今年のNo.1を選ぶ

今年出た新譜から一番よかったのを選ぶ。
やっぱこれになっちゃうかな。
Brian Wilson 『At My Piano』
 
来年80歳になるという。
独学だというピアノはイノセントというよりも儚い、と言った方がいいか。
もっと言うと、拙い。
 
カリフォルニアの太陽の下で若者たちが陽気に笑いながら
サーフィンとかホットロッドとか。
そんなイメージは The Beach Boys の中の実は一部分にすぎなくて。
特に Brian Wilson はいびつな、薄暗いものを常に心の中に抱えて、
押しつぶされそうになりながら音楽と向き合っていた。
90年代以後、その負の側面から The Beach Boys は再評価されることになる。
僕も学生時代、その文脈で聞き始めた。
『Pet Sounds』は美しいという以前に、寂しくて、切ない。
 
ここにあるピアノの音はその光と闇ですら超越した、
彼岸から、向こう側から、届く音に聞こえた。
走馬灯が回るときなのか、三途の川を渡るときなのか。
僕らが死ぬとき、聞こえてくるのはこういうもの静かなピアノの音なのだろうと思った。
儚くて拙い。寂しくて切なくて、美しい。
「God Only Knows」も「Woundn't It Be Nice」も
すくい上げた海辺の砂が掌の間から零れ落ちるように消えていく。
 
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次点としては
First Aid Kit 「Who By Fire」
Larkin Poe 「Paint The Roses」
奇しくもどちらも姉妹のデュオ。