北の恋しぐれ

昨晩、『町山智浩アメリカの今を知るTV』を見た。
アメリカは今、燃料価格の高騰などもあって長距離トラックの運転手が不足、
高齢化で辞めるドライバーも多く、8万人という規模で足りないのだという。
それに伴い平均年収が上がり、
確か500万円台前半だったのが700万円台になったんだったか。
不況で家族を養っていけないとそれまで乳幼児教育に就いていた若い女性が
長距離トラックの運転手を要請する学校に通っていた。
我らが町山先生も大型トレーラーの運転を体験していた。
 
ウォルマート専属の運転手になると年収は1,300万円になるという。
しかし、町山先生曰くこの状況は長くは続かない。
10年もしないうちに長距離トラックの運転という単純作業は
ロボットやAIに置き換えられるだろうと。
 
日本も長距離トラックの運転手が不足している、
キツイ労働ゆえに成り手がいないと何年も前から言われている。
 
それはそうと。
一方で町で見かけるデコトラのことを僕は思い出していた。
環八のような大通りは長距離トラックやダンプカーばかりで。
ド派手な色遣いの古めかしい口調の看板を掲げ、
後ろには何をアピールしたいのかよくわからない謎の電飾とか。
いいねえ、と思う。
運転席の窓からぶっといもじゃもじゃの腕がはみ出していると最高。
 
高校時代、毎朝一時間以上かけて自転車で通っていた。
そのとき、月に何度か見かけるデコトラがあった。
新幹線のドクターイエローのように
近くに住む友人たちの間では見かけるとラッキー、となっていて
目撃情報を交換し合った。
前面の看板には大きく、『北の恋しぐれ』とあってよく目立った。
もちろん僕らも「おい、『北の恋しぐれ』沖舘の交差点のとこにいたぞ」と看板で呼び合っていた。
 
昨晩、テレビを見ながら思い出す。
そういえば『北の恋しぐれ』って結局何だったんだろう?
検索する。
都はるみのシングルに「北の宿から」「浪花恋しぐれ」とあった。これだな。
浪花ならぬ、北の、という。
演歌が好きだったんな。
運転しながらずっと聞いていて、積み荷を降ろし終えると安酒場でコップ酒を。
そこでも都はるみがかかっている。
そんな情景を思い浮かべた。
 
何を運んでいたのか。
何歳までその仕事を続けて、今はまだ生きているのか。
もう30年近く前の話。
廃業するときに、『北の恋しぐれ』の看板はどうしたのだろう。
高い確率で、既にこの世にはないんだろうな。
誰か周りの人がとっといて懐かしむようなものではない。
そう思うと少し寂しくなった。