった。
くるりにとって”東京”はどうなのだろう。
今も演奏しているのだろうか。
 
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The Hello Works 「Payday」
 
iPhone の容量が格段に増えて、空いたままにしとくのももったいなかろう、
有効活用しようとだいぶ昔に聞いたきりになったCDをせっせと取り込んでいる。
ふと、ネタンダーズが目に留まる。
 
あれはいつのことだったろう、
整理券の番号順に階段に並んでいた時、
ギターケースを抱えてひょうひょうと下の階から上がってきた男性がいた。
音楽でメシを食っていてそれ以外の仕事は向いてない、
そんな生粋のミュージシャンの佇まいがあった。
ギターに魂が宿っていて、私はその運び屋です、というような。
後にその男性が店の一角のステージに上がった。
塚本功という人だと知る。彼のギターだけをバックに小島麻由美は歌った。
彼のソロアルバム「Live Alone」がとてもよかった。
自分の曲と、古今東西のいろんな名曲のカバーをギター一本で歌っていた。
ネタンダーズの「衝動」や「サマーセッツ」も買った。
 
この2枚を iTunes に取り込みながら
ネタンダーズや塚本功について改めて検索する。
Sly Mongoose というグループにギタリストとして参加していることを知る。
俺、持ってただろうか? 棚を漁ってみたら「Dacascos」というのが出てきた。
新曲が2曲とリミックスが4曲のミニアルバム。2004年。
いつ買ったんだろう? ネタンダーズを探したときに合わせてなのか。
これが聞き直すとなかなかいい。
無国籍でファンキー、なんでもありなインストのバンド。
今、iPhone に入ってないのは僕が未熟でそのよさが当時わからなかったんだな。
 
他のアルバムは何が入手できるだろうと HMV のサイトで探すと出てきたのは
「Tip of the Tongue State」というアルバム(2006)と
The Hello Works というユニットによる「Payday」というアルバム(2007)。
どちらも110円だった。
なにこの安さ!? と思いながらオーダーした。
 
結果、どちらも素晴らしくて。
特に The Hello Works が。
スチャダラパー、脱線3のロボ宙Sly Mongoose によるユニット。
恥ずかしながら全く知らなかった。
スチャダラパーは90年代からこの頃までは全部アルバムを持っていたはずなのに。
スチャで言うと「CON10PO」の辺りか。
前年の「Tip of the Tongue State」に
1曲、スチャダラパーロボ宙が客演した曲があったので
その手ごたえがよくてアルバム1枚に発展したのだろう。
 
スチャダラパーというと、SHINCO のつくる密室性の高いトラック。
それが Sly Mongoose による開放感あるロックな音に変わって、
そこに BOSE と ANI とロボ宙のラップが。
これがかなりかっこいい。ガチなハードボイルド路線。
なんでこの1枚で終わってしまったんだろう、惜しい、と思った。
いや、1枚で潔く終わるのが彼らの美学としてよいか。
 
どういう経緯かわからないけど、
The Hello Works という名前が洒落が聞いてていいですね。
欧米人には決してわからない和製英語
それでいて欧米人からも仕事が楽しいわけないだろ、とツッコミが入りそうな。
どっちに転んでも皮肉が聞いていてよくできている。
メンバーもジャケットの写真でアメリカのブルーカラーの着るような
それこそ青いシャツでずらっと並んでて。
 
あと、ハナレグミがゲスト参加してて”今夜はブギーバック”をやってる。
オザケン小山田圭吾に続く第3のブギーバックがあったとは……
スチャと共演すると皆一度はブギーバックをやるのだろうか。
 
忘れられた名盤。
こんな素晴らしいアルバムが110円で投げ売りなんて。
幸福なことなのか、どうなのか。