先週買ったCD #72:2022/02/21-2022/02/27

2022/02/21: www.hmv.co.jp
pizzicato fivepizzicato five in hi-fi」 \4520
Crazy Ken Band 「好きなんだよ」 \6732
Primal Scream 「Demodelica」 \2640
Radiohead 「KID A MNESIA」 \3850
Pretenders 「Pretenders 40th Anniversary 3CD Edition」 \5701
Orchestral Manoeuvers In The Dark 「Architecture & Morality (Singles -40th Anniversary)」 \1650
The Divine Comedy 「Charmed Life the best of The Divine Comedy」 \3003
Elizabeth and the Catapult 「sincerely, e」 \1725
Nina Simone 「Feeling Good Her Greatest Hits & Remixes」 \2557
 
2022/02/21: www.hmv.co.jp
Chara 「Violet Blue」 \99
Lou Reed 「New York」 \693
The Rolling Stones 「No Security」 \396
 
2022/02/22: DiskUnion 新宿中古館
Eric Clapton 「From The Cradle」 \455
Aerosmith 「Live Bootleg」 \1140
Haris Alexiou 「Best of Haris Alexiou」 \680
<font color= 800000>Fabrizio De Andre 「Creuza De Ma」 \1330
 
2022/02/22: www.hmv.co.jp
Dire Straits 「Making Movies」 (\1735)
Santana 「Moon Flower」 (\2530)
Joan Jett &The Blackhearts 「I Love Rock'n'roll」 (\1255)
HMVのポイントで
 
2022/02/23: www.amazon.co.jp
Dave Soldier & Richard Lair 「Thai Elephant Orchestra」 \2510
 
2022/02/24: www.hmv.co.jp
Marlena Shaw 「Free Soul. the classic of Marlena Shaw」 \1650
 
2022/02/24: www.amazon.co.jp
Marlena Shaw 「Live at Montreux」 \1100
 
2022/02/25: www.hmv.co.jp
Haris Alexiou 「Nefelis Str. '88」 \440
 
2022/02/25: diskunion.net
Sheena And The Rokkets 「Sheena And The Rokkets In USA」 \1500
 
2022/02/25: ヤフオク
Haris Alexiou 「Gyrizontas Ton Kosmo 92-968」 \1000
 
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Elizabeth and the Catapult 「sincerely, e」
 
noisetrade というアメリカのサイトがある。
アーティストが noisetraade 専用でパッケージした EP やアルバムを
無料で(希望すれば寄付をして)ダウンロードやストリーミングすることができる。
7,8年前ぐらいにたまたま知って、
いろんなアーティストのいろんなアルバムをダウンロードした。
多くはインディー系の日本ではよく知られていないアーティストやグループなんだけど、
時々あっと驚く大物の名前を見かけることがある。
Radiohead が期間限定で「The Bends」(1995)の頃のライヴ音源を
期間限定で公開、なんてことも。
僕は見かけていたけど、うっかりダウンロードしそびれてしまった。
 
新しいアルバムから数曲とそのアルバムには入っていないライヴ音源などを足した
サンプラー的な EP というのをよく見かけたか。
でも中には noisetrade でしか見かけないアルバムが登録されていることもある。
映画『Once ダブリンの街角で』に主演したマルケタ・イルグロヴァによる
ライヴアルバム「Live In San Francisco - November 18, 2011」であるとか。
(もちろん主題歌 ”Falling Slowly”も歌っている)
 
便利なんだけど余りにも数が多すぎてキリがなくなって、その後遠ざかった。
今見るとトップページの話題の作品のところに
フィービー・ブリジャーズや Wilco に Alabama Shakes といったところが上がっていた。
 
その7,8年前、ダウンロードしまくったときはもちろん知っている人が中心で、
他、ジャケットを見て気になった全く知らない人の作品もダウンロードした。
一番の収穫はホリー・ウィリアムズ。
なんとカントリーの大御所ハンク・ウィリアムズの孫にあたるという毛並みの良さ。
noisetrade から出ていたサンプラーで知った
「The Highway」(2013)がなかなかのアルバムで
その中の ”Without You” が心に染みる名曲だった。
しかしその後特にアルバムを発表していないようだ。
facebook でフォローすると演奏活動は数年前まで行っていたけど。
日本ではこの人のことは全然話題になっていないと思う。
 
もう一人はまったのが今回の Elizabeth and the Catapultであって
彼女のアルバムで現在入手できるものを一通り買い揃え、
昨年2021年に出た最新先の「sincerely, e」も遅ればせながら入手した。
とはいえ僕もそんなに詳しいわけではない。
これまでに日本盤として発売された
1作目「Taller Children」(2009)と
4作目「Keepsake」(2017)の解説を参照すると、
ヴォーカルのエリザベス・ザイマンは
1977年、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジで生まれ育ち、
クラシックピアノを習い、バークリー音楽院にて学ぶ。
そこで出会った仲間たちと Elizabeth and the Catapult を結成。
最初の頃はエスペランサ・スポルディングも参加していたという。
以後、エリザベス以外のメンバーは流動的となる。
 
平たく言えば女性シンガーソングライターとそのバックバンドということになる。
カタパルトって航空母艦から戦闘機を打ち出すあれのこと?
不思議な名前だなあと思っていたが、解説を読み直すとパチンコのことだった。
昭和の時代、土管のある原っぱで子どもたちが石を撃ってたりしたあちらの方ですね。
男の子の半ズボンの後ろのポケットから出ているような。
僕は持ってないが、彼女たちの最初の EP のジャケットでは
おさげの女の子がパチンコを手に空に浮かんだ真っ赤な折り紙の鶴に狙いを定めていた。
 
「Taller Children」もジャケットには女の子。
真夜中の真っ暗な街並みを背景に少女は色とりどりの風船を手にしている。
彼女たちの音楽はまさにそのイメージかな。
少女、パチンコ、風船。
リズミカルでカラフルな演奏なんだけど、慎ましい。
明るくなり過ぎず、かといって暗くなり過ぎることもない。
凸凹してるのに滑らか、そんなポップミュージック。
このエリザベスという人の頭の中の世界を箱庭にするとこういう音なんだろうなあと。
傷口とか生き様とかそっち系ではなく、どちらかといえばポップ職人系。
その箱庭的世界観が合うかどうか、だろうか。
少女の大事にしている宝箱と絵本を覗き込むかのような。
 
一番明るくて賑やかでその分、曲の輪郭がはっきりしているという点で
僕は2014年の3作目「Like It Never Happened」をよく聞く。
「sincerely, e」は5作目に当たる。
ピアノ弾き語りの曲が増えて、ベースやドラムの入る曲も最小限度。
だいぶ落ち着いてしまったんだけど、
お転婆な少女が大人の階段を上っていくようでもある。
 
世の中の流れとは少し距離を置いて自分のペースを貫く人なのだと思う。
これから先も数年おきにアルバムを出して息の長い活動を続けるんじゃないかな。
 
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Primal Scream 「Demodelica」
 
Primal Scream の1991年の大名盤「Screamadelica」のデモ音源集。
昨年2021年末発売された。
何で今頃? と思ったけど30周年記念ということか。
 
Primal Screamフジロックのステージで見たことがある。2005年。
Stone Roses のマニや
その頃活動中止中の My Bloody Valentineケヴィン・シールズを従えて
という UKロックオールスターズ のようなメンツ。
Oasis には元 Ride のアンディ・ベルがいてと
大御所は腕に覚えのあるミュージシャンの寄り合い所帯になっていく。
その両巨頭が Primal ScreamOasis
そんな時代だった。
どちらも登場してきたとき(奇しくもどちらもレーベルは Creation)、
ここまで大きくなるとは思わなかった。
 
「Screamadelica」はやはり彼らのアルバムの中でも別格というか、
安易な言い方になってしまうけど、神がかっていた。
1作目の「Sonic Flower Groove」(1987)はキラキラしたギターポップ
2作目の「Primal Scream」(1989)はそれを
深みの増したスローナンバーとワイルドなギターロックへと発展。
どちらも今聞いてもいいアルバムだけど、まだまだ普通のバンドだった。
それがダンスミュージックに接近して、
The Orb やアンディ・ウェザオールといったDJとの交流を深め、大化けする。
時代はアシッド・ハウスやセカンド・サマー・オブ・ラブと呼ばれた頃。
スペインのイビザ島ではヒップな若者やセレブが集まって
夜な夜なドラッグまみれなパーティーが開催されている、なんて報じられていた。
 
マンチェスターでは New Order パイセンが
1989年の「Technique」でダンスミュージックに大きく舵を切って、
同じ年に The Stone Roses のデビューアルバムが
ダンスビート+インディーロックの究極系を完成させた。
UKロックはダンスミュージックと融合する。
その流れが大きくうねったところで登場した決定打が「Screamadelica」だった。
1991年の年末か1992年の年始の rockin'on で
イギリスの音楽雑誌の企画でUKロックの大御所3人が1991年の新譜を評価する
というのを翻訳して載せていた。
その中の一人が New Order のピーター・フックだった。
他は辛口が多かった中でこのアルバムは大絶賛、
残り二人(今となっては思い出せないが同じぐらいの重要人物)も同意した。
 
2作目の「Primal Scream」に収録されたバラード
”I'm Losing More Than I'll Ever Have”を
アンディ・ウェザオールがリミックス、”Loaded”へと仕立て直す。
アメリカ映画のセリフからサンプリングから始まって
緩やかにして覚醒した、享楽的な音が続く。
3分代後半に差し掛かって突如降り注ぐギターの重いカッティング。
そのブレイクを挟んで後半へ。7分がアッという間。
これがヒットするという序章はあったものの、
やはりこのアルバムは突然変異としか思えない。
いったい何が起きたのか?
 
結局このデモ集を聞いても何もわからず。
デモというよりもバージョン違いに聞こえる。
最初全く期待せずに聞き始めたけど、本編と比べても遜色ない。
全然普通に1枚のアルバムとして聞ける。
これは曲がいい、演奏やスタジオワークがいいという以前に
首謀者ボビー・ギレスピーのヴィジョンが素晴らしかった、
それがメンバーやスタッフにも十二分に伝わったということなんだろうな。
現実はタフなことばかりかもしれないが、
この音楽を聞いている間は嫌なことを忘れてハッピーでいようぜ。
もうそのヴァイブス100%の音楽。
それが30年経っても全然古びてない。
そのことを改めて、このデモを聞いて再認識させられた。
スタジオでの試行錯誤の過程ですら、躍らせる音になっている。
 
21世紀に入ってから Deluxe Edition ばやりで
2枚目がデモ音源を集めたもの、というのをよく見かける。
しかしなかなか面白いものに出会わない。
本編に肉薄するほどよくできた、
アレンジの決まった最終リハのようなものだとそれは本編の方がいい。
その反対にギター一本にリズムボックスを足したホームデモのようなものだと
よほど魂のこもったミュージシャンでない限りしょぼい。
これはこれでいいよねと思ったアルバムは
Green Day の「Demolicious」とか Fugazi「First Demo」とかかな。
それとあれだ。ここ数年精力的に発表され続けている
PJ Harvey のアルバム諸作の全曲デモ。
 
「Screamadelica」の冒頭”Movin'On Up”のイントロを聞いた瞬間、
今でも何かが起こるというワクワク感を感じる。
永遠に色褪せない。
「Demodelica」はその双子の弟のような。