「Love Supreme Jazz Festival」(後編)

土曜の「Love Supreme Jazz Festival」の続き。
フェス飯テントから戻って芝生席へ。
 
ovall がサウンドチェックを行っていた。
今回聞きたかったバンドのひとつ。
以前、InterFM 『Lazy Sunday』のゲストに出ていて知った。
CDを買おうと思ったが、それっきりになっていた。
プロデューサー業でも忙しい、ベース、ギター、ドラムの3人組。
ジャズというよりもジャムバンドに近いか。音響系の。
この3人にしか出せない音、グルーヴがある。
キーボードが2人加わる。
ゲストに Sing Like Talking佐藤竹善が出ると事前にアナウンスされていて
サウンドチェックで歌っている。
スティーヴィー・ワンダーの「迷信」を。竹善先生、往年のハイトーンヴォイスが出る。
いいねえ、まだまだ若いなあ、と唸るが、本編ではやらず。
「RIse」1曲だけだった。
ovall だけの演奏は3曲ぐらいかな。
後半はゲストヴォーカルを入れて、さかいゆう佐藤竹善、他若いのが2人。
バックバンドに徹する柔軟さもえらいけど、彼らだけの音をもっと聞きたかった。
とりあえずその場で DiskUnion の中古を申し込んでしまった。
 
ドリカムに向けてセットチェンジ、サウンドチェックを行っている間、
再度トイレに出て、飲み干したペットボトルの水を買いに行って、
この日三度目のイチローモルトハイボールを。
芝生席に戻る。
 
主催者側から配布されたシートだけを使用してください、
個人で持ち込んだビニールシートは広げないでくださいと
これまで何度も係員に言われ続けていて、誰も相手にしていなかったのが、
ドリカムが近づいてかなりの人数の観客が見込まれると
必死になってビニールシートのことを言い始めた。
日中は通路で言いながら歩いているだけだったのが、一組ずつ声をかけ始めた。
僕らも畳んだ。
地元秩父からなのだろう、小さい子を連れた若い家族が観客に多く、
本格的なビニールシートを広げて子供たちが何人も寝そべっている。
そんなところにも一人一人声をかけていく。
大変そうだった。なんか運営上の改善点もありそうに思えた。
会場案内図とか注意事項の掲示が少なすぎて、その分係員が注意して回ることになる。
客席内ではアルコールを含めて飲み物はOKだけど、食べ物はNGとか。
ステージを撮影してはいけないとか。
ずっと係員が声を張り上げていた。
 
この時間帯、もうひとつのステージではセルジオ・メンデス
見たかったんだけどちょうどセットチェンジの裏側で。
タイムテーブルを見ると、ovall が終わった直後にセルメン、
その終わった直後にドリカムとなっていた。
これは三組とも見ようとしたら終わりか初めを見逃すなあと
今回はセルジオ・メンデスを諦めることにした。
そういうところも余裕をもってタイムテーブルを組んでほしかった。
 
ステージは右手に要塞のように高く組まれたドラム、
左手にグランドピアノ。
ピアノの調律が1時間近くずっと続いた。
しばらく野外ステージの広い庇の下にあって日差しで遮られていたのが、
その隙間から西日が差し込むようになった。眩しい。
それもドリカムの始まる頃にはさらに下がってステージの裏に隠れた。
すぐにも暗くなった。
 
ドリカムは吉田美和中村正人の2人に
サックス、ギターは恐らくジャズ界の凄腕、
ドラムは黒人のガタイのいい、ノリのいいあんちゃん。
そこに上原ひろみ、という布陣。
曲目は吉田美和の2枚のソロアルバムから。
レコーディングではデイヴィッド・T・ウォーカーやチャック・レイニーといった
名人クラスが演奏していた。
そのベースを中村正人が演奏するという。
3月の代々木や4月の長野で見たとき、先生は「俺、ジャズなんて弾けないよ」
今日は「吉田美和のソロの曲初めて弾くよ」と及び腰。
まあ冗談なんだろうけど。
 
イヤーすごかった。ovall の演奏もよかったけど、桁がふたつ違った。
ドラムがずっしりと重い。
シンバルが他のバンドがシャーンって浅くなるのが、
黒人の彼だとジュゥゥゥワーンと腹の底に響く。
バスドラなんて、往年の Led Zeppelin ジョン・ボーナムもかくあるかと。
タイトなのに絶妙な揺らぎがある。しかもそれが地鳴りのよう。
ファンキーってそういうことですよね。
ギターもサックスも僕の好きな音だったな。
どの曲も各プレーヤーの格別のソロが挟まる。
蓋を開けてみるとこのジャズフェスティバルでドリカムが最もジャズだった。
 
そして上原ひろみ
いつか生で見て見たかったが……
想像以上だった。
さざ波から浮世絵のような大津波まで、
盛り上がってくると身を乗り出して全身でダイナミックに音を伝える。
音の色を感じるということはあるかもしれないが、
それをエネルギーの塊として表せる人というのを初めて見た。
ミクロの粒子から、マクロの宇宙まで。
これはもっと聞きたい、聞いてみたい。
アンコールはその上原ひろみの編曲による「サンキュ.」
 
19時半には駐車場を後にしたか。
こんな豪華な演奏、もう二度と聞けないかもな。
その余韻に浸りながら車に乗って帰る。
渋滞に巻き込まれることなく、秩父の有料道路と関越道で21時には着いた。
早い。秩父は案外近いな。
風呂を沸かして入った。
 
イチローモルト、入手したいな。
泊りで行って、日曜のロバート・グラスパーも見たかった。
上原ひろみはまたどこかに聞きに行こう。